地球はどうやってできたのか?太陽系最遠の小惑星アロコスが教えてくれること(米研究)
NASA
太陽系の最果てへの旅は、地球について驚くべきことを伝えてくれた。
エッジワース・カイパーベルト内に存在している太陽系内で最も遠方にある外縁天体「アロコス」でフライバイをしたNASAの探査機が集めたデータに基づく3本の研究は、惑星を構成する素材が形成されたプロセスや、アロコスがピーナッツのような姿をしている理由といった、いくつもの興味深い事実を明らかにしてくれた。
・昔の姿をそのまま残す太陽系最遠かつ最古の小惑星
直径31キロほどのアロコスは、およそ40億年前に形成され、エッジワース・カイパーベルトに存在する小惑星だ。これまで探査機が訪れた天体としては、太陽系内で地球からもっとも遠く、かつもっとも古いとされる。
3本の研究の1本の中心人物であるワシントン大学のウィリアム・マッキノン教授によると、小惑星帯やもっと太陽に近い領域にある原始の天体に比べると、あまり痛めつけられていないのだという。
つまり、非常に古い天体でありながら、その姿は最初に形成された当時とそれほど変わっていないということだ。そのため惑星の起源を知るにはうってつけの研究対象ということになる。
NASA
・ピーナッツのような不思議な形状の謎
2019年、NASAの探査機ニュー・ホライズンズが、地球からおよそ64億キロ離れたところにあるアロコスでフライバイを決め、その際にまるでピーナッツのような姿の撮影に成功した。
今回の発見がなされる以前、惑星を構成する素材となったブロック――すなわち微惑星が形成されたプロセスについては、主に2つの仮説が提唱されていた。
1つ目は、階層的降着説(hierarchical accretion)で、星雲(星が死んで残されるガスとチリの雲)内で別々だった2つの部分が衝突することで作られると説明する。
だがニュー・ホライズンズの観測はもう1つの仮説を裏付けているようだ。突然の暴力的な衝突によるのではなく、星雲のガスと粒子がだんだんと集まり、やがて自分の重力に抵抗できなくなるまで密度が高まったことで形成するという理論だ。
「こうした粒子すべてが中心に向かって落下し、ぎゅうっと大きな微惑星になります」とマッキノン教授は説明する。
New Horizons Arrokoth Axes Animation
・太陽系全体でアロコスのような微惑星が誕生していた可能性
この類の星雲の崩壊においては、滑らかな球状よりは、一般に対になった形状になるとのこと。つまりアロコスのピーナッツ状の形のことだ。
もしこれがアロコスの起源なのだとすれば、やがて地球を作り上げることになったほかの微惑星の起源もまた同じである可能性が高い。
「カイパーベルト中でこうしたことが起きており、きっとおそらくは太陽系全体でもそうだったでしょう」と、ニュー・ホライズンズの責任者アラン・スターン氏は述べる。
Pete Linforth from Pixabay
・アロコスの表面に超レアな物質発見。水がある可能性も
3本の研究は『Science』(2月13日付)でまとめて発表されたもの。
ほかにもアロコスの表面が、「超レア」な物質で覆われており、そのために太陽側のより温度が高い領域では存在できないほど熱力学的に不安定であることも明らかにしている。
その超レアな物質とは、メタノールの氷だ。ノーザン・アリゾナ大学のウィル・グランディ博士の推測によれば、水とメタンの氷が宇宙線に反応したことで作られたという。ニュー・ホライズンズは水を検出していないが、見えていないところにそれが隠されている可能性もあるようだ。
さらに、メタノールの氷以外にもまだ特定されていない有機化合物が見つかっている。
なお今回のフライバイはたった数日で完了した。アロコスについてより詳しいことを知りたければ、カイパーベルトにもっと長く滞在する探査機を送り込む必要がある。
そうしたミッションが実現すれば、太陽系初期の姿や辺境を構成する物質についてさまざまなことを私たちに教えてくれるに違いない。
References:popsci. / mentalfloss.など/ written by hiroching / edited by parumo