“JKリフレ”“地下アイドル”… 聖地・秋葉原で「普通の人々」が織り成す物語『NOISEノイズ』

まいじつ

“JKリフレ”“地下アイドル”… 聖地・秋葉原で「普通の人々」が織り成す物語『NOISEノイズ』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『NOISE ノイズ』

配給/マコトヤ テアトル新宿ほかで全国公開
監督/松本優作
出演/篠崎こころ、安城うらら、鈴木宏侑、仁科貴、布施博ほか

あの『秋葉原無差別殺傷事件』から、早いものでもう10年たった。これまであの事件をモチーフにした作品は、傑作だった『ぼっちゃん』(14年)など何本かあったが、こちらは、今も〝ポップカルチャーの聖地〟であり続ける秋葉原で、もがく若い男女を描いている。

あの事件から10年近く。事件で母親を殺された地下アイドル・美沙(篠崎こころ)は、同時に所属事務所が経営する〝JKリフレ〟の店でも働いていた。高校生の里恵(安城うらら)は離婚した父(布施博)との会話もなく、生活は荒れる一方だ。秋葉原の運送会社でバイトしている健(鈴木宏侑)は母の金銭トラブルに巻き込まれ、人生の歯車が狂ってゆく…。

監督の松本優作は現在26歳の若手で、これが長編初監督作。彼が16歳のころ『秋葉原無差別殺傷事件』が起き、その直前に彼の友人が自殺していて、この2つの衝撃がリンクしたことで映画製作を決意、8年かけて完成にこぎ着けたそうだ。エッジの効いた映像と強烈なサウンドに彼の執念と決意が宿り、新人監督のデビュー作はこれくらい尖っていなくちゃあ、と思わせる。

JKリフレの描写が非常にリアル

プレスにもあったオーバーな表現を使えば、〝人類史上最も凄惨な今を生きる〟若者たちに寄り添うような同時代映画は、同世代の監督が撮ってこそ。年配の人間が撮ってもどこか吸ってる空気が違うはず。ヒロインの篠崎が妙に〝ナマ感〟を醸し出しているのはそのためか。私生活でも困難と絶望を味わったという彼女に思いを重ね合わせている監督の気持ちが正直に映し出される。

JKリフレの描写もリアルなのだろう。ボクはJKにまるで興味がないので知らないが、サランラップ越しのキスだといくらとか、ビンタしてもらうといくら、とかオプションが付いているらしい。地下アイドルのヒロインがステージを一段上げるために〝枕営業〟をさせられるシーンもさもありなん。一方、母の金銭トラブルの腹いせから、迷惑電話をエスカレートさせる健の心がいつ決壊するのか、ボクはハラハラしながら観ていた。

混沌の中にいる若い世代に、それでも続けよ、生きよ、とエールを送る松本監督。尖ってはいるが、そこには祈りにも似たハートを感じる。かつてのスーパースター〝松田優作〟と一字違いの名前を持つこの新鋭の感性に期待する。そのうち、エロス全開のシャシンも撮ってもらいたい。

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