拘置所の"臭いメシ"を試食…東京拘置所矯正展ルポ

デイリーニュースオンライン

 10月4日、東京都、小菅にある東京拘置所で開かれた「第3回東京拘置所矯正展」に行ってきました。お目当ては、実際に拘置所の収容者が食べているのと同じメニューという「拘置所レシピのお弁当」。大人気ですぐに売り切れるという話を聞いていたので、昼時を外して11時に到着したのですが……。

 売り切れている……! しかし、写真を見れば納得。未決囚の食事を体験云々の以前に、この内容で350円は普通に安い! そりゃあ売り切れますよね。

 そんな僕たちが仕方なく手にしたのが上のカレー弁当。これも拘置所レシピということですが……ま、普通のカレーですな。「あっ、ごはんが麦ごはんだ!」「拘置所っぽい!」と盛り上がるわれわれ。なぜ普段よりグレードの落ちたカレーにハシャいでいるのか……。

 ともあれ、拘置所での食事は豪華ではないけど決して貧しくもなく、人権はしっかり配慮されてるなと感じました。

 また、今回の催しでは、様々な企業や団体が露店を開いており、さらに奥の方では各地方の刑務所から出向してきた刑務官たちが露店で受刑者たちの作った商品を販売していました。各刑務所ごとに特色ある物品を並べたその光景はまるで刑務所のコミケ! 壁サークルもある!

 そして驚いたのは、受刑者たちが作る商品がバラエティに富み、中にはかなりハイセンスなものもあることです。受刑者が刑務作業で作るものといえば、木工製品や家具などの地味なものばかりという印象ですが、こんなのもあります。

 さらにはキティだるまも。

 キティグッズって刑務所内でも作られてるんですね……。

「兄貴! お勤めご苦労さんです!」

「おう、中でキティ作っとったわ」

 こんな会話もあったりするんでしょうか。しかし、上のカツオ人間とのコラボ製品などは一体誰が考えているのか?? このハイセンスは誰の力によるものなのか、と思って刑務官の方に聞いてみました。

「商品の企画開発は刑務官によるものです。だから、そのデザインセンスも刑務官のものですね。所内では商品アイデアのコンペもありますし、売れ筋商品を調べるためにマーケティング調査をすることもありますよ」

 し、市場調査……。刑務官のお仕事というと、囚人を見張ったり、暴動を鎮圧したり、作業を監督したり……といったイメージですが、実際は刑務作業で作る商品の企画や、「本当に売れるか」検討したりといった面もある模様。また、元宮大工が入所したりすると、「……神輿が作れるんじゃないか?」となって神輿制作を企画するなど、受刑者(=社員)を使って中小企業運営をしている、といった感覚もあるようです。意外とガチで商売してるんですね……。

「刑務作業って、売れるものをちゃんと作らないと回らなくなっちゃうんです。刑務所であるからには、受刑者を矯正するのが我々の任務です。そのためには彼らに労働作業を与えて、手に職を付けさせたり、『労働活動に従事する』ことを体験させなければなりません。なので、まず『仕事を作らなければならず』、さらにモノを作るために『原材料費を捻出しなければなりません』。この原材料費の捻出のためにも、ちゃんと売れるものを作っていかなければならないのです」

 厳しく囚人を見張っているだけと思われた刑務官ですが、そもそも彼らに「仕事を作る」(=商品を企画する)ことから仕事なんですね……。

 なお、各刑務所で開発された製品は全国コンクールで審査され、「もっと売れるようにするにはどうすればいいか」など、外部の専門家からアドバイスを受けることもあるそうです。時には、「若手の開発した斬新な商品企画が、年配の刑務官に理解してもらえず涙を呑む」といったこともあるとのこと。

 刑務官の意外な一面に触れられるイベントでした。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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