追悼・小池一夫 その圧倒的「人間力」インタビュー (2/2ページ)

日刊大衆

だから「裾野が広がれば仕事が増えるんじゃない」っていいました。「それと、俺や梶原さんを抜くような原作者はそんな出ないよ」っていったら、梶原さん、ニヤッとして「それはそうかもな」っていってました(笑)。

 僕は原作者ですから、自分の組む漫画家を探そうと思って教えてきてたんですけど、そしたらやっぱり上手いのがいるんですよね。たとえば高橋留美子がいる。そうすると、惜しくなるわけですよ。僕と組んだら違う道を行くことになるし、「組めないなあ」って。全部、独立させちゃう(笑)。予定が狂っちゃった。

 弟子たちにいうのは、悪役を先に作れってこと。主人公を最初に作ると、固まって動かなくなる。それと、主人公には必ず弱点を作る。『子連れ狼』の大五郎、3歳の子供が足元にくっついてたら、斬り合いで弱点になる。世界中が「危ない危ない!」って。弱点があると、無敵のやつがここまで弱くなる。だから連載が終わらないわけです(笑)。

 最盛期は締め切りが20本ぐらいあって、1日に3本ぐらい書いてたんじゃないかな。僕は全部直筆です。いまでもボールペンで。パソコンじゃ、誰が書いたかわからないじゃないですか。漫画家は喜ばないです。10本以上書いてると、「弟子に書かせたんじゃないか」という恐れも出てくるわけでしょ。全部、生筆だから、漫画家も「あ、親父、書いてんだ」ということになるんで。

 ご存じですか? ピカチュウ1個で3兆円ですよ。日本の鉄鋼業全体と稼ぎ高がおんなじぐらい。自動車工業で20兆でしょ。で、一番稼いだ7年ぐらい前の日本の漫画とアニメとゲームの3つの売り上げが、14兆7000億。それに対して国はなんにも援助を与えない。映画はいくら稼いでも2000億でしょ? 10兆円を超える世界ですよ。

 漫画とアニメとゲーム、全部違うメディアで、その3つの真ん中を占めているのがキャラクター。だから、その中心を教えるんです。

 人間は、神と悪魔というキャラクターを作ることで、自然現象に耐えてきたわけです。神様には感謝し、悪魔の怒りは鎮めなくちゃいけない。で、祭壇を設けて、そこから教会建築が生まれ、お供えものを入れる器からガラス工芸ができてきた。

 キャラクターが中心となって、世の中はすべて動いている。これが僕の『キャラクター原論』なんです。(敬称略)

※『週刊大衆』2012年1月30日号より

「追悼・小池一夫 その圧倒的「人間力」インタビュー」のページです。デイリーニュースオンラインは、漫画(マンガ)漫画家エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