【検証】「政治とカネ」維新の党・江田憲司共同代表の詭弁
【朝倉秀雄の永田町炎上】
松島前法相、小渕前経産省、宮沢経産相、江渡防衛相、西川農水相ら閣僚だけでなく、民主党の枝野幹事長や大畑前幹事長らや党幹部にも不透明な政治資金の疑いが明るみに出て、目下「泥仕合」の様相を呈している。与野党が互いに「アラ探し」に夢中になるなか、ついに橋下徹(大阪市長、維新の党共同代表)の"盟友”の疑惑が発覚した
政治とカネをめぐる醜聞が野党にも飛び火
案の定というか、日頃、きれいごとばかり宣っている維新の党共同代表・江田憲司氏にも「政治とカネ」をめぐる醜聞が飛び出した。
江田氏の資金管理団体「憲政研究会」の2008年〜2012年分の収支報告書で、「江田ウィメンズクラブ緑」主催のコンサートなどのイベント収入として計約91万円を計上しながら「支出」に関する記載がなかったのだ。さらに「江田憲司旅の会」が2011年に会費1人あたり6500円を徴収して旅行イベントを開催したのにもかかわらず、収支報告書には記載がなかった——というものだ。
江田氏は指摘に対し、「これらの団体は資金管理団体とは別の有志団体だから、本来なら収入として計上し、(憲政研究会の)収支報告書には記載する必要がなかった。収入を削除する」などと釈明している。
実態は政治団体なのに「任意団体」だと言い張る詭弁
そんな江田氏の言い分は明らかにおかしい。なぜなら、政治資金規正法第3条は「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体(主たる活動とする団体も同じ)」を「政治団体」としている。同第6条は政治団体に「設立の日から7日以内に代表者や会計責任者など」について届出義務を課しており、さらに同第8条は「届出前に寄付を受け、又は支出することができない」としている。もし第8条に違反して、届出前に寄付を受け、又は支出をしたりすれば、同第23条によって「当該政治団体の役職員らに5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」が科せられることになっている。
ところで、江田氏が「任意団体だから政治資金収支報告書の提出義務はない」と主張する3つの団体だが、いずれも「江田」と本人の名が冠されている。江田氏が出席して挨拶をし、「旅の会」の住所と電話番号は江田氏の事務所と同じだ。しかも、旅行には秘書5名が参加しているのだから、少なくとも「主として江田氏を支持する団体」であることは明らかだ。そうでないと言うなら、少なくとも「江田」の名は外すべきであろう。
どう考えても、実態はいわゆる「後援会」であり、政治資金規正法第3条に従えば間違いなく「政治団体」に該当し、「任意団体」では通らない。だから、仮に江田氏の資金管理団体に入った91万円が、届出をしていない政治団体の「寄付を受け、又は支出する」行為と認定されれば、3つの団体の役職員は刑罰を課される可能性がある。
さらに、江田氏が「共謀」あるいは「教唆」していれば、彼自身も共犯としての責任を問われかねない。そもそも江田氏の言い分が通用するなら、「任意団体」をトンネルに使えば、法で禁止されている外国人や赤字企業からの献金も「匿名化」できることになってしまう。
虎の威を借りる狐? 首席秘書官時代の悪評
悪いヤツほど理想論を宣う傾向があるが、その典型が江田憲司氏ではないか。江田氏はかつて、橋本龍太郎元総理の首席秘書官であったのをよいことに、虎の威を借りる狐のごとく偉そうに振る舞っていた。態度がでかく、政治家や官僚に対してのキツい物言いなどから「官邸の森蘭丸」と呼ばれていた曲者にして嫌われ者であった。生意気なところがあり、総理とも終始喧嘩していたと言われる。
東大在学中に、旧国家公務員上級甲種試験だけでなく、旧司法試験の論文試験にまで合格したくらいの切れ者だから、とにかく狡猾で「悪知恵」が働く。野心家のくせに自民党に入らないのも、自民党では当選回数や閣僚歴によって「格」が決まってしまうからだろう。いわゆる“雑巾かけ”と言われる、下働きで汗を流すのが大嫌いなのだ。弱小政党でも、「お山の大将」でいなければ気が済まない。TBSの社員である女房の力でテレビのコメンテーターとして頻繁にメディア露出し、選挙対策としたのもいかにも彼らしい。
過去には政治資金で不動産を購入している。「憲政研究会」の2006年度の政治資金収支報告書に、横浜市青葉区内の建物を840万円で購入した旨を記載。プレハブの事務所を建てたということのようだが、それが問題視された当時、本人のホームページには「『政治資金管理団体』の事務所なのだから、そのお金でプレハブを建てるのは献金の目的にも沿っているし、法的道義的にも何ら問題はない」という趣旨のコメントが載せられていた。その後、当該記事は削除されたようだ。
ふざけているのは、そんなデタラメ男の江田氏が、よりにもよって稀代の“政治ゴロ”である橋下徹大阪市長の口車に乗って維新の党の共同代表として「文書通信交通滞在費」の使途を公開する法案を提出していることだ。
失礼ながら、「維新の党」の議員たちにカネがあるとは決して言えない。文書通信交通滞在費を生活費に流用するしか能がない連中が、使途を公開しようとしたら「嘘だらけ」になることは目に見えているのに——。
- 朝倉秀雄(あさくらひでお)
- ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(ともに彩図社)など。