子どもからスマホを取り上げても解決しない 『ソーシャルメディア中毒-つながりに溺れる人たち』(高橋暁子 著)書評 (1/3ページ)
LINEいじめ、SNS依存による鬱、バカッター(Twitterに不謹慎な投稿をすること)による炎上...。センセーショナルな事例で報道されていることは氷山の一角で、実際には私たちが思う以上に多くの若年層がネット上のトラブルに巻き込まれています。
では子どもからスマホを取り上げてネットから遠ざければ安全かといえば、それも適切な解決方法ではありません。なぜなら大人になってから、さまざまな危機管理を含めたネットリテラシーがないまま、初めて不慣れなネットとつき合うことのリスクが大きいからです。
私たち大人もまたネット上のトラブルと無縁ではありません。ほんの少しの注意と知識がないばかりにサイバー犯罪の被害に遭い財産を失うかもしれません。ネット上の不用意な振る舞いにより本人だけでなく企業が社会的信用を失う事例も後を絶ちません。
私たちはどのようにネットとつき合っていけばいいのでしょうか? 親として子どもを守るために、どのような知識を身につける必要があるのでしょうか?
元小学校教員のITジャーナリスト高橋暁子さんの新刊『ソーシャルメディア中毒-つながりに溺れる人たち』(以降『ソーシャルメディア中毒』)は、綿密な取材に基づく現状分析とともにいくつかの道筋を示してくれます。
スマホに支配される子どもたち本書を通して今の子どもたちの様子を見ていると、彼らはスマホを活用しているというよりもスマホに支配されているように見えます。人との距離感を適切にとれるほど精神的に成熟していなく、常に人からの反応を求めてしまうが故にスマホを介したメッセージのやりとりに没入していきます。まるでLINEなどのネットコミュニティが実生活よりも大切な居場所であるかのように。
早ければ小学生のうちからLINEを使いはじめ、相手の反応に一喜一憂します。送ったメッセージに「既読」がついても返事が来なければ「何か気に触ることを言ったかな」と気を揉み、逆に「相手を無視していると取られないように」友達からのメッセージには即返信をします。
いつまでも返信をしないことは「既読スルー」と呼ばれ、相手をないがしろにしたとみなされます。