実はヨーロッパに輸出されている日本の神社|東條英利コラム

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「これは単なるファッションではない。本質的な理解あってこそ」
「これは単なるファッションではない。本質的な理解あってこそ」

 実は世界では人知れず日本人の生き方や考え方が評価されていることがある。今年は特にそうした傾向を実感させられるところも多かったが、有名なところでは、サッカーのワールド・カップで、日本人サポーターがスタジアムの清掃活動に及んだことなどが挙げられる。

 しかし、実は今年、ものスゴく画期的な出来事が迎えられていたことはあまり知られていない。それは、欧州初の神社建立である。

 私は5年ほど前から神社・神道を我が国固有のイデオロギーとして、その存在に注目し、全国の神社データベースの完成を目的としたポータルサイト「神社人」を運営してきた。ここ数年、そんな神社にも少しではあるが海外からの注目を集め始めるようになってきたのである。渋谷区に鎮座する金王八幡宮にオーストリアの欧州人神職が誕生したことも、その一つと言えるかもしれないが、何より異国の地に、しかも、日本人とは無縁の土地に神社が建立されることは過去を振り返ってみてもそう多くはない。

 しかも、その建立された国の背景を知れば尚更そう思うのだが、今回建立された神社は、欧州の中でもとりわけ小さな国、サンマリノ共和国という国に迎えられた。実は、こちらサンマリノ共和国はその規模は小さいながらも、世界最古の共和国として認められる非常に歴史ある国となる。時はさかのぼることローマ時代。時の皇帝ディオクレティアヌスの迫害から逃れたキリスト教徒たちがティターノ山に籠城戦を敷いて建国に導いたという背景を持ち、当然ながら、その9割近くがカトリックという純正のキリスト教国家となる。まさに宗教観を超えた交流である。

 しかも、今回の建立は、神社本庁もバックアップをし、その建立にあたっては、初代神武天皇をモチーフにした特製金貨を発行し、その収益金を用いて社殿建立にこぎつけている。神職は地元サンマリノのホテル・オーナーでありながらも、山形県は湯殿山神社へ修行に出向き、神階の免状を取得しており、決して、海外にある日本人街に、日本人神職が派遣されるような内々の話ではないのである。

 私も取材を兼ねて、6月に執り行われた建立式典に参加させていただいたが、この今回の動きの立役者となるサンマリノ共和国の駐日大使であるカデロ氏に、その真意を尋ねるとその返答はこうである。

「私は神社、神道を宗教だとは思っておりません。日本人が長年培ってきたライフ・スタイルであり、このスタイルは欧州の人たちにとっても必要なことなんです」

 私もかねてよりその持論として、神道は宗教ではないと考えてきた。それは、その言葉が意味する定義によるもので、「教え」に代わるものが一切ないというのもそう。いや、そもそも「宗教」という言葉自体が明治以降の近代に生まれ、「Religion」という外来語の訳語として迎えられた背景を知っていれば、如何にこの言葉の示す意味と神社・神道が不適合な関係であるかはおおよそわかるものである。

 そういう意味でも、今回の神社建立は、そうした細やかな背景も含め、すべてこのカデロ大使は理解をされた上で迎えられており、単なるファッションではない、本質的な理解のもとに生じたというのが何より大きいのである。社殿の隣に併設された木碑にはこう記されている。

「私のためではなく、あなたのためではなく、私たちのために……」

 教会の鐘が鳴り響く青空で聞いた神職の祝詞は何か新しい時代の幕開けを告げる、日本のもう一つの可能性であると、私は信じたい。

著者プロフィール

toujyou

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、一般社団法人国際教養振興協会を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

公式サイト/東條英利 公式サイト

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