危険ドラッグ製造関係者が激白「客で人体実験するしかない」

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あまりにも危険な”臨床”試験
あまりにも危険な”臨床”試験

 新種の危険ドラッグ「ハートショット」で1か月に15人が死亡。危険ドラッグ吸引による交通事故も後を絶たず、警察当局による取り締まり強化だけでなく、ついに政府も本格的な規制に乗り出している。そんななか、こうした動きを受けて危険ドラッグ業界に大きな動きがあったのは、9月末のことだった。

 すでにネットショップ系は撤退が相次ぎ、都内繁華街のショップには毎日嫌がらせのごとく警察官が訪れる日々が続いていたが、ここに一斉摘発の情報が流れたのだ。

「ひとまずショップを残すにせよ閉店するにせよ、明らかに規制対象になる商材(危険ドラッグのこと)は、捨てても燃やしてもマズい。そこで、警察の目が行き届かない郊外に移そうって話になったんですよ」

 そう語るのは、ハーブ系危険ドラッグの「製造サイドにカネを投げていた」という金主の一人のMだ。危険ドラッグの移送先は長野県、山梨県、神奈川県の山奥などだったという。ここで気になる「製造サイド」とは何か?

「ハーブはもともと海外パッケージの商材をネットショップが取り寄せる形で、日本向けに輸入されました。リキッドやワックスはそうした形を今もとっているけど、吸いもん(喫煙型の危険ドラッグ)はずいぶん前から国内製造が主流です。音頭をとっているのは日本のヤクザ? いやいや、ヤクザの金主はいますが、基本的には不良チャイニーズの商売ですよ」

 Mはハーブ系危険ドラッグの「国内製造工場」の出資者だった。もともと別の裏稼業で財を成し、飲食店経営などもしているが、こうした不良資産家に対して「お金持ちの不良中国人」が声をかけてくるようになったのは数年前のことだ。

「声をかけてきた中国人は、もともと日本で中国系の飲食を展開している人間なんですが、会食の機会があったときに言われたんですよ。ネタ(素材)も道具も投げてやるから、ひと口50万円で工場始めないかって提案されました」

 50万円程度なら遊び金だったMは、ほかの金主に乗って自分もひと口投げた。実際に最も多くカネを投げた日本人の金主が細かい手続きをやった。不良中国人側からすれば、ハーブを国内で製造する工場の名義やスタッフの確保などを日本人に任せ、材料の卸を中国人が担当するというルートを作りたかったようだ。

危険ドラッグ製造工場は都心の町工場跡

 そして、いよいよ国内危険ドラッグ製造工場の場所が確保でき、ほかの金主と一緒に呼び出されたMが見たのは、驚愕の光景だった。

「工場というから山の中でやるのかと思っていたら、呼びだれたのは都心のK。結局、ショップを出して消費者が多いのは都心ですから。郊外に工場を作ったら交通費も大変だし、工場のスタッフも集められないってことで、都心部にひっそりと工場を設立している」

 工場のあるKとは、もともと零細な製造業の町工場がひしめき合っていたエリア。製造業不況で倒産した工場をそのままに使っているケースが多いのだという。工場を取り壊すにも多額のお金がかかるし、取り壊したところで土壌に金属汚染などが残っていれば、その除去にさらに金がかかってしまう。そうした町工場を安く借り上げ、製造工場に変えているというわけだ。

 Mが視察に訪れた町工場の中には、工業用扇風機と事業用脱臭機が並ぶ大きなテーブルが設置されていた。

「ネタは、でかいジップロックの中にパンパンに詰められた葉っぱ(乾燥植物片)と、ペットボトルに入ったリキッドです。製造方法は簡単で、この葉っぱに霧吹きでリキッドを染み込ませて、乾かして、小袋に詰めるだけ。完全にババアの内職ですね。中国人からは指示書が渡されていたのですが、葉っぱ何グラムにリキッドを適量吹き付けて、何分乾かすかということが書かれたシンプルな紙ペラ1枚だけなんです」

 その成分は何か、草を吸うとどうなるか。そうした情報は一切書いてなかった。

「作っている側も売っている側も、それがどんな効果なのかわからない。末端のショップ店員が客から聞くしかないんですよ。つまり、客で人体実験。警察が『危険ドラッグ』とか言い出したときには笑いましたね。間違いなく“危険ドラッグ”ですから」

 吸引後の客が事故を起こすケースが増えた結果、都心からは店舗が激減し、規制対象のドラッグは地方に移された。その前に手を引いたMたちだが、「いくらとは言えないが投資した額から考えたら嘘みたいに儲かった」という。

「今後は警察の取り締まりが緩い地方、特に神奈川方面でこっそり店を出して売ってるみたいですね。余裕がないのは不良チャイニーズ。こっちに流す先がなくて、ネタがバンバン余っている状態で、新しく工場作れよって話が中国本国から流れて来てるみたいです。ただ、地方だと売り上げが都心ほどよくない。苦しい状況ですね」

 現在、国内での危険ドラッグ製造は一時ストップ状態にある。しかし、これまでもイタチごっこを続けてきた危険ドラッグ。新たな手を生み出して、再び隆盛を誇るのか。今後の動向から目が離せない。

鈴木大介
「犯罪をする側の論理」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心に取材活動をつづけるルポライター。著作に、福祉の届かない現代日 本の最底辺の少年少女や家庭像を描いた『家のない少女たち』(宝島社)『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)、『家のない少年たち』(大田出版)『最貧困女子』(幻冬舎)などがある

(Photo by Blind Nomad via flicker)

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