ワーナーブラザースで多くの邦画・洋画を手がけたプロデューサーが綴る物語。ユーミンの「ベルベット・イースター」が愛と戦いに命を輝かせる女性たちの人生を紡いでいく。 (3/4ページ)
2007年、ドリームワークスの映画配給宣伝統括ディレクターを務め「カンフーパンダ」などを担当し、その後、KADOKAWAにて実写映画「ルパン三世」などの映画の企画制作を手がける。2017年から2022年末までワーナーブラザースジャパンにて映画とアニメの企画制作部門Local Productionのバイスプレジデント上席執行役員に就任(上記はすべて池田宏之名義)。
■著者・池田有来が小説『ベルベット・イースター』に込めた思い
「私とヴァネッサ・パラディが共演できるような物語を作ってほしい」、そんな言葉をビビアンスーさんから頂いたのは2000年のことでした。その時は“台湾とフランスの若い女性の友情物語”という設定から心がときめくような発想が生まれず、冒頭から少しだけ書いた原稿はありましたがそのまま時が流れていきました。2015年、仕事があってパリに行く機会があり、そこで旧友と会って夜中までパリの中心部を逍遥していたとき、凱旋門の下に立ち慰霊の火の向こうに車もまばらで街灯が歴史のある建物と道を照らすシャンゼリゼ通りを見下ろすと、自然に、心の中に荒井由実(ユーミン)さんの「ベルベット・イースター」の旋律が聴こえてきました。真夜中の十二時半頃のことです。そして台湾の女性とフランスの女性の強烈にダイナミックで一方とても繊細なラブストーリーが心に浮かび、突然、一刻も早くこの物語を描き始めたいという気持ちが昂ってきました。その後、妻のドイツの実家に行き熱に浮かされるように書き始めたのがこのお話でした。楽曲「ベルベット・イースター」は主人公の女性が一人称で彼女の想いを歌っていく歌ですが、小説「ベルベット・イースター」は台湾人女性ビビアンとフランス人女性ベネディクト二人の物語である一方で、彼女たちを中心に十名・八カ国を超える国の人々の物語が展開していく複合的な物語でもあります。そして直接的・間接的、自覚・無自覚はありますがその登場人物たちは楽曲「ベルベット・イースター」に繋がっています。その意味で、この物語には一つの歌がこれだけ多くの国の人々の人生に影響を与え彼らの人生を輝かせることができるという思いを込めました。人が物語を作り物語が人を動かす。この映画作りの基本的な考え方に「一つの素晴らしい歌は一人の人生をも変える」というメッセージを加えたかった。