【プロ野球】松坂大輔は日本プロ野球で再び“怪物”に戻れるのか

デイリーニュースオンライン

Photo by TiVo_epaper via flickr
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 12月5日、松坂大輔投手(34)が米メジャーリーグ、ニューヨーク・メッツからソフトバンクホークスへの入団会見を行った。長らく日本のエースとして君臨してきた平成の怪物松坂大輔の日本復帰に、胸躍らせているファンも多いことだろう。

 これまでに、日本プロ野球界からアメリカメジャーリーグに挑戦した日本人選手は、1964年の村上雅則から2014年の田中将大まで52名。その内、メジャーの舞台から日本球界に復帰した選手は、松坂やオリックスバファローズへの入団が決まった中島裕之の二人を加え、現在33名にのぼった。

 近年、毎年のように、日本人プレーヤーの日本球界復帰が取りだたされている。しかし、メジャーの舞台で圧倒的な活躍を残しての凱旋帰国というよりは、日本時代のような成績を残すことができず、活躍の場を失い帰国するのがほとんど。アメリカから帰ってきた選手達は、日本でかつての輝きを取り戻す事ができているのだろうか? 来シーズンから日本でプレーするかつての「日本のエース」、松坂の今後を占う意味を込め考察してみたい。

 まず、これまでの主だった日本復帰メジャーリーガー達の渡米前、メジャー通算、帰国後の成績を紹介しておこう。

<投手>

<野手>

 戦力外からメジャーに登り詰めた斎藤隆以外、ほとんどの選手が成績をおとしている。起用方であったり、チーム内での役割もあるが、結果的に数字を落としているのは事実だ。そんな選手達の帰国後の数字はどうだろうか。やはりこれも多くの選手が満足いく活躍をしているとは言い難い。

 では、なぜ、メジャー帰りの選手が期待ほどの活躍ができないのか。まずは、年齢が大きな原因だと考えられる。

 日本プロ野球機構における海外FA権の取得条件は、入団から9シーズン一軍選手登録された選手に与えられる。9シーズンとなると、高卒一年目から一軍出場を続けていた選手で28歳。大卒になれば32歳だ。プロ野球選手の平均引退年齢が約29歳と言われる中、FAを行使してのメジャー挑戦は、 全盛期の峠を越えてからの挑戦という見方が相応しいと思われる。

 そこからメジャーで数年プレーした後の復帰となれば、年齢的にみて、全盛期のパフォーマンスを期待する方が無謀という考えに至るだろう。FAではなく、ポスティング制度を使って渡米した選手にしても、国内で実績を積んでからのそれとなれば、全盛期はメジャーの地で終えていると考えられる。

 そこにきて、松坂大輔は過去の日本復帰メジャーリーガー同様、輝きを取り戻せないまま終わるのか。はたまた慣れ親しんだ日本の地で復活を果たすのか。

 松坂大輔もメジャーでは、エースとしての活躍をしたとは到底言い難い。 2年目の2008年には18勝をあげ、今現在、日本人メジャーリーガー最多勝を記録しているが、それ以降は下降の一途をたどっている。2011年には肘の手術を行い、平均球速は全盛期の148kmから145kmまでに下降。速球で押さえ込むかつてのスタイルはなりを潜めてしまった感がある。

 それよりも懸念されるのが、与四球の異常な多さだ。2014年シーズンの一試合における与四球率は5.40。これはメジャー平均を大きく下回るばかりか、リーグ2位を記録した岩隈久志の1.06の約5倍と、その与四球率の高さは不安材料のトップクラスに位置付けられるのだ。

 与四球の多さにより、好投手を現す指標の1つWHIP(1イニングで、失策、死球以外に出したランナーの平均)では1.34。自身のメジャー通算でも1.40で、平均1.30、エースクラスなら1.10、1.00未満なら絶対的エースと言われるなか、この数字はかなりのマイナス要素と思われる。

 また、右肘手術の前にも2009年は股関節、今シーズンも肘の炎症で故障者リストに入るなど、近年故障がちな身体面にも大きな不安要素があり、これらが主だった日本での活躍に対するマイナス要素である。当然ながら、そこに来年35歳となる年齢からくる衰えも加わることとなる。

日本球界復帰がもたらすプラス要素も

 年齢、怪我、近年の不振からマイナスイメージの強い松坂だが、日本復帰にあたり当然プラス要素もある。まずは日本のマウンド。メジャー移籍から与四球率の高さが懸念されていた松坂だが、その最大の理由がメジャーの硬いマウンドにあると言われているのだ。

 元々、下半身手動の特徴的なフォームで投球していたが、メジャーの硬いマウンドに合わすため、現在の歩幅の狭い上体で投げるフォームに変更している。このフォームがコントロールを奪っていしまったという見方がある。フォームを元に戻すことは至難の業ではあるが、元来の日本式フォームに戻すことができれば、懸念されていた与四球の多さを改善できるのではないだろうか。

 ちなみに日本通算の与四球率は3.22。好成績とは言えないが、この数値までも戻せるのならば、メジャー通算被打率.209、奪三振率8.20とかなりの高水準を誇る投手だけに、復活に対する期待感は高まる。今シーズンも奪三振率8.42を記録しており、三振を取る能力は依然として高水準だ。

 ゆえに制球難が克服できれば、長らく日本のエースとして君臨していた当時の圧倒的な投球が蘇ることも夢ではないだろう。ちなみに日本通算となると奪被打率.191三振率8.69となり、WHIPも1.14。奪三振率と被打率には衰えが少ないことから、やはり制球難の克服さえなれば、活躍の道筋はできると考えて相違ない。また、以前よりも球速が落ちたこともあり、投球スタイルにも変化が見られる。渡米前は150kmの速球とスライダーが投球の大半を占めていたが、近年はストレートの割合が40%を下回り、カーブを多投。複数の変化球をバランスよく投げる技巧派に変わりつつある。会見の席上でも、

「若い時と一緒ではないと思っています。日本の8年とは違う形になる」

と、投球スタイルの変化を語るとともに、自信をのぞかせている。プラス要素とマイナス要素が複数存在するのは確かだが、平成の怪物の復活を望むファンは多い。かつて甲子園を賑わせ、日本プロ野球界の圧倒的エースとして君臨した松坂の姿をファンは忘れてはいないのだ。復活を懸念する声も多いが、松坂ならば逆境を跳ね返してくれるはず。プロ野球ファンとしては、そう信じずにはいられないのだ。

(取材・文/井上智博)

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