コロナは歴史の岐路か ウイルスに勝った国と負けた国の明暗 (1/2ページ)

新刊JP

コロナは歴史の岐路か ウイルスに勝った国と負けた国の明暗
コロナは歴史の岐路か ウイルスに勝った国と負けた国の明暗

新型コロナウイルスの感染者が日本でも急増の一途をたどるなか、4月7日、政府は緊急事態宣言を発令した。科学が発達した現代で、ウイルスが人間の生命と生活にこれほど打撃を与えることなど、だれが想像したであろうか。

ただ、どれほど医療や製薬技術の発達したところで、未知のウイルスに対して人間は常にもろい存在なのだ。古くは中世ヨーロッパで猛威を振るったペスト、天然痘、結核……。近年ではSARSやMERS、そして2009年にアメリカで発生した新型インフルエンザの悲劇は、記憶に新しいだろう。

人類の歩みはウイルスとの闘いの歴史でもあり、感染症の流行によって、文明は常に大きな転換を迫られてきた。ウィリアム・H. マクニールの名著『疫病と世界史』(中央公論新社刊)は、私たちにそんな教訓を伝えてくれる。

■巨大文明・アステカ帝国を滅ぼした真犯人

15世紀から16世紀にかけて北米大陸で一大文明を築いたアステカ帝国は、スペイン人の侵略によって滅びたと言われている。だが、当時、人口数百万人を誇るアステカ帝国に対して、侵略したスペイン側はわずか600人足らず。いくらスペイン人が馬や銃を持っていたとしても、それだけの人数で短期間のうちにアステカを滅亡させることができたのであろうか。

マクニールは、この滅亡劇の裏にあった疫病の存在を指摘する。「天然痘」だ。
スペイン人によってもたらされた天然痘は、このウイルスに対して免疫のないアステカ人を直撃。アステカの全住民の三分の一か四分の一が死ぬほどの大惨事となった。

この疫病がもたらしたのは、アステカの国力減退だけではない。自分たちが未知の病になすすべもなく苦しむ一方、スペイン人たちはいたって健康である。この事実はアステカ人たちの目に、「神はスペイン人の側についている」と映ったに違いない。結果、アステカ人は古くから信じてきた土着の神まで捨てキリスト教に改宗することになった。たったひとつの疫病の存在が巨大文明を滅亡へと導いたのだ。そうマクニールは結論づける。

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