関西「1万円ニセ札工場」にリアル潜入(2)ニセ札の印刷自体は中国で (1/2ページ)

Asagei Biz

関西「1万円ニセ札工場」にリアル潜入(2)ニセ札の印刷自体は中国で
関西「1万円ニセ札工場」にリアル潜入(2)ニセ札の印刷自体は中国で

 待ち合わせ場所だけ教えられていた。夜9時を過ぎた関西某市の公園には、カップルが2〜3組いるだけだった。季節は冬、寒空の下で星を眺めながら時計を気にしていると、急ブレーキをかけ、1台のワゴン車が公園前に止まった。黒塗りのハイエースだ。

 そこから大柄の男が3人降りてきて、駆け寄ってくる。

「お前、丸野か?」

 あまり流暢ではない日本語で名前を尋ねられ少し動揺したが、どうやら彼らが組織の人間らしい。

「はぁ、そうです。僕が丸野ですが‥‥」

 そう答えた瞬間だった。いきなり後ろから羽交い絞めにされ、茶色いコーヒー豆を入れるようなズタ袋を頭から被せられたのだ。首のところでヒモを縛られた。さらには、後ろ手でも縛られる。これがまた痛い。麻のような素材なのか、肉に食い込む感触がたまらなくこたえ、自由を奪われた恐怖に現実感がなくなった。

 そのまま車に押し込められると、バンは発車した。

 まるで拉致─。生きた心地がしないとはこのことで、右へ左へ、一体どこに向かっているのか皆目見当がつかない。

 着いた先では追い立てられるように降ろされた。イスに座らされると、やっとズタ袋を取ってもらえた。

 一瞬、久々の光源に目がくらんだが、飛び込んできた光景は、間違いなくチャイニーズマフィアの事務所という佇まいである。

「福」と書かれた布切れが壁にかかり、筆者が苦手な八角の香りがかすかに漂ってくる。

 座らされたテーブルの対面には、金無垢のロレックスを光らせた初老の男が座っていた。ボスの名前は劉超夏(仮名)。

「吉田さんにはニセ札の面でお世話になっています。私も日本に来て27年。いろいろと世話してもらってますよ」

「そうなんですか」

 流暢な日本語で友好的に話しかけてくれたので、なんとか言葉を返せた。

 すぐさま彼は、バレンチノのセカンドバッグから100万円の束を2つ取り出すのだった。

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