全身麻痺の男性が、脳波で動かす外骨格ロボットスーツで再び歩く(フランス研究)

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全身麻痺の男性が、脳波で動かす外骨格ロボットスーツで再び歩く(フランス研究)
全身麻痺の男性が、脳波で動かす外骨格ロボットスーツで再び歩く(フランス研究)


 肩から下がほとんど麻痺してしまったある男性は、ここ2年の間、研究者と一緒に思考で操作することができるロボットスーツの開発を行っている。

 フランス・グルノーブル大学の研究グループが医学誌『The Lancet Neurology』(10月3日付)で発表した研究は、四肢麻痺の患者が思考でロボットスーツを操作して生活する――そんな未来が実現できることを窺わせてくれる。

 その証拠に、四肢麻痺のフランス人男性ティボーさん(28歳)は実際に歩けたのだ。

Exoskeleton Controlled by a Brain-Machine Interface

・半侵襲的なワイヤレス脳のロボットスーツ

 そのロボットスーツは、まだまだ改良が必要ではあるが、それでも研究グループとティボーさんとの共同研究の結果は、脳の信号を解釈し、それを物理的な動きに転換するアルゴリズムを利用したロボットテクノロジーが実現可能であることを示している。

 「”私たちのもの”は、長期的に4本の手足を動かして使用することを想定して設計された、初の半侵襲的ワイヤレス脳-コンピューターシステムです」とグルノーブル大学の名誉教授で、生物医学研究センター「Clinatec」の理事を務めるアリム=ルイ・ベナビッド教授はプレスリリースでコメントする。

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 ティボーさんは頸椎に損傷を負い、そのせいでまったく足を動かせなくなった。腕や左手首なら多少は動くため、それで車椅子をどうにか操作している。

 そんなティボーさんが脳波でロボットスーツを操作できるようにするために、研究グループは頭皮と脳の間にセンサーをふたつ移植した。このセンサーは動きと感覚をつかさどる「感覚運動皮質」の活動を記録する。

 ちなみに、従来の脳に直接チップとセンサーを移植するタイプとは違って、センサーを脳に直接埋め込むわけではない、”半”侵襲的なところがポイントだ。

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Juliette Treilletさん(@juliette_treillet)がシェアした投稿 - 2019年10月月6日午前2時39分PDT



・ゲームを通じてアルゴリズムを訓練

 次のステップは、センサーによって記録された脳波を解釈し、それを動きに変換するアルゴリズムを訓練することだ。

 これはゲームのプレイを通じて行われた。テレビゲームのブロック崩しに登場するパドルのようなもので、落ちてくるボールをキャッチするのだ。

 さらにティボーさんは、バーチャルシミュレーションで手を前に出したり、手首を捻ったりするような複雑な動作も練習した。

 こうした訓練を通じて、ティボーさんはロボットスーツに内蔵された14ヶ所の関節を操作できるようになった。そしてこの時点で、スーツの腕を動かして、さまざまなレバーに触れられるようにもなっていた。

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・思想で操りながら実際に歩くことができた

 最後の仕上げに、ティボーさんはロボットスーツを思考で操りながら実際に歩いてみせた。

 現時点では、スーツは転倒防止のために天井からサポートされている状態で、自動的にバランスをとって立っていることはできない。

 それでもティボーさんが実演した複雑な動きは、思考によってロボットスーツを操作することが可能であることを実証している。

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RTE Newsさん(@rtenews)がシェアした投稿 - 2019年10月月4日午前1時30分PDT



 ロボットスーツ以外にも、脳波によってコンピューターを操作したり、車椅子の操作したりといった応用も考えられるだろう。

 今回のスーツを用いたとしても、体が麻痺してしまった患者さんたちがすぐに歩く力を取り戻せるようになるわけではない。しかし、ティボーさんの一歩が、そうした未来へ向けた一歩であることだけは間違いない。

References:Paralyzed man successfully walks with a brain-controlled exoskeleton/ written by hiroching / edited by parumo
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