捨てられた恨みで怨霊に…『今昔物語集』より、復讐に燃える妻から逃げる夫、そして陰陽師のエピソード (5/6ページ)

Japaaan

夫を殺すべく、さまよい始めた妻の怨霊(イメージ)。

「さぁ……アイツを殺しに行かなくちゃ……」

陰陽師の術によって積もりに積もった怨念が解放されて、とうとう動けるようになった妻は、意気揚々?と出発します。

(やっぱりー!)

思い当たるところが多すぎるアイツ(夫)は、自分を殺そうと必死にほうぼうを探して回る妻の恨み言を延々と聞かされながら、震え続けるしかありません。

「アイツは新婚当初から……あぁでもない……こぅでもない……」

「いつぞやなんて、ドコソコの娘と浮気した時も赦してやったのに……」

「あんなことをされた……こんなことも言われた……」

「……許せない……許せない……許せない……っ!」

(もう何十年も前のことを、まだそんな根に持っていたのか。あの時俺はちゃんと謝って、お前も許してくれたはずじゃないか。しつこいヤツだな……)

いつ終わるとも知れない愚痴を聞かされ続けて、いい加減うんざりする夫でしたが、反論に口を開けば、ここまでの苦労がすべて水の泡。ひたすら耐えるよりありません。

恐怖の終わり

(……やれやれだぜ)

内心でため息をついた夫は、ふと落ち着いて結婚生活を振り返ってみることにしました。

(しかし、コイツはこうボロッカス言うけど、いいことだってあったじゃないか)

貧しいけれど心温まる団欒だって、決してなかった訳じゃない。互いが互いを慈しみ、思いやり、苦楽を共に乗り越えてきたじゃないか。

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