揺らぐ「日本一かわいそうな県」の地位…辺野古移設反対に隠された沖縄県民の本音

デイリーニュースオンライン

普天間飛行場から飛び立つオスプレイ(写真/アメリカ海軍)
普天間飛行場から飛び立つオスプレイ(写真/アメリカ海軍)

 沖縄県知事選の投開票が16日に行われた。当選したのは前の那覇市長翁長雄志氏(64)だ。アメリカ軍普天間飛行場の移設先が最大の争点と言われたが、その裏には沖縄県民しか持ち得ない複雑な感情が絡んでいた。翁長氏支援の関係者Y氏が声をひそめる。

「戦後、沖縄はずっと日本で一番かわいそうな県だった。今回の知事選は、その『かわいそうな沖縄』という立ち位置を取り戻すための選挙だったんです」

米軍関連の様々な問題を押し付けられた「かわいそうな沖縄」

 立候補したのは元郵政民営化担当大臣・下地幹郎氏(53)。元参議院議員・喜納昌吉氏(66)。前那覇市長・翁長雄志氏(64)、そして3期目を目指す現職知事・仲井真弘多氏(75)の4人。しかし実際のところは翁長氏と仲井真氏の一騎打ちと言っていいだろう。

 沖縄宜野湾市にあるアメリカ軍の普天間飛行場を同県内の名護市辺野古へ移設するかどうか。『YES or NO』を問うのが今回の沖縄知事選である。乱暴に色分けするとYESが仲井真氏で、NOが翁長氏である。選挙に勝ったのは翁長氏だ。つまり沖縄県民は飛行場の県内移設にNOを表明したわけである。

 ところが前知事の仲井真氏は在任中の2013年末に飛行場移設を視野に入れた辺野古の埋め立てを承認している。今回仲井真氏が破れ、普天間飛行場を「海外もしくは県外に移設すべし」と訴える翁長氏が当選したとはいえ、すぐに辺野古移設が凍結されるわけではない。

 政府は沖縄県知事選の結果にかかわらず移設作業を進めるかまえだ。とはいえ工事を始めるにあたって沖縄県の承諾がないとすすめられない手続きも当然ある。これから政府と県の綱引きが始まるわけだ。

 この結果の裏には沖縄県民特有の感情が横たわっていると前出のY氏は言う。

「沖縄は第二次大戦で苛烈な地上戦の戦場となり、15万人以上の犠牲者を出しました。戦後も米軍が居座り続けています。沖縄は米軍関連の様々な問題を押し付けられたかわいそうな県なんです。仲井真さんを始め、過去の知事たちは『かわいそうな沖縄』を武器に沖縄新興予算などをもぎとってきました」

 ところが最近『かわいそうな沖縄』の地位が揺らぎ始めた。

「東北の大震災、和歌山県の洪水、広島県の土砂災害、御嶽山の噴火、ここ数年立て続けに起こった大災害のおかげで沖縄の存在が薄れているんです。沖縄県民はこれを最も恐れています。だから翁長さんに投票したんです」

 Y氏はため息まじりに続ける。

「翁長さんがいくら反対しても、たぶん米軍飛行場は海外にも県外にもいかないでしょう。政府の計画通り、辺野古に移設されることになると思います。でも翁長さんは最後まで反対する。要するに沖縄は『嫌だけど押し付けられる』という形を取りたいわけです。ここが大切なんです。仲井真さんは辺野古移設をある意味で受け入れた。でもそれじゃだめなんです。反対に反対を重ねて、それでも政府が無理やり押し付けてくる。そうなって初めて、沖縄は『日本で一番かわいそうな県』という立ち位置を取戻すことができるんですよ」

 もちろんこれはY氏の私見である。沖縄県民全体がこのように感じているわけではない。しかし、沖縄のひとつの側面をあぶり出した指摘であることは間違いない。

(取材・文/江波旬)

「揺らぐ「日本一かわいそうな県」の地位…辺野古移設反対に隠された沖縄県民の本音」のページです。デイリーニュースオンラインは、米軍基地政治選挙自衛隊沖縄社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