生きながらにして死を経験し克服するチベット密教の瞑想技法「ポワ」 (1/3ページ)

心に残る家族葬

生きながらにして死を経験し克服するチベット密教の瞑想技法「ポワ」

死はすべての終わりだろうか。死んでみなければ本当のところはわからない。もし死後の世界、死後の意識の状態を生きているうちに知ることができれば死は怖くなくなるかもしれない。チベット密教の瞑想技法「ポワ」はそれを実現させると言われている。

■死の瞑想「ポワ」

チベット密教には「ポワ」(ポア)と呼ばれる瞑想技法が伝わっている。「ポワ」は死後、輪廻転生の円環から逃れることが目的である。そのために瞑想を駆使して意識を肉体から高いレベルに転移させるとする技法である。「バルド・トゥドル」と呼ばれる、日本では「チベット死者の書」の名で知られるチベット密教の経典によると、人間の身体には生命活動を司る「風」(ルン)というエネルギーがあり、「脈管」(ナーディ)という通路を巡っている。中でも会陰(肛門と頭頂の間)から頭頂を貫く「中央脈管」(ウマ)は重要な器官で、「ポワ」を修めた者は死に際し、風を中央脈管を通じて「梵孔」(ブラフマ孔)と呼ばれる頭頂の穴から放出し「解脱」させることができるとされる。簡単に言うと、私たちの死後は輪廻転生で三悪道(地獄・餓鬼・畜生)に落ちる危険がある。そうなる前に意識(魂、霊?)を輪廻から抜けるべく、高いレベル(極楽浄土?)に飛ばして逃げてしまおうというのである。

風は中国思想でいう「気」、脈管は「経絡」に相当していると思われ、「ポワ」による頭頂からの意識放出は中国仙道の「出神」に類似しているのが興味深い。

瞑想技法としての「ポワ」自体はシステマティックで誰でも学ぶことができる。「無の境地」を求める禅とは異なり、密教の瞑想の基本はイメージである。阿弥陀仏や観音菩薩などの姿を観想し、意識が頭頂から飛び出して仏の世界に向かうなどのイメージを行う。「ポワ」の瞑想が成就すると額に穴が開き、穴が空いた者にはその証としてグル(師)が穴に茎を差し込んだりもするという。

■死後のガイドブック「死者の書」

「ポワ」を成就できなかった人間は死後、風が他の脈管から出てしばらくの間は彷徨うことになる。この期間を「中有」(バルド)という。日本でも成仏する前の中間期「四十九日」が伝わっているが、チベットではこの期間の間に解脱できなければ再び輪廻転生に巻き込まれてしまうとされている。

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