7月1日相続法改正、知っておきたい「名義変更」のすべて

日刊大衆

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 7月1日から相続に関する法律が変わった。実は、これに先立つ2015年に相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、相続税の対象となる世帯が激増している。

 つまり、消費税のみならず、政府は庶民の〝汗と涙の結晶〞からも、ガッポリ税金を巻き上げているのだ。政府がその気なら、こちらも「優遇税制を最大限に駆使し、妻や子どもたちに遺産をできるだけ多く残す方法」を実行したい。

 相続や贈与というのは、自分自身の預貯金や不動産、その他の名義を妻や子どもらに変更すること。生前に名義変更すれば贈与税、死後に妻や子どもらへ財産の名義が変わると相続税がかかることになる。

 それでは、今回の改正に庶民は、どう対応すればいいのか。うかうかしていると大損するから、要注意だ。まず、1日からスタートした《預貯金の仮払い制度》について説明したい。

 亡くなった人が遺言書を残していればそれに従い、残していなければ法定相続分(※相続人の取り分として法律上定められた割合)通りに遺産が分配されるが、いずれにしても相続人の間で「誰が、どれだけの遺産を相続するか」を話し合う必要がある。これを遺産分割協議という。『絶対に知らないとヤバイ! 生前贈与の手続きの進め方(改訂版)』(彩図社)の著者(共著)で、税理士の柴崎貴子氏がこう語る。

「これまでは、協議が終わるまで被相続人の預貯金口座は凍結されて、相続人に蓄えがないと、借入でもしない限り、葬儀費用さえ支払えませんでした」

 ところが、新制度では協議の途中でも「口座ごとの預貯金額×3分の1×法定相続分」を、被相続人の口座から仮払いしてもらえることになったのだ(1つの金融機関から引き出せる限度額は150万円)。

 しかし、口座がどの金融機関の、どこの支店にあるか把握していないと、遺族は仮払い請求しようにもできず、困ってしまう。まずは「終活」の一環として、きちんと自身の預貯金口座を把握しておくべきなのだ。

 逆に自身が相続人として、老親から財産を相続できる立場なら、なおさらだ。老親が元気なうちに、すべての預貯金口座を書き出してもらっておきたい。『いまからはじめる相続対策』(日本実業出版社)の著者(共著)で、広尾麻布相続センター代表の税理士・中島典子氏が言う。

「以前たまたま作った口座など、ご本人もずっと使わず把握できていない口座があるというのも現実です 書き出してもらうのも一手ですが、まずはお元気なうちに、複数ある口座を整理してもらってはどうでしょう。最近はネット銀行(証券)も要チェック。ご自身が被相続人になる場合も、相続人のことを考えて、同じく口座の整理から始めてみてください」

 もう一つの大きな改正点は《遺留分が金銭で解決できるようになった》こと。遺留分とは、相続人が最低限保障される取り分と考えていただきたい。よくあるケースで説明しよう。

 零細企業を経営する父親が、長男に評価額8000万円の工場兼自宅を譲り、次男には預貯金のすべて2000万円を相続させる遺言書を書いたとしよう。相続人が子ども2人の場合、次男は最低限全遺産の4分の1である2500万円をもらえる権利があるものの、遺言によって父からの遺産は2000万円しか受け取れない。つまり、500万円分損してしまうのだ。今回の改正で、次男は、その不足分500万円の支払いを、長男に金銭で求められるようになった。

 しかし、工場兼自宅を相続した長男に蓄えがないと、工場兼自宅を売って現金に換え、弟に遺留分の不足を金銭で支払わなくてはならない。大損するどころか、そもそも工場を売ったのでは家業が成り立たない。

 せっかくの遺言も、そうなってしまったら逆効果。では、どうすればいいのか。

「長男が裁判所に申し立てれば、一定期間、支払いの猶予を受けることができます。その他、生命保険の非課税枠を使い、このトラブルを回避する方法があります」(前出の柴崎氏)

 生命保険の保険金には、相続人1名に対して500万円の非課税枠がある。つまり、父親が長男を受取人に死亡保険金500万円の保険に入っておくと、長男は丸ごと受け取った保険金で弟に遺留分を支払い、工場の売却という最悪の事態を回避できるわけだ。

 また、《介護してくれた嫁に特別寄与料を残せるようになった》のもポイント。妻に先立たれた夫が、長男の嫁にさんざん介護で世話になったとしよう。人情としては、その代償として遺産を残してやりたいと思うもの。しかし、嫁に財産の相続権はない。

 今回、相続権がない嫁の場合でも、介護などに貢献した親族は特別寄与料を受け取ることが可能になった。

「ただ、請求権があるというだけ。遺産分割の話し合いで、寄与分がどう判断されるか明確でない部分があります。まず嫁は、介護にあたった日付や時間、購入したものや持ち出し費用などの詳細をノートにつけ、介護に要した領収書などもしっかり取って、どれだけ介護に尽くしたかを証明する必要があります」(柴崎氏)

 この他、妻が安心して暮らせるための制度改正もなされている。現在発売中の『週刊大衆』7月15日号では続けて「節税」の最新対策について特集している。

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