サイコパスの脳を調べていたところ、自分がサイコパスであることを発見した神経科学者(アメリカ)

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サイコパスの脳を調べていたところ、自分がサイコパスであることを発見した神経科学者(アメリカ)
サイコパスの脳を調べていたところ、自分がサイコパスであることを発見した神経科学者(アメリカ)


 ジェームズ・ファロン博士は、アメリカ・カリフォルニア大学アーバイン校の神経科学者である。多くの障害や病気が脳内でどのように作用しているのかを研究しており、数々の実績を残している。

 ファロン博士は、サイコパス(精神病質)の脳に特有のパターンがあることを発見した。サイコパスのことを研究を進めていくうちに、彼は驚くべき事実を発見する。

 なんと自身の脳にもサイコパスと同じパターンを発見してしまったのだ。つまり、彼もサイコパスだということだ。
・サイコパスの殺人者の脳の活動パターンが完全に一致

 ファロン博士は自らを筋金入りの多動性障害(ADHD)者だと自称している。その特性のおかげなのかどうかはわからないが、ユニークな研究を行い、様々な発見を繰り返してきた。

 1980年代、博士がPET(ポジトロン断層法)スキャンで、サイコパスだと思われる殺人者の脳を調べていた時のことだ。

 "正常な"な脳と比較するための対照群として、自分を含めた家族の脳をスキャンしてみた。

 ところが・・・

 家族の大量の脳スキャンの中に、明らかに異質なものが混じっていた。その脳の活動パターンは、"正常な"人のものではなく、サイコパスのパターンと完全に一致していた。

 その脳スキャンこそが、ファロン自身のものだったのだ。

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image credit:Discovering One's Hidden Psychopathy. James Fallon (2014) HD

・サイコパスならではの研究?

 他人に対する共感の欠如や、良心の呵責をほとんど感じない、攻撃性といった特徴をもつサイコパスは、集団におよそ1パーセントの割合で存在するという。彼らは自己中心的で罪悪感を感じない、息を吐くように嘘をつく、抑制力が欠如しているなどの傾向がある。

・あの人って実はサイコパス?科学が教えてくれるサイコパスを見分ける方法とその付き合い方 : カラパイア

 修士号や博士号をもつファロンは、たくさんの傑出した科学的発見をしている。結婚生活も長く、3人の子どもたちを育てている。

 アルツハイマーの初期兆候の早期発見を目指す研究の対照実験に、積極的に家族(および自分自身)を動員するような男だ。

 そうして、自身の脳をスキャンしてみた結果、自分にサイコパスの特徴がすべて当てはまることに気づくことになったのも、こうしたやり方のせいだった。

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・正式な検査を受けたら、やはりサイコパスの特性を持っていた

 サイコパスは、非常に危険な特性を持っているが、そのすべてが犯罪を犯すわけではない。うまく日常生活を送っている者もいる。ファロンは当時、あまり気にしなかった。

サイコパスの遺伝子というものはない。だが、サイコパスにつながる特性、サイコパスを駆り立てる特性はある。

わたしはそういったすべての遺伝子要素を持っていた。でも、わたしはそれを一蹴する。自分が何者かわかっているから

 30年ほどたった2010年になって初めて、研究者たちに、あなたはサイコパスの瀬戸際にいるのではないかと言われ、ファロンは真剣に考えるようになった。

 そこで彼は正式な検査を行うことにした。精神医学と心理学の分析結果は、やはりその兆候があることを示していた。

 つまり「本格的なサイコパスのあらゆる衝動、思想、誘惑を備えた予備軍がここにいる」ということだ。


・絶対的なサイコパスと社会的なサイコパス

 しかし、彼はいわゆる絶対的なサイコパスと言われるものではなく、社会的なサイコパスなのだという。

だからといって、その人物がいい人間だという意味ではない。サイコパスには、自分のことを、いい人、好ましい人だと人に思わせるように仕向けるスキルがあり、人からカリスマ性があると信じられ、好かれる傾向にある

 絶対的サイコパスは、反社会的で暴力的な傾向があるが、そのサイコパス性向はおくびにも出さない。そして、社会の中でまともに機能することができない。

 しかし、ファロンの場合、前向きで肯定的な環境で育ち、いい家族(とくに母親)の影響を受けたことで、まともに成長することができたという。

確かにわたしは、サイコパス的要素のある脳をもっているが、母の存在が他人に危害を加える危険人物にならなくて済んだ理由となった。

悪いしつけを受けていたら、サイコパスの危険な3つの要素を育んでしまったことだろう。わたしには、危険人物になりえる生体指標と特性があるけれど、それでも典型的なサイコパスではない



・外的環境に恵まれた運のいいサイコパス

 ファロンには、人を殺したり暴行したいという衝動はない。これが彼を"運のいい"サイコパスにしている。

 自分がサイコパス傾向があることを知って以来、ファロンは友人や家族を見習い、彼らを大切に扱い、サイコパス的特性が出ないよう抑えようとしている。

わたしはしたいことはなんでもできると思う。自分のサイコパス性を撲滅することはできなくても、害のないサイコパスになることはきっとできる。それが専門だし、自分の病理をうまく利用すれば可能だろう



ジム・ファロン 「殺人者の精神の探求」
References:Neuroscientist who specializes in psychopaths discovered he is a psychopath | Daily Mail Online/ written by konohazuku / edited by parumo
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