やくみつるの「シネマ小言主義」 ジャッキー対007の対決!「ザ・フォーリナー/復讐者」 (1/2ページ)

週刊実話

やくみつるの「シネマ小言主義」 ジャッキー対007の対決!「ザ・フォーリナー/復讐者」

 還暦をすぎて歩くのもヨボヨボ、しがないレストランのオーナーにすぎない…と見せかけといて、愛娘を殺した犯人グループへの復讐のためなら、めちゃくちゃ強くなる。まるでシュワちゃんの映画のような絶対強者に、ジャッキー・チェン。

 対する北アイルランド副首相役には、ジェームズ・ボンド俳優のピアース・ブロスナン。この男は、アイルランド共和軍(IRA)のテロ工作員だった過去を持っています。ブロスナンが出ることで、この作品のスタイリッシュ度がグッと上がっています。

 2人のブッキングに成功した時点で、スカッと面白いアクション映画ができるのは間違いなしだとプロデューサーは小躍りしたことでしょう。しかし、脚本や描写に“あれ?”と思う点が少なくないのも事実です。

 たとえば、最初にジャッキーと娘がロンドンで無差別テロに巻込まれた現場で、娘のいた店の内部は破壊され尽くしているのに、店の外に並べられていた植木鉢は整然とそのまま残っている…。テロ発生直後で、みんながこんなに警戒しているのに、なんで見ず知らずの初老の男をオフィスに入れてしまうんだ?…とか。

 話を進めるためのご都合主義に見える展開が、わりと随所にあるんですが、どうか気にしないでください。米軍の特殊部隊出身という設定での小技の効いたアクションシーンだけでなく、老いの悲哀も、亡き娘を想う鬼気迫る執念も表現するジャッキーの新境地を存分に楽しんでいただきたいです。

 作品中では、ジャッキーが、忍者のように、いつの間にか侵入して、スッと現れるというシーンが何回かあったんですが、西洋人の考える東洋人の不気味さを象徴しているようで、興味深かったですね。

 さらに、EU離脱で北アイルランドの国境問題に揺れるイギリスを舞台にしているところが、話にリアリズムと深みをもたらしているように感じました。この1月にもIRAの犯行とみられるテロが北アイルランドで起こったばかりらしいですし。

 この作品の中でも、空港や2階建てバスでテロが続発しているのですが、手口を真似されて、そのうち実際に起きるんじゃないかと思う恐ろしさがあります。

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