世界遺産「マチュピチュ」絶対に失敗しない3つの歩き方【前編】

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photo/Yuka Ozaki

「死ぬまでに一度は行ってみたい世界遺産」として人気のマチュピチュ。距離的にも予算的にもハードルの高い遺跡だけに、せっかく行くのであれば元を取りたいというのが正直なところですよね。なんせ、最短でも片道35時間ほどはかかるのですから。無駄は削り、じっくり見たいところには時間をかけて、心ゆくまで満喫したいと思うのは当然です。

 そこで今回は、ペルー通のライターが、予算・日程・体力を考慮した「マチュピチュを骨の髄まで味わいつくすモデルコース」を3つ、前編・後編にわけて紹介しちゃいます。

【No.1】短時間でも堪能できる「王道コース」

 マチュピチュまでは、空路で玄関口のクスコへ飛び、そこから電車とバスを乗り継いで行くのが一般的です。最短のルートですので、日程に余裕のない人は迷わずこのコースを選択しましょう。クスコから麓のマチュピチュ村までの電車は片道4時間。日帰りも可能なので、ツアーだと日帰りになることも多いのですが、ここはマチュピチュ村で1泊する旅程を強くおすすめします。

 だって片道35時間かけて行って、観光できるのがたった3時間程度って悲しくないですか? 往復9時間(電車4時間+バス30分)の移動と観光がセットというのもかなりハードですし、マチュピチュは高低差の多い遺跡なので、見て回るだけでも意外に体力を使うんです。いくら日程に余裕がないと言っても、1泊する時間は絶対に確保した方がいいですね。というのも、マチュピチュの標高はそこまで高くないのですが、前日に宿泊するクスコは富士山8合目程度の高所なんです。少しの移動でも疲れやすいし、睡眠中は何度も目が覚めてよく眠れなかったりするんです。睡眠不足のなかでマチュピチュ日帰りなんて、そりゃもう疲労しか残りませんよ。

 ということで、時間のない人が選択すべき「王道コース」のなかで、さらにオススメはこの2つです。

  • クスコ〜マチュピチュ村の移動手段を電車にする
  • マチュピチュ村に1泊して遺跡観光は2日間にする

 この2つを軸に、ここからは実際のルートを紹介していきますね。

【1日目】天空へと誘う車内はドッキドキ!

 まずは、早朝の電車でマチュピチュ村へ向かいます。上部がガラス張りの電車で、車窓から眺められるパノラマ景色は大迫力! 徐々にマチュピチュ感が出てくる景色を横目に見ながら、昨日の睡眠不足もあってウトウト……。これが意外にも気持ちいいんですね。電車を選択した者だけに許された特権です。観光に備えて体力を温存することもできるんです。

 駅へ到着したら、さっそくバスでマチュピチュ遺跡へ。急勾配を上っていく最中は遺跡などまったく見えないのですが、このあたりから天空へと引き寄せられているような感覚で胸がドッキドキ。そして、バスを降りたらいよいよ遺跡の入り口です。

 この時点で遺跡が突然眼下に広がるのですが、圧巻はやはり見張り小屋からの眺望。幾度となく目にした「あのマチュピチュの景色」が実際に目の前に広がる瞬間は、長い道のりも一気に吹き飛び言葉を忘れてしまうほど。「ついにここまで来たんだ!」という感慨深さもあいまって、思わずため息をついてしまうのは間違いありません!

 さらに、日帰りツアー客は14〜15時頃になると退散し始めるのですが、マチュピチュ村に宿泊する場合は、17時の閉園までめいっぱい観光できるのも魅力です。人気がなくなった夕暮れのマチュピチュは、息を呑むほど美しいので必見です!

天空へと誘ってくれる上部がガラス張りの電車の車内。photo/Yuka Ozaki

【2日目】早朝からマチュピチュの後方にそびえるワイナピチュに!

 マチュピチュ村に1泊することで、マチュピチュの後方にそびえるワイナピチュに、絶好のタイミングで登ることが可能になります。しかもこのワイナピチュ、誰でも登れるというわけではないんです。1日400人の人数制限があるうえ、時間も7〜8時と10〜11時と決まっている。ほかの町から来ていたのでは、到底間に合わないんですよ。

 では、時間帯はどちらがオススメかというと、ずばり7時。早朝は霧が多いという難点もあるのですが、気温的に暑すぎず、降りてくる人がいないので登りやすい。往復で2時間半くらいといわれているのですが、毎年滑落者が出るほどの急勾配。「あー、こりゃ気を抜いたら死ぬわー」と思える岩場とか手すりのない急な階段とかがゴロゴロあるので、ところどころで渋滞も起きるんです。朝一で行って、焦らずゆっくり登るのがいいんですよ。そのためにも、1泊がオススメなんですよ。

