【プロ野球】広島・新井FA復帰をカープファンが歓迎しないワケ

デイリーニュースオンライン

広島東洋カープオフィシャルサイトより
広島東洋カープオフィシャルサイトより

 11月14日。元阪神タイガースの新井貴浩内野手(以下、新井)が、広島東洋カープ(以下、カープ)の本拠地、マツダスタジアムで入団会見を行った。

「本当に身が引き締まる思いです。カープに帰ってこいと言っていただけるとは、思っていなかった。悩みましたが、最後は育てていただいたところで燃え尽きたいと思った」

 会見の席上でそう語る男の目からは、並々ならぬ決意が滲み出ていた。推定年俸2000万円、背番号28。今季の年俸2億円からの大幅ダウンだけではなく、入団から背負ってきた25番の背番号も捨てた。まさに、背水、一からの船出である。

 2007年、FA権を行使してカープを飛び出したときは、ファンから裏切り者と罵倒された。市民球場を揺るがす大ブーイング、レプリカユニフォームも投げ入れられたその光景は、ファン以上に本人の目に色濃く焼き付いていることだろう。それ以降、カープファンにとって新井は、憎悪の的となっている。その本拠地へ再び足を踏み入れるということに、相当な覚悟があったのは間違いない。その覚悟が、あの決意の目だったのだろうか。何れにせよ、新井の第三章は 広島で幕を開ける。そこで、この新井の復帰劇にファンは何を思うのか。性別、年代問わず、100名のカープファンにその是非を問うてみた。生のカープファンの声をここに掲載してみたい。

新井貴浩の復帰を、歓迎する?or歓迎しない?

 まずは、新井の簡単なプロフィールを紹介しておこう。1998年、駒澤大学からドラフト6位で広島カープに入団。1年目から1軍デビュー。7本塁打を放ち、未来への期待を抱かせる。3年目の2000年にはレギュラーに定着。2003年からは4番に座り、2005年には41本塁打でホームラン王に。2006、2007は2年連続100打点とチームの顔として活躍した。

 しかし、2007年オフ、

「辛いです……。カープのことが好きだから」

 のセリフと共に阪神タイガースへ移籍。このFA劇にファンは激怒、前述した通りの大ブーイングへと繋がる。移籍後も主軸として活躍。2010年からは4番も務め、自己最高打点112を達成。翌年も93打点で打点王のタイトルを獲得するに至った。しかし、翌2012年からは、怪我に悩まされ成績は急降下。2014年シーズンは、新加入のマウロ・ゴメスにポジションを奪われ、スタメン落ち。オフに規約を超える大減俸を通告され、自由契約を選択した。そして、広島カープとの契約に合意。7年ぶりにカープの新井が誕生した。

 そんな、新井のカープ復帰にあたりカープファンはどう思うのか。100名のカープファンに行ったアンケートは以下の通り。

1:新井の復帰を歓迎するかしないか

2:新井のスタメンでの活躍はあると思うか?

3:この一件に関して新井に一言

 早速結果をみていこう。まずは、1について。

【質問】1:新井の復帰を歓迎するかしないか

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 〝歓迎しない〟が多数なのはこれまでの経緯から予想がついたが、〝歓迎する〟が4割近くいたことは予想外であった。では、その理由は何なのか。まずは、歓迎派の理由から。

「二千万で新井なら安い買い物」(30代会社員/男性)

「他球団に出ていった選手が戻るという前例を作ったことは大きい」(30代会社員/男性)

「新井加入による、梵、木村、鈴木誠、田中、堂林、小窪らが死に物狂いでポジションを争い、優勝争いに貢献する成績を納めることを期待が期待できるから」(30代会社員/男性)

「安い年俸で戻ってきたのには、新井の覚悟を感じます。けど、だからと言って歓迎してるわけじゃない。活躍してくれたらその時に初めてファンに認められると思います」(20代会社員/女性)

 これらを見る限り、新井貴浩個人への復帰を歓迎というより、あくまでもチームにとってのプラス要素を期待していることがわかる。それに対して、反歓迎派はやはり辛辣であった。

「一番必要な時に出ていって、一番要らんときに帰って来やがった」(20代学生/男性)

「戦力面を考えてもメリットが少ない。長打力を評価する声も多いけど FAしてから一度も年間20本打ったことがない。右の三塁候補は飽和状態」(30代会社員/男性)

「気持ちが伝わらない。球団のためなら帰ってこないのが筋であり仁義である」(30代会社員/男性)

「小窪、木村、梵のカープに尽くした選手、鈴木、堂林の若手の選手のチャンスが少なくとも減るから」(30代主婦/女性)

 やはり、7年の時を経ても新井に対するわだかまりは拭い去れないのだろうか。当時は、残留を臭わすコメントをしながらも土壇場で移籍。その後の会見で見せた涙が、ファンには矛盾を感じさせてしまったのだろう。

