【LGBT市場】行動経済学から読み解くと見えてくるゲイビジネス成功の秘訣(後編)

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なぜ日本でゲイビジネスは成功しないのか
なぜ日本でゲイビジネスは成功しないのか

【ゲイリーマン発 日本のリアル】

行動経済学から見た日本のゲイ

[前編]日本LGBT市場でゲイビジネスが不発なワケでは、ゲイビジネスが成功しない背景について述べていきました。一概に「ゲイ」と限定するから話が見えづらくなるので、「ゲイ」という母集団を一度行動経済学的に再定義してみたいと思います。すると多くの日本のゲイは……

「同年代の既婚者よりも可処分所得が多く、趣味にかける金銭的・時間的余裕が比較的あり、これまでにも娯楽や趣味に関する消費行動をたくさん行ってきた独身男性たち」

 ということになるかと思います。

 もうおわかりかと思いますが、こうした母集団をマーケティング対象として考えたとき、非常に攻略難易度が高い超レッドオーシャン層であることがわかります。

 消費行動に非常に慣れた人たちということになりますので、当然良いものに対する目利きや新しいもの、楽しそうなものへの情報感度は非常に高い。

 しかもこうした消費行動に慣れている層の人たちであればあるほど、結果として例え同じ商品の購入を決めたとしても、「ゲイ専用」と言った形で誰かに提供された限定的な選択肢の中からその商品を選んだのと、無数に溢れかえる混沌とした選択肢の中から自分の意思でその1つの商品を選び取ったのとでは、満足度や納得感がまったく違います。

結局ゲイも普通の生活者

 意外に見落とされがちなことですが、多くの日本のゲイはゲイ専用のレストランで食事をしているわけでも、ゲイ専用の美容院で髪を切っているわけでも、ゲイ専用のデパートで買い物をしているわけでもありません。

「週末はゲイバーやクラブイベントに遊びに行き、同じセクシュアリティの友達と遊ぶことが多い」という、筆者を含めた割と”ゲイ濃度”が濃い生活を送っている層のゲイたちでさえ、平日は会社員等の仕事をしており、ノンケ(異性愛者)の同僚や先輩、後輩とほとんどの時間を共にし、みんなと同じサービスを利用し、街中で売っている普通の商品を購入して生活をしています。

 雑な言い方ですが、7日ある1週間うちの最低でも平日の5日間は、周りの同年代のノンケたちとまったく同じ世界を生きていて、同じ空気を吸って生きています。だから、当然求めるサービスや商品には、そこまで大きな差異は発生しないというのが、日本のゲイのリアルな感覚なのではないでしょうか。

 冷静に考えれば至極当然のことなのですが、これをマーケットとして捉えたとき、こうした前提となるバックグラウンドが抜け落ちてしまっていたのではないかと思います。

日本のゲイビジネス攻略の鍵は

 日本のゲイビジネス、とくに旅行やカルチャー、娯楽領域を攻略する鍵は、ゲイを想定ターゲットとはしつつも、「ゲイ」ということに頭を囚われすぎず、「自由な独身男性」のライフスタイルを分析してみることが、意外な近道になるのではないでしょうか。

 そして、この業界では「話題になること」が非常に重要だったりします。珍しいもの、カッコイイもの、可愛いものを見ると、ついSNSに上げたり、写真を撮って後日友人に見せて話題にしたりという行動は、同年代のノンケ男性たちよりも積極的に実践されているように見受けられます。

 既存の商品やサービスの頭に「ゲイ専用」「ゲイ向け」という接頭語を置くだけではなく、行動特性や指向性をより細かに分析し、一からモノ作り上げていかなければヒットはしない。商品やサービスづくりに近道や裏ワザはないのかもしれません。

著者プロフィール

ゲイライター

英司

東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)

筆者運営ブログ/陽のあたる場所へ ―A PLACE IN THE SUN―

(Photo by Lauren Anderson via flickr)

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