赤ちゃん遺棄事件から38年後。DNAデータベースと家系図作成サイトを組み合わせ、ついに犯人が判明(アメリカ)
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1981年2月の冬の日、サウスダコタ州スーフォールズにある排水溝の中に、生まれたばかりの赤ん坊が遺棄されているのが発見された。
この男の赤ん坊は、血のしみのついた毛布にくるまれていたが、凍えるような寒さにさらされたせいですでに死んでいた。
行方不明の届け出もなく、捜査は行き詰って、この事件はお蔵入りになった。
それから37年後、新たなDNAデータベースと家系図作成サイトのおかげで、この悲劇的な事件は終止符をうつことになりそうだ。
遺棄された男の子の母親だとされる、57歳のテレサ・ローズ・ベンタスが、3月8日に第一級殺人、第二級殺人、第一級過失致死罪で起訴された。
・捜査の為、墓から遺体が掘り起こされる
サウスダコタ州スーフォールズ警察は、これまでの経緯を説明した。
アンドリュー・ジョン・ドウとして知られるこの男の子は、事件から28年後の2009年9月に墓から掘り起こされた。
ノーステキサス大学の研究者が男の子のDNAを抽出して、警察がこのDNAを犯罪者データベースから照合できないか調べたが、マッチするものはなかった。アンドリューは2010年6月に再び埋葬された。
新情報が出て来ることを期待して、2018年3月に警察が公開した1981年の犯罪現場写真
・家系図データベースを持つ民間企業へDNAを送る
それから数年後、赤ん坊のDNAがパラボン・ナノラボへ送られた。
この会社は、家系図サイトを通して得られたオープンソースの遺伝データを使って、未解決事件を解決することにかけて、目覚ましい実績をもつ民間企業だ。
捜査官のマイケル・ウェブは言う。「この会社は、いくつかの家系を特定することができた。興味深いことに、その多くがスーフォールズのこの事件につながってきたんだ」
・犯行時の犯人の年齢や遺伝学的証拠を特定
数十年が経過したDNAでも、その鑑定結果を家系図データベースへ反映させることで、新たなる事実が判明する。
この犯罪の性質から、実行犯は年齢の若い人間である可能性が高いと捜査官は考えた。遺伝情報と昔の婚姻記録と出生記録を合わせたものを使って、犯行当時、18歳か19歳の若者がいる家系をいくつかはじき出された。
さらに捜査を進め、遺伝学的証拠から、死んだ男の子の両親がまだシーフォールズに住んでいることを突き止めたのだ。
・遺棄された男の子の母親を起訴
警察は両親を尋問し、その結果、母親を殺人の罪で起訴した。父親は、男の子の誕生や死についてはまるで知らず、殺人には関わっていないことがわかった。
テレサ・R・ベンタスの逮捕時の写真
「月並みな言い方だが、我々はこうした未解決事件の解決をあきらめない。とくに子供が被害者の場合、力が入る。挫折ばかりで、打ちのめされることも多いが、空振りに終わってもまた立ち上がり、決して捜査をやめない。それが我々の仕事だから」ウェブは言う。
「長い時間がたってしまったこうした未解決事件を解決するのに、相当な決意と不屈の精神、それに科学とDNA家系図をうまく組み合わせることが必要だった」
家系図サイトや新たなDNA技術を使って、世間の注目を集めた未解決事件を解決したことは初めてではない。
2018年、カリフォルニア州警察は同じような技術を使って、元警官のジョゼフ・ジェームズ・デアンジェロを逮捕した。40年越しの逮捕である。
彼は、1970年代から80年代にかけて、12人を殺害し、51人に性的暴行をし、ゴールデン・ステイト・キラーと呼ばれていた。
References:Genealogy And New DNA Evidence Leads To Arrest Over Abandoned Baby's Death In 1981 | IFLScience