 そして急な山道(ときどき断崖絶壁)を登りきったあとには、下からでは絶対におがめないご褒美のような絶景が待ち構えています。山頂からのぞむ霧が徐々に晴れていくマチュピチュは、言葉では言い表せないほど幻想的ですよ。

ワイナピチュの山頂からのぞむ、霧のなかから姿を現すマチュピチュ。photo/Masayoshi Arai

【No.2】低予算でも楽しめる「スタンドバイミーコース」

 クスコとマチュピチュ村を結ぶ電車は、3段階の料金設定になっています。ですが、安いバックパッカー向けのものでも、往復で約150ドルとかなり高額なんです。ちなみに、一番高いクラスはなんと約800ドルもします。ですので、ここを節約したい場合は、「スタンドバイミー」と呼ばれる〝バス7時間+徒歩3時間(10km)〟のルートがオススメです。バスの値段は、片道20ドル程度。山奥の崖や深い谷を通るバス旅は正直、過酷。ですが、味わい深く、リアルに線路の上を歩く10kmの道のりは冒険心を煽ってくれます。バックパッカーのほとんどはこのルートを選ぶので、道に迷ったりする心配もまずありません。

 ということで、予算に余裕のない人にオススメしたいポイントは次の2つです。

  • クスコ〜マチュピチュ村の移動手段をバス+徒歩にする
  • マチュピチュ観光は1日だけどワイナピチュには登る

【1日目】大自然のなかを3時間のトレッキング

 予定としては、朝8時頃クスコを乗り合いのバンで出発し、水力発電所と呼ばれる地点に15時着。まぁ、ラテンの国なので、あくまでも予定は未定。トラブルで遅れることなんて、「むしろ想定内」くらいにかまえておいてください。

 バンは最初の2時間くらいは、舗装された道路を走ります。「7時間とか余裕じゃーん。寝てたら着くわ!」と思っていたのですが、そう甘くはありません。リクライニングが壊れていて、ただでさえ座り心地が微妙な車なのに、ここから先は悪路すぎて車内はまるで地獄絵図。ヘアピン続きの道でもスピードを落とさず、カーブごとにクラクション鳴らして走る車と、車酔いでリバースする乗客の音と匂いのコラボレーション。漫画に出てくるような断崖絶壁の道を対向車とすれ違うときなんて、スリル満点すぎてとてもじゃないけど寝るどころじゃない。

 そんな車に揺られながら、予定より30分ほど遅れて徒歩ルートのスタート地点に到着。ここからマチュピチュ村の鉄道駅までは10km。最初の10分ほどはジャングルのような道を通りますが(ちょっとキツイ)、それ以外はただひたすら線路の上を歩き続けます。まさに、リアル「スタンドバイミー」です。

 映画のように鉄橋を渡る箇所もあるのですが、ここは枕木の間隔が広いのでかなりスリリング。下を流れる川もかなりの勢いなので、高所恐怖症の人は脇にある細い歩道を通ることをオススメします(それでも怖い!)。

 時折電車に追い越されたりするのも一興。ただ、トンネルの中で「ポッポー!」と汽笛が聞こえると、寿命が2年くらい縮むので覚悟をしておいてくださいね。

 そして、マチュピチュ村に到着するときには日が暮れている可能性も高いので、ヘッドライトは必須です。明日も朝早いので、この日は早めに休むことを心がけましょう。

映画のように鉄橋を渡ってマチュピチュを目指す。photo/Masayoshi Arai

【2日目】入場料は54ドルの〝ワイナピチュ登山込み〟がオススメ

 いよいよマチュピチュ観光です。遺跡へのバス(往復20ドル)を徒歩にすることも可能ですが、このコースの場合は私はバスをオススメします。というのも、歩くとなるとかなりの上り坂なこともあって、余裕で1時間以上はかかりますし、これから観光する体力を温存する意味でも、バスが正解。下りであれば30〜40分程度で降りることができるので、観光後に余力があれば散歩がてら歩いてみてください。

 あまり予算をかけたくないといっても、入場料も高いことで有名なマチュピチュ。その値段は、約45ドル。痛い出費ですが、ここは絶対に削れないので仕方ありません。ついでといってしまってはなんですが、ワイナピチュ登山込みでも約54ドルと大した差はないので、ここはお金を使うところと割り切って、ワイナピチュへも登ってしまうのがオススメです。出費は多少かさみますが、ワイナピチュからは歩いてきた線路も、渡った川も、昨日追い越された青い電車までも、すべてが一望できるんです。それらを目にしたとき、「ようやくマチュピチュにたどり着いたんだ」という達成感にも似た感動は、体感した者にしかわかりませんよ!

自分の歩いてきた道を確認できるワイナピチュの山頂からの眺め。蛇行している道がバスルート。photo/Masayoshi Arai

 次回をはマチュピチュ観光を全身で満喫できる、「インカ道トレッキングコース」をご紹介します!

(取材・文/尾崎稚)

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