どこより強いFA移籍に対する嫌悪感

 過去、カープからFA流出した選手は7選手。これは全体から見ても8位で、1位の西武ライオンズの13選手と比べても約半数と決して多いわけではない。それでも、FA流出と言えばカープという印象を持つ人も多いだろう。それは、海外移籍の2選手を除く5選手が、同一リーグで資金力が豊かなジャイアンツとタイガースに移籍している。そのため、強奪されたイメージが強いのだ。さらに、カープは12球団で唯一、FA選手を獲得したことがない。流出してばかりなのだ。それゆえ、FA移籍に対する嫌悪感が強いのではないだろうか。とくに、新井移籍時はエース黒田のメジャー移籍と重なり、エースと4番のダブル流出の挙句、例の涙の会見。選手の権利と分かっていながら、ファンとしては割り切れない思いが残ってしまったと言わざるを得ない。

 しかし、そんな新井に対しこんな歓迎意見も。

「復帰を歓迎する。人には言えないこともたくさんあるし、苦悩の連続が人生。新井ほどの選手がカープを出て行かなければならなかった理由が我々ファンが知る由もないことが当時あったに違いない。一部のファンのいう〝裏切り〟が原因ではないと考えるのが普通。やり直せるのが人間のいいところだ。今日が始まり。がんばれ!」(40代飲食店経営/男性)

 こうした温かい意見もあるが、「新井のスタメンでの活躍はあると思うか」との質問に対する答えは、こうなった。

約9割のファンがスタメンはムリと回答

【質問】2:新井のスタメンでの活躍はあると思うか?

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 9割近くのファンが、スタメンでの活躍を見込んでいないようだ。というのも、来季38歳という年齢、近年の成績、怪我などを見る限り、全盛期のそれを望むことはできないだろう。ましてや、新井のポジションである3塁と1塁は伸び盛りの若手、外国人、実績ある中堅、ベテランが渦巻く激戦区。今季の.244/3本塁打/31打点という成績で、レギュラーで常時出場は現実的に見てかなり厳しいと見るのが当たり前か。これについては、ファンも以下のような意見を出している。

「今年と同じくらいの成績しか期待出来ないから、スタメンでは困る」(10代学生/女性/反歓迎派)

「出場機会を求めて戻った来たみたいだけど、若手の台頭や、右の長距離砲としての価値はもうない。違う使い方があるのではないかと思う」(30代自営業/男性/反歓迎派)

「彼が出ていったときとはチームの状況も違えば、同レベルであれば当然若手を使うことが予測できます。ただ右の代打としては期待しています」(30代会社員/男性/歓迎派)

「残念ながら殆んどない。新井がレギュラーや右の代打一番手にいる様では優勝はできない。ただ、故障選手のバックアップには期待」(30代会社員/男性/歓迎派)

 と、歓迎派からも全盛期のような活躍は期待していないという意見が大多数を占めた。確かに、タイガースをクビ同然で追われてきた選手がスタメンを張るようでは、カープの優勝は見込めないだろう。近年の躍進で、カープファンの意識も上がってきていることが伺える結果でもあった。

 ただ、一個人、カープファンとしては、スタメンではなく代打という立場での活躍を切望する。大ブーイングをもらった市民球場から、代打新井のコールで大声援渦巻くMAZDAスタジアム……。なんとも高揚感あふれるシーンではないか。

辛口は愛情と期待の裏返し!?

【質問】3:この一件に関して新井に一言

 そして最後に、ファンから新井選手へのメッセージ。

「引退試合が超満員のマツダスタジアムでやってもらえるかどうかで、彼の功績が証明されるんでしょうね。由宇の二軍球場で二軍選手に囲まれながら引退する様じゃ悲しすぎるわのぅ」(40代会社員/男性/歓迎派)

「練習に取り組む姿勢だったり派手なフルスイングだったり、ファンは勿論カープの選手の記憶にも残るようなプレイヤーになれる資質はあると思います。若いカープのリーダー的役割を期待します」(20代会社員/男性/復帰賛成派)

「古巣に戻ってきた以上、色んな人に叩かれるかもしれないが、死ぬ気で頑張って優勝に導いて欲しい。個人的に、他チームや選手を憎んだりするのが好きではないので、私は応援します」(30代会社員/女性/復帰賛成)

「一選手の考え方としては、チャレンジする気持ちは好きです」(40代自営業/男性/反歓迎派)

「戻って来たからには、カープでずっと頑張ってきた選手のためになるような活躍を期待します。優勝の夢を叶えてください」(20代会社員/女性/反歓迎派)

 と、歓迎するしないを問わず、帰ってきたからにはカープの選手として応援をするスタンスであるという意見が大半であった。払拭しきれない思いはあるものの、一時は新井のプレーに夢を見た時代もあった。新井貴浩という選手の真の力を知っているのもカープファンだけだという自負もある。なんだかんだ言って、広島産和製大砲に対しての愛情はあるという事にほかならない。

 新井の一打で10月の夜空に鯉が泳ぐ。その様を見せつけることができたとき、新井貴浩は再び広島の英雄に返り咲く。その姿は、じつは多くのファンが期待しているのかもしれない。

(取材・文/井上智博)

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