「徒然草」に登場するフリーダム和尚がとある僧侶につけたあだ名「しろうるり」とは? (4/4ページ)

Japaaan

「若(もし)あらましかば、かの僧が顔に似てん」

「あの、すみません。和尚様が昨日おっしゃった『しろうるり』って何なんですか?」

盛親の答えは、実に意外なものでした。

「知らんよ。ただ、もし実在したなら、あやつのような顔じゃろうな

【原文】「さるもの、我も知らず。若(もし)あらましかば、かの僧が顔に似てん」

つまり盛親は元から「しろうるり」という何モノかを知っていて、昨日の僧侶にあてはめたのではなく、昨日の僧侶を見た雰囲気から、いかにもそれらしい造語をでっち上げたのでした。

(何だそりゃ!真面目に考えて損した!)

盛親僧都ほどの天才だから、絶対何か深い意味があるかと思いきや、単なるジョークだったとは……全力で肩透かしを喰らった、甲の顔が目に浮かぶようです。

しかし、思い返すとあの僧侶は、確かに「しろうるり」としか形容しようのない顔をしていたのでしょう。

菊池容斎『前賢故実』より、吉田兼好。明治時代

その絶妙なセンスが大いに受けて、そのエピソードを伝え聞いた兼好法師が『徒然草』に収録したのですが、「しろうるり」みたいな顔って、一体どんな顔だったのでしょうね。

終わりに

古来「名は体を表わす」とはよく言ったもので、人でもモノでも、あるいはコト(事象)でも、ネーミング一つでその印象が大きく変わってくるものです。

既存の言葉でカバーできれば楽なのですが、それが出来ない微妙な対象について絶妙な語感で表現するのは、非常にセンスが問われます。

回の「しろうるり」に限らず、それが「なぜそれが、その名前になったのか」を考えてみると、言葉に込められた「音」の面白さや味わいが感じられ、日本語の楽しみがより一層深まるかも知れません。

※出典:吉田兼好『徒然草』第六十段より。

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