【艦これ】セリフから零れるドラマ 彼女たちの悲哀を感じ取れ!
【ほぼ週刊艦これ通信】
世間はすっかり年の瀬。クリスマスを楽しんだ人もそうでない人も、お正月の支度に入る人もまだ仕事納めも済んでいない人も、少し気が早いかもしれませんが、今年も一年お疲れ様でした。
この季節、随時更新できる点が強みのオンラインゲームでは、クリスマスの期間限定イベントや、プレゼントとして特典アイテムが配信された作品も多い。育成シミュレーション『艦隊これくしょん -艦これ-』もつい先日まで、登場キャラクター=艦娘(かんむす)の一部がサンタ風の衣装で登場したり、クリスマスにちなんだセリフを口にしたりという、期間限定仕様になっていた。
初めて(現代の)クリスマスという文化に触れたように感嘆する戦艦たち。華やかな雰囲気にはしゃぐ空母たち。ケーキを食べて目を丸くする駆逐艦などなど……なかには防空駆逐艦『秋月』にように、
「七面鳥を焼いたんですよ!」
と際どいネタを入れてくる艦娘もいたけれど。
これ、史実のマリアナ沖海戦において、練度不足から一方的に撃墜された日本海軍航空隊を指して、
「マリアナの七面鳥撃ち」
と揶揄されたのを逆手にとって、
「今度は負けないぞ!」
という気合いの現れなのでしょうか。深読みは尽きません。
「沈んだ敵も、できれば助けたいのです」
期間限定のものに限らず、彼女たちが口にする内容は、美少女ゲームのお約束である「萌える」ものから、戦史マニアを思わずニヤリとさせるマニアックなネタまで幅広い。
「テイトクのハートを掴むのは、ワタシデース!」
「司令官のために……私、頑張ります!」
といった好意を示すものがある一方で、
「ソロモン海のようにはいかないよ、っと!」
「小澤囮艦隊のときに比べれば、このくらいっ!」
と、かつての激闘を偲ばせるような言葉を吐露するときもある。
なかでも駆逐艦『電』が口にする、
「沈んだ敵も、できれば助けたいのです」
は、撃沈した敵艦から海へ投げ出された敵兵を救助したことに由来すると思われる。
ともすれば自身が撃たれる危険な戦場にありながら、敵味方の区別なく発露されたシーマンシップとして語られているエピソードだ。
これらが単に、
「昔こんな事実があった」
「こんな悲劇があった」
「だから戦争はいけない」
などと語るセリフだったら、かえって興醒めだったかもしれない。あくまで彼女たちの「性格」から滲み出た気持ち、心から希求する願いとして描かれているからこそ、多くのプレイヤー=提督たちが考えさせられ、また共感しているのかもしれない。
背負った歴史が重いからこそ、今浮かべている笑顔に意味が深まるのである。
(取材・文/秋月ひろ)