ビートたけしの名言集「母ちゃんには一生かなわないんだな」 (1/2ページ)
「30過ぎて親を許せないヤツはバカだ!」
以前、殿がこんなことを言っていたことがありました。
わたくし、母が3回ほど離婚をし、けして裕福な家庭で育ったわけではありませんが、基本、甘やかされて育ったため、親への憎しみや確執といったものがまったく理解できません。ですから、冒頭の言葉を聞いた時、〈世の中には何かしらの理由で、親を拒絶するような人がいるんだな〉と、少しばかり驚いたことをよく覚えています。
ちなみに弟子になりたての頃、「母は離婚3回、姉も2回、僕自身も高校中退です」といった話をしたところ、殿から、
「お前、芸人としちゃ、ずいぶんエリートだな。うらやましいヤツだな」
と、いたく感心されたことがありました。さらにちなみに「芸人を目指すうえでの環境」ということでは、
「昔は学校を辞めて、ドロップアウトして芸人になったもんだけど、今は学校(各事務所が経営するお笑い養成学校のこと)に入って金払ってお笑いやろうっていうんだから、まー、ずいぶんと変わったよ」
と、殿は一時期よく不思議がっていたことがありました。さらに脱線ついでにもう一つ。「離婚したわたくしの父が昔、仕事でよく韓国へ行っていた」といった話を殿にしたところ、その話はアレヨアレヨという間に尾ひれがつき、
「俺の弟子に北郷ってのがいるんだけど、そいつの家族は命からがら、北朝鮮から逃げてきた脱北者なんだ。だから、そいつの作るキムチ鍋はやたらうまいんだ」
と、殿が周囲に誇らしげに語っていたことがありました。わたくしの“脱北疑惑”はさておき、殿が親を語る時、それは母・さきさんのことがほとんどです。「殿とさきさん」と聞いて、わたくしがまず思い浮かべるのは、以前、殿から聞いたこんなエピソードです。
殿が大学を辞め、さきさんとケンカして家を出て、目白に風呂なしアパートの部屋を借りて住み出した頃、すぐに家賃が払えなくなり半年程滞納。大家さんに会わぬよう逃げ回っていたある日、夜中そーっと部屋に戻ると、そこには大家さんがいて、対面してしまった殿が「すいません。