【香港民主化デモ】初対話で透けた中国政府の”偽ざる本音”

デイリーニュースオンライン

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 2017年の行政長官選挙の制度改革をめぐって繰り広げられている香港デモ(雨傘革命)ですが、10月21日に香港政府と学生側が対話することで、わずかながら事態の進展が見られました。

 もっとも、その対話は歩み寄りとはほど遠くて、お互いに主張したいことを主張するだけ。それでも通常、政府のトップクラスが、何者でもない運動家と対話することなんてあり得ない話。これは凄いことだと思います。

 少なくとも、「民主」なんていう概念が全く存在していない中国に住んでいる僕にしてみれば、それが自治区である香港とは言え、歴史が変わっていくのを目の当たりにしているような感動を覚えたのでした。たとえ地位も金もない学生であっても、たくさん集まれば、こうして政府のトップを自分たちと同じところへ引き降ろすことができるのです!

今後の運動次第で香港の選挙が変わる可能性あり!

 今回はこの両者の対話について書こうと思うのですが、その前にまずこの日、香港の行政長官である梁振英がメディアのインタビューに対して、馬鹿げた発言をしていたので、それを取り上げたいと思います。要約すると次のような趣旨の発言です。

「(現在は、香港から選抜された1200人によって行政長官を決する投票が行われているが……)彼らはみんな各分野から選ばれた、優秀な人材だ。バランスよく分配されており、現行のシステムに問題があるとは思えない。学生たちが主張するように、全国民に参政権を与えてしまうと、月給1800ドル(18万円)以下の人たちの意見を汲みとることになり、ダメな人間が行政長官に選ばれる可能性がある」

 もしも、こんな発言を日本や欧米で政治家がしたら、どうでしょう? 貧乏人に選挙権なんか持たせると、どうしようもない政治家しか選ばれない。彼はそう言ってのけたのです。こんな奴が、香港のトップに立っているのだから、そりゃ学生たちも何とかしなければいけないといきり立つわけです。

 現在の香港は大陸と同様、格差が拡大していて、「籠屋」と呼ばれる、2畳程度の狭いスペースで暮らす貧困層が増加しています。1200人の選ばれた「金持ち」と「成功者」だけによって香港の選挙が行われている限り、この格差がいつまで経っても是正されないことは言うまでもありません。

 今回の対話にて民主派の学生が主張するのは、全ての国民に選挙権を与える選挙の実現です。一方、それに対する香港政府の主張は次のようなものでした。

「香港は独立国家ではない。中国政府の指示に従わなければいけない。民主と言っても、自由すぎるものはダメ。学生側が道路を占拠するのは、香港の法律に従えば違法だ。香港の商人たちも迷惑を被っている。君ら(学生)が主張している民主は偽りでしかない。民主とは言え、誰かが譲歩しなければいけない」

 一見、正論のように思えますが、要するに「そんな生意気なこと言ってないで引き下がれ」というわけです。そして、香港政府が主張する「民主」において、譲歩しなければいけないのは、常に「貧乏人」と「弱い立場」の者たち。金持ちや、権力者たちが我が物顔にのさばっているのです!

 ですが今回の対話において、ひとつ、重要なことが政府関係者によって語られました。それは、2017年の選挙制度がまだ確定事項ではないということ。つまり、学生たちが頑張れば、今後、生意気な政府の意見を覆すことができるかもしれないのです! 今回の件はまだ第一歩に過ぎない。今後、更に香港の雨傘運動は激しさを増していくのではないかと思われます。

 ちなみに、この対話後、運動の学生たちは各支部をめぐりまわり、応援してくれた学生たちに対して礼儀正しくお辞儀をして感謝の意を表していました。「中国は民主化されても民度が低いから何も変わらない」と主張する方もいますが、こういう礼儀正しい青年たちが民主活動に携わっていることを知っていただきたいと思います。頑張れ、香港雨傘革命!

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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