酒好きは食道がんに要注意…「がんになる県、ならない県」

日刊大衆

写真はイメージです
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 食生活やライフスタイルで、こんなにも変わるのか。国民病に関する驚きの調査結果を、本誌が徹底的に分析した!

 日本人の2人に1人――年間にすると100万人ががんにかかり、3人に1人が、がんで命を落とす現代社会。今や“国民病”ともなったがんだが、厚生労働省は1月16日、都道府県別のがん罹患率(2016年)などの全国規模調査のデータを発表した。

 下の表は、そのうち、人口10万人あたりの年齢調整罹患率をまとめたものである。これは、人口10万人あたりで何人が罹患するか……と考えればよく、数字が大きいほど、がんにかかりやすく、低いほどかかりにくいということになる。

 今回の調査と分析に携わった国立がん研究センターの松田智大・全国がん登録室長によると、「がんの罹患率は県によって、かなり差がある」と、地域差を認める。「その県や地域に根づく食生活やライフスタイル、医療体制などが、その差となったと推測できます」(前同)

 実は、2012年にも今回と同様な全国規模の調査が行われ、松田室長はこれを『がんで死ぬ県、死なない県』(NHK出版)という著書にまとめている。前回同様に、がんの罹患率が高かったのが北海道である。「北海道は前回、特に頭頸がん(頸より上のがん)の罹患率の高さが目立ちました。これは喫煙の影響が大きいと推測されたんですが、実際、北海道は男女とも全国1位、2位を争うほど喫煙率が高いんです」(同)

 逆に前回同様、罹患率が低い県で1位だったのが沖縄県である。沖縄は独特の気候風土があり、海産物やゴーヤなどの地元野菜を多く食べる食文化がある。これが罹患率の低さに大きく寄与しているという。「加えて、沖縄県民は東南アジア系の遺伝子を色濃く持っていることもあるのかもしれません。たとえば、東アジアの人と比べて東南アジアの人は胃がんが少ないんです」(同)

■胃がんや肝臓がんの特徴は?

 がんの部位別罹患率でも、地域によって特徴が出ている。胃がんの罹患率は、新潟、秋田、山形、富山、鳥取と日本海側の県で高い。『みつばちクリニック』(大阪府)の橋本惠代表(医学博士)は「データが均一に収集されているかどうかには疑問がありますが」と断ったうえで、日本海側の胃がん罹患率が高い理由を、次のように説明する。

「東北や日本海側は冬が長くて雪が多いこともあり、塩蔵文化が今も残っています。こうした食文化による塩分の摂取過多が胃がん罹患率を助長している可能性があると思います」

 胃がんの主因はピロリ菌とされるが、塩分を多くとると胃に炎症ができやすく、ピロリ菌を持っている場合、その活動を助長することで、胃がんが発生しやすくなるといわれる。しょっぱいものを食べ過ぎないことが、胃がんのリスクを下げるためにも大切なようだ。

 また、今回の調査では、肝臓がんの罹患率にも地域特性が出ている。肝臓といえば酒。きっと酒量が多い県――たとえば、日本酒の飲酒量日本一の新潟県などが高いと思われるかもしれないが、実は長崎、愛媛、滋賀、高知など関西に集中しているのである。橋本博士は、こう話す。

「日本全体でみて、肝がんは西高東低の傾向が以前から指摘されています。とりわけ佐賀県では死亡率が、1999年から2017年まで、19年もワースト1位です」

 では、その要因はどこにあるのか。前出の松田室長によると、「肝がんの原因は、飲み過ぎというより、C型肝炎ウイルスの感染が大きいと考えています」というのだ。C型肝炎ウイルスは血液を通して感染し、30年ぐらいかけてがんを進行させる。

「関西地方に肝臓がん罹患者が多いのは、かつて問題になった血液製剤や注射針の使い回しなどが原因かもしれない」と松田室長は推測している。そのため、肝がんを防ぐには、まず肝炎ウイルスの検査が先決と言えよう。

■酒豪の立川談志や赤塚不二夫も

 飲んべえさんは少し胸を撫で下ろしたかもしれないが、油断は禁物。

「酒豪といわれた漫画家の赤塚不二夫先生や落語家の立川談志師匠もそうでしたが、お酒が好きな人は肝臓ではなく、食道がんで亡くなるケースが多いんです。アルコールで食道粘膜が炎症を起こし、これががん化していくというパターンです」(前出の橋本博士)

 これを証明するように、実際、酒豪県である新潟県の男性は食道がんの罹患率が高い。

■うどんなど炭水化物や甘い物や食べ過ぎは…

 甘党や大食漢をドキッとさせるのが、罹患率3位になった香川県の“原因”だ。

 うどんがソウルフードの香川は、その消費量が多いことはむろん、うどんと一緒におにぎり、いなり寿司などを一緒に食べる食習慣が定着している。いわゆる炭水化物の“重ね食い”をするのだが、このせいもあって糖尿病による死亡者数は全国3位、受療率も全国2位となっている。

 特に“粉もの”であるうどんは食後、高血糖になりやすい。糖が血中にあふれると、がん細胞も繁殖しやすくなるため、当然、がんリスクが高くなる。甘い物や炭水化物をバクバク食べ過ぎないことは、香川県民といわずとも、がん予防において大切だろう。

■愛知県や長野県はかかりにくい

 今回の調査で罹患率が2番目に低い県となった愛知は、前回調査でも、「がんにかかりにくく、がんで死亡するケースも少ない」県だった。これには、いくつか理由があるようだ。まず、塩分摂取量や喫煙率が全国平均より、かなり低いことが挙げられる。

 さらに、愛知はトヨタをはじめとする大企業が多いため、工場従業員から営業マンまで、健診受診率が高い。このとき、がん健診もしっかり受けて、がんの早期発見と早期治療につながる――これが死亡率が少ない理由のようだ。

 加えて、愛知県民の99%が、がんの受診と治療の要となる「拠点病院」まで車で30分以内で行けるという医療環境も関係している。「より簡単に健診を受けられる環境が、がんの予防と治療に寄与しているのだと思います」(松田室長)

 罹患率が低い県3位の長野県の要因として、全国一、野菜を多く食べることがまず挙げられる。『カゴメ』が昨年8月に公表した調査では、1日の野菜摂取量で、長野県が2位の山梨県を大きく上回って1位だった。この食生活に加えて、手厚い保健行政で県民の間に健康意識が浸透し、かつ、医療を受けやすい環境にあることが大きいという。

■長崎県がワースト1

 さて今回、罹患率ワースト1になった長崎県は、前回の調査では胃がん、大腸がん、食道がんなどの順位は低かったという。だが、今回は一転して最下位に転落。いったい、なぜなのか? 岡田正彦・新潟大学名誉教授(医学博士)によると、「今回のデータは、がんの検診率に比例していることが大きい」と解説する。

「つまり、検診に熱心な都道府県はワースト上位になり、逆はベスト上位になるわけです。また、このデータで食生活などとの因果関係を見つけることは難しいと思います」(前同)

 禁煙をして塩分やアルコール、過度な炭水化物は控えめにする。そして、がん検診は積極的に受け、体に異変があるときは、すぐに受診する――これが「がんから身を守る方法」と言えそうだ。南北に長く、気候の違いも大きい日本列島。それぞれの県民性から、“長生きのツボ”を見つけていただきたい。

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