今とはまったく違った江戸時代のお寿司の価値。由来・値段・人気ネタを比べてびっくり!

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今とはまったく違った江戸時代のお寿司の価値。由来・値段・人気ネタを比べてびっくり!

お寿司の起源は「魚の漬物」

歌川広重 画

「お寿司」はなんだか不思議な食べ物です。海外の人に「日本の食べ物といえば?」と聞くと必ずと言っていいほど答えとして出てくる食べ物ですが、一方で私たち日本人にとっては、カップラーメンやおにぎりほど気軽に食べられているわけではありません。

回転寿司やスーパーでも安く気軽に食べられるのに、私たち日本人は心のどこかでは今でも「お寿司は特別なごちそう」と思っているのではないでしょうか。

自宅でなかなか握りずしを作って食べる、ということはしないので、外食限定の特別な料理というイメージなのでしょう。

では、昔はどうだったのでしょう? 特に江戸時代のお寿司の価値・値段などを見ていこうと思います。

まず、お寿司の中でもで一番メジャーな「握りずし」。

この握りずしのもとになったのは、江戸中期ごろに作られた「早ずし」と考えられています。早ずしは醸造酢を使って作られ、とにかくスピーディーに作ることができました。

岩波新書『すしの歴史を訪ねる』によると、お寿司の起源は「魚の漬物(保存食)」だったそうです。

漬け込むことで生じていた「酸味」がその味わいの特徴だったわけですが、いちいち漬け込んでいては食べるまでに時間がかかります。

そこで、魚の漬物が今のお寿司の形態に変化していく中で、味付けとして酢を使って酸味を補うようになったのです。

今もお寿司には酢を使いますが、それは手早く味付けをしてすぐに食べられるというスピーディーさと切っても切り離せない関係だったわけですね。

手軽さと高級さ…これぞお寿司の不思議

さて、スピーディーに食べられるということは、気軽に食べられるということでもあります。

つまり、江戸時代のお寿司はそんなに高級なものではなく、手軽・気軽に食べられるものだったのです。

とはいえ、最初からそうだったわけではありません。お寿司が「魚の漬物」だったことからも分かる通り、もとは作るまで時間がかかっていました。

ところが、江戸時代に「客の目の前で握ってすぐに提供する」という握りずしの新たなスタイルが登場し、大人気となったことで、お寿司は革命的に変化したのです。

これがきっかけで寿司屋も急増したのですが、いちいち店舗を構えるには土地が足りません。そこで、小さな面積でも開ける屋台が増えました。

現代の私たちが、コンビニでホットスナックや中華まんを買うのと同じような感覚だったのかも知れませんね。

江戸の郷土料理として知られる「江戸前寿司」も、もとをたどれば、屋台で気軽に食べられていたお寿司に行き当たります。

ちなみに、今も「立ち食い」の寿司屋がありますが、この立食形式のお寿司というのも、元々は屋台で寿司を販売していた時代の名残です。

このように、もともとお寿司はファストフード的な位置づけの食べ物でした。それは一周回って現代の回転寿司やスーパーのパック寿司などに受け継がれていると言えるでしょう。

「安く気軽に食べられる」という意味では、お寿司はそんなに価値の高くない食べ物と言えます。

一方で、お寿司には「お祝いのごちそう」「寿司のにぎりは職人芸」「本物のネタは高級店でしか食べられない」という敷居の高さもありますね。

安さと高さを兼ね備えた、不思議な食べ物です。

値段も人気のネタも全然違う!江戸時代のお寿司事情

さて、それでは価格面ではどうだったのでしょう。

現代は、回転寿司で安いものだと1皿に2貫のって100円で食べられます(90円というケースもあります)。

一方江戸時代はというと、当時の金額を現代の額に換算すると1貫で100円弱だったといわれています。今の回転寿司で、ワンランク高い部類のものと同じくらいですが、それでもかなり気軽に食べられる部類だと言えるでしょう。

ところで、驚くべきなのは「玉子焼き」の値段。今ではかなり安いイメージの玉子焼きのお寿司ですが、江戸時代ではなんと1貫およそ200円でした。

これには、当時の卵の値段が現代で言えば一個100円くらいと、今よりもかなり高かったことが関係しています。私たちが普段スーパーで購入する卵は10個入って約200円程度なので、5倍くらいの価格ですね。

江戸時代は、人気のネタも今とはだいぶ違っていました。

現代だとやはり、人気のネタと言えばマグロのトロがランキング上位に入るでしょう。実際、マグロは高級魚で、一本買うだけで数百万から時には数千万円まで動くとされています。

そのマグロのネタとしての魅力は、なんといっても「たっぷりのっている脂」です。

しかし、実は江戸時代は、そんなマグロは不人気な魚として有名だったのです。

これは、当時と今の日本人の味覚の違いが大きな理由です。現代の日本人は海外由来の料理もよく食べるので、味の濃さや脂っこい料理にも舌が慣れています。

しかし、江戸時代の人々はあっさり・さっぱりした食事を好んでいたので、油がたっぷりのったマグロは好かれなかったのです。

当時の人々が好きだったネタは、まず初期のお寿司では「コハダ」でした。その後、ネタの種類が増えるにつれ、エビや白魚なども増えていったそうです。

また、江戸っ子たちは、季節ごとに変わる「旬」の魚の寿司を好んで口にしていたとも言われています。

こんなところは、現代の回転寿司で季節ごとに行われる「○○フェア」で、季節のネタがアピールされるのとつながっていますね。

こんなふうに見ていくと、なにげなく食べているお寿司や、それを味わう私たちの味覚にさえも、ちゃんと歴史があることが分かります。

参考資料

東洋経済オンライン nippon.com 日本食文化の醤油を知る -江戸の食と暮らし-

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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