子どもからスマホを取り上げても解決しない 『ソーシャルメディア中毒-つながりに溺れる人たち』(高橋暁子 著)書評 (2/3ページ)

タブロイド

場合によってはそれが元でいじめが起きることもあるので、寝不足で体調を崩したり勉強などに支障をきたしてでも彼らはスマホの画面にはりつくのです。

学校から帰宅しても言葉で袋だたきに

ネットいじめはささいなきっかけで起き、身体的な暴力と同様に被害者を精神的に追いつめます。現代のネットいじめが昔と違うのは家に帰ってもいじめから逃げ出せないことです。LINEからのメッセージが止まることはないからです。いじめの方法も証拠となるトーク履歴を削除させたり、集団で延々と悪口を書き込んで孤立感を感じさせたり、羞恥心をあおる写真を撮ってそれを公開したりと、より陰湿なものになっています。

孤立した子どもが悪意を持つ大人に狙われることもあります。いじめに悩んでいた女子中学生がネット上で相談に乗ってくれた人にだまされて、性的な写真を送らされたり犯罪に巻き込まれる事例もありました。あまりに無防備な...と思うかもしれませんが、ネット上で知り合った人と実際に会うことは、もはや中高生にとってふつうのこととなりつつあるようです。そして優しくしてくれただけで「いい人だ」と、いとも簡単に信じてしまいます。

アイデンティティがまだ不安定な彼らは、誰かにその存在を認めてもらうことで自分の存在価値を見いだしがちです。だからInstagramに笑顔の写真を投稿し、ツイキャスで動画を共有するのです。「おもしろいね」「かわいいね」という反応を求めて。なかにはハッキングなどの違法行為をしたり人の面白い投稿を自分のアイデアであるかのように投稿する「パクツイ」をしてでも、自分の能力や存在感を誇示する子どももいます。

知ることが解決への第一歩

本書の中盤以降では、ネット依存症状の4つの傾向とそれらが起きる心理的なメカニズム、治療方法について解説しています。親が子どもを指導するためのケースが中心ではありますが、大人がネット依存症になった場合にも有効な方法でしょう。ネット依存症の度合いを知るチェック項目とともに具体的なリハビリ方法も書かれています。

ネット依存に限らず何か問題が起きたときには、それが何故起きたのかということを当事者の心理的背景や社会的背景とともに知ることが解決への第一歩となります。

「子どもからスマホを取り上げても解決しない 『ソーシャルメディア中毒-つながりに溺れる人たち』(高橋暁子 著)書評」のページです。デイリーニュースオンラインは、ネットなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る