人気雑誌の編集長3人が提言「若者よ、東京を捨て地方へ行こう」

デイリーニュースオンライン

【ツブヤ大学のちょこっと四方山話】

 気鋭のゲストと突き抜けたトークで話題のツブヤ大学。今回は、10月8日に敏腕雑誌編集長3人をむかえ、横浜で開催されたトークセッションをレポートする。

雑誌が生き残る術は〝GPS的〟な考え方

 メンバーは『東京ウォーカー』をはじめとする角川ウォーカー責任者の玉置泰紀氏、『ソトコト』編集長の指出一正氏、『オズマガジン』編集長の古川誠氏だ。進行は自費で美容文芸誌『髪とアタシ』を編集、出版しているミネシンゴ氏である。

 トークテーマは「雑誌から読み解く地域」。なにやら難しそうなテーマだが、雑誌VSネットの戦いは? 売れる雑誌の条件は? 雑誌が巻き起こした今のブームは? など、興味深い話を各編集者がわかりやすく語ってくれた。

 まず、「ネットに勝つために、新しいことをやっていかなきゃいけない。そのためにはどういう視点が必要か?」と議題を投げかけたミネ氏に対し、「紙媒体にこだわりはなく、情報発信のデバイスはなんでもいい」と語るのは玉置氏。

「ウェブは便利な半面、紙媒体の立場を脅かしています。それでも雑誌はネットと戦い続ける。このジレンマをどう解決するかという答えのひとつは、〝GPS的な考え方〟にあると思います。というのも、エリアを武蔵小杉に絞った『武蔵小杉Walker』を2冊発行しているのですが、非常に好評なんです。それもそうですよね、だって、武蔵小杉なんて狭域のテーマが、読みやすくまとまっているものはネット上には転がっていませんからね」(玉置)

 狭域の中でも、売れるのは下町や鎌倉など、昔から人が密集している地域だという。実際にその場所に住み、活動している人の共感を得ることが〝売れる〟条件なのだとか。また、古川氏はこう分析する。

「『オズマガジン』も、鎌倉特集が一番売れるので、地方、地域を意識して作っているところはありますね。ネットで調べられない、『愛があるもの』は、今の地元愛が強くなっている世の中にぴったりとハマるんでしょうね」

地方で活発化する化学反応

 話は、メディアが生み出した最近のブームに移る。アメリカ、ポートランドの「自分の生活圏内で手の届く範囲のものを手に入れる」、DIY的ライフスタイルが、いま日本でも広まっているのだという。

 古川氏は、日本でのDIY的ライフスタイルは「小商い」に表れていると語る。

「先日、表参道で東京アートブックフェアというイベントがあったんです。ZINE(出版社など関係なく作った印刷物)を作って売ったりというイベントなんですが、ものすごい人出でしたよ。いま、自分で何かを生み出す小商いがキーワードですね。自分の生活を自分で作るという考え方が、市民権を得ているのではないでしょうか」

 ミネ氏も自費で文芸誌を出版していることから、自身もその生き方に近いという。

「興味持っていることを自分で作って、やってしまえ! っていう風潮がポートランドから来たのかもしれない。それがより顕著なのが地方で、地方に行くと若い人たちがすごく元気。新しいことが化学反応的にバンバン起きていて、カルチャーショックを受けました」(ミネ)

 指出氏も、ミネ氏と同じように地方に魅力を感じているようで、「僕がいま、『どこに旅行に行ったらいいか』って聞かれたら、島根とか高知って答える。それは、世の中がドラスティックに変わる可能性があるところだから。そういう場所にいる人とは、雑誌の垣根を飛び越えて一緒に何かやっていることも多いです」と東京にはない可能性があることを教えてくれた。

 古川氏も同様の意見だ。

「雑誌で地方の面白さを紹介することに意義を感じているし、すごく輝きを感じます。東京は発信することだらけで、まず情報の取捨選択や是非が問われる。いま、どこの都市に行ってもいいカフェやいいお店があるんで、もう東京が頂点っていうのはないですね。雑誌が地方を盛り上げて、それで活性化していくことでみんなが幸せになるんじゃないかな」(古川)

「今の時代、ブームは作らないほうがかっこいい!」

 自分の生活圏内での背伸びしない生き方、地方でなにか新しいことを始める楽しみ……。いま、1人ひとりの人生の楽しみ方は、いくらでも自由に選べる時代。それをあえて雑誌でコントロールし、大勢を1つの方向に持っていくという時代はもう終わったのかもしれない。指出氏は、ブームを生み出す雑誌の役目について次のように語る。

「時代的には、ブームは作らないほうが、かっこいいんじゃないかと思う。いまは、個人の幸せはいろんなところにあって、だから集団的思考性の共感を呼ぶことは難しいし、世間を束ねてブームを作る必然性があるのか、果たしてそれが求められているのか? と思います」(指出)

 現在、地方を舞台に、「同じ意識を持つ仲間同士で、それぞれの幸せな社会を作ろう」という活動が目立ち始めている。こうした動きには、少なからず3名の手掛けた雑誌が影響しているようにも感じられる。

 愛のある情報を発信していく雑誌には、社会を変えていく力がある。「雑誌は誰かを幸せにするためのツール」なのではないだろうか。

ツブヤ大学とは?
NPO法人ツブヤ・ユニバーシティーが運営する企画。2010年1月25日より本格的に始動。開始当初よりUstreamなどネット配信を活用した企画を行っている。マンガやゲームなどのサブカルチャーを中心に、アイドルビジネスに迫るイベントや建築に関する企画まで尖った企画を多く行っている。
公式サイト/ツブヤ大学

(取材・文/DMMニュース編集部)

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