激太り金正恩「痛風説」の要因は意外な高級食材

デイリーニュースオンライン

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藤本健二氏が握ったある寿司ネタに喜んだ金正恩

 北朝鮮の金正恩第一書記の動静報道が途絶えて1カ月近くがたとうとしているが、その背景に「肥満からくる通風説」が囁かれている。

 実際に北朝鮮公式メディア「朝鮮中央通信」でも何度か足を引きずる姿が報道されていることから、太りすぎによって体調に異変があったとしてもおかしくはない。彼の身体スペックに関しては謎のままだが、体重が100kg超であることは間違いないだろう。

 一昔前ならいざ知らず、現代的な感覚からすれば、国家の指導者、しかも若さが売り物の指導者ならスマートなほうがいいに決まっている。まして、北朝鮮の食糧事情は厳しい。多くの民衆が一日一日の食糧を得るのに東奔西走し、優遇されている軍隊(朝鮮人民軍)のなかからも栄養失調の兵士が出るありさまだ。

 そんな社会で、太った指導者がいくら痩せこけた民衆に「人民のために経済をよくしなければならない!」と訴えても「まずは、アンタのそのカラダをなんとかせぇ!」と突っ込まれてもしょうがない。もちろん、あの国で最高尊厳(=金正恩)に対するそんなツッコミは御法度であり命取りだが、苦々しい思いで「太った指導者」を見る民衆もいる。

 筆者は、6月に中朝国境で出稼ぎに訪れている北朝鮮の人々に取材したが、その口からも「我々は、食べ物を得るため死に物狂いの思いをしているのに、あの人はあんなに太って……」という呆れた声も聞かれた。

 そんな民衆の思いを知ってか知らでか、金正恩が太っているのは独裁者として贅を尽くしているからだ。父・金正日の贅沢三昧ぶりは、元料理人の藤本健二氏によって暴かれている。藤本氏は2012年の訪朝時、禁制品であるクロマグロを持ち込み、金正恩のために寿司を握ったが、それをおいししそうに食べていたという。また、スイス留学経験があるからか、スイス産のエメンタールチーズの味が忘れられず、大量に輸入しているとの情報もある。いずれにせよコッテリした食事を好むようだが、だとすればあの太り具合も納得だ。

老幹部に若造が対峙するには、太るしかない

 先代にならって彼自身が、困窮に苦しむ人民達の生活を顧みず、贅を尽くし不摂生な生活を送ったことからあの体になったことは想像に難くない。ただし、彼の太りすぎはそれだけが原因ではない。「太らなければならない」北朝鮮独特の理由もあるのだ。

 北朝鮮に限らず、食糧事情が悪く貧しい国家ではどうしても肥満は「富の象徴」にならざるをえない。また、彼自身の権威を高めるためにも「太った身体」は不可欠だ。北朝鮮権力中枢部の人間達は皆、凄みのある面構えだ。年齢も70~80代が健在で、多くの修羅場をくぐり抜けてきた強者揃い。「朝鮮労働党の誰それがうんたらかんたら……」と偉そうに講釈を垂れている筆者も、実際に彼らを前にしてギロッと睨まれたらヘビに睨まれたカエルになるだろう。

 たとえお飾りであろうと、金正恩はそんな強者共を束ねる立場にいるわけだから威厳がなくてはつとまらない。実際、金正恩の祖父・金日成が長きにわたって北朝鮮の頂点に君臨したのは、あの堂々たる体躯で周囲を威圧したことも大きい。

 翻ってみて、金正恩はどうだろうか? 年は若く、背もそれほど高くない。30年かけて後継者教育を受けた金正日のような経験値も皆無だ。指導者としての資質は、三代目という血筋のみ。そんな彼に、まず求められたのが、威厳を付けること。威厳がなければ、無理矢理でもつけるしかない。そのためには太らなければなない。滑稽な理屈かもしれないが、北朝鮮社会ではこんなことがまかり通るのである。

 しかし、背伸びしようとしたセルフ・プロデュースが国内や国外から批判を浴び、挙げ句の果てには体調を崩したとするなら、こんなに皮肉な笑い話もない。やはり、ここは誰かがちゃんと金正恩本人に進言した方がいいだろう。

「金正恩同志、指導者として第一にすべきことはダイエットです」と。

著者プロフィール

高 英起

デイリーNK東京支局長

高 英起

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」の東京支局長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』(新潮社)など

(Photo by KCNA

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