史上初、再設計された合成DNAを持つ生物が誕生(英研究) (3/3ページ)

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 コンピューター上でそのDNAを読み取りながらTCGのコドン(セリンというアミノ酸を作る)が見つかるたびに、同じ仕事をするAGCに書き換えた。そして、さらに2つのコドンについても同様の作業を行なった。

 このやり方で18000ヶ所以上を編集してから、これら3つのコドンをゲノムから削除。こうして再設計された遺伝コードを化学的に合成して、その1つ1つを大腸菌のゲノムに移植していった。

 その成果が、完全合成の遺伝コードによってDNAを劇的に書き換えられた新しい細菌「Syn61」だ。それは普通の大腸菌よりもやや長く、成長に時間がかかるが、それでもきちんと生きる。


・デザイナー生命体の利用価値

 チン氏によると、こうしたデザイナー生命体には利用価値があるかもしれないという。というのも、DNAが普通とは異なるために、ウイルスが容易に侵入できない――つまりウイルス耐性があると考えられるからだ。

 糖尿病患者向けのインスリンを作ったり、がん・動脈硬化・心臓病・眼病に効く化合物を作ったりと、じつは大腸菌はすでに生体製薬産業で利用されている。

 しかし、このプロセスはウイルスの汚染があったりすると、完全に台無しになってしまう。そこでウイルス耐性を持たせた大腸菌を利用して、そうした被害を防ごうというわけだ。


・初の合成ゲノム生物誕生から10年

 世界初の合成ゲノムを持つ生物が作られたのは2010年のこと。アメリカの研究者が作ったそのマイコプラズマ・マイコイデスは、ゲノムが大腸菌よりも小さく(塩基対が100万)、それほど劇的に再設計されていたわけでもない。

 それからほぼ10年、ゲノム置換の技術は新しい次元に到達した。

 しかし、今回の記録もそれほど長く持たず、近いうちに次の新記録が生まれることだろう。パンに使われるイースト菌をはじめ、今回のものを超える合成ゲノム生物の開発プロジェクトがすでに複数進行しているのだ。

 この研究は『Nature』に掲載された。

References:World’s first living organism with fully redesigned DNA created/ written by hiroching / edited by parumo
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