『歌うたいのバラッド』で“愛してる”を伝えるのは危険だ (1/2ページ)
私の思い出深いラブソングといえば、斉藤和義さんの『歌うたいのバラッド』である。
斉藤和義さんの楽曲にはじめて夢中になったのは高校生のとき、テレビから流れてきたCMソングがきっかけだった。
「この人のほかの曲をもっと聴いてみたい!」と思った私は、すぐにCDレンタルショップへ行き、過去の作品をまとめ借りした。それからというもの、通学中毎日のように欠かさず聴いていた。
■“愛してる”は好きな男に言われたい
高校3年生のとき、とある授業の中で個人発表をする機会があった。自分はどういう人間で、どんなことを考えているのかを自由な方法で表現していいということだったので、当時軽音楽部に所属していた私は弾き語りをすることに決めた。
何の曲にするか迷ったが、一番好きな歌を歌おうと思ったので、家でこっそりコピーしていた『歌うたいのバラッド』を歌うことにした。
高校生活の締めくくりの発表ということだったので、サビのラストで“愛してる”という歌詞を歌うときは大切な友人たちを思いながら歌った。
すると、拙い演奏ではあったが想いが伝わったのか、それを聴いていた友人が何人も涙を流してくれた。
その中でも特に仲のよかったひとりが、発表終了後に目を真っ赤にしながら駆け寄ってきてくれた。彼女のそんな顔を見るのは初めてだったので私もすごく嬉しくて、思わず泣きそうになってしまった。
「愛する友よ、私も同じ気持ちだよ。卒業してもずっと友だちでいようね」そんなことを思いながらハグしようとしたそのときである。
「いや、マジで愛してるはヤバい。超言われたい」
……おいおい。さっき私はちゃんと言ったぞ。そして、それを聴いてあなた泣いた、OK?
頭の上にはてなマークを浮かべている私をよそに、テンションの上がった友人は喋り続けた。