無料でオリジナルグッズを作って一攫千金!? 『戦闘破壊学園ダンゲロス』グッズが完成
こんにちは、作家の架神恭介です。本日、僕の『戦闘破壊学園ダンゲロス』(作画:横田卓馬)のオリジナルグッズが発売となりました。
いや~、グッズって出せるもんなんですね! グッズ化なんて一部の大ヒット作品の特権であり、巨額のマネーが影で動く暗黒メガコーポの領分だと思っていたのですが、どうもそういう時代ではなくなってきたようです。
このTシャツとかどう考えても売れる気がしないのに気軽に口にしたら実現しちゃったし、無駄に43種類もカラーバリエーションがあるんです。
カラバリが100種類だろうと売れる気がしない。
こんな誰得グッズの企画が通ったのは、ひとえに今回グッズを作って下さったClubTさんの特殊な業務形態によるものです。
デザインTシャツ通販[Tシャツ12万デザイン販売中]: クラブT
ClubTさんは完全受注生産。従来のグッズ商品とは異なり、注文が来てから印刷するため在庫を抱える必要がなく、「シャレで作った商品がさっぱり売れない」ことになってもダメージが少ないわけです。もちろん僕たち作家側にも経済的な負担は一切ナシ。
今日はそんな、いつの間にやらすごく身近になっていたグッズ展開の現状をClubTの渡辺さんに聞いてみました。
個人でもグッズ化できる時代
──今回は月刊ヤングマガジンで連載中の僕の商業作品をグッズ化してもらったわけですが、個人・商業にかかわらず誰でもグッズ化ってできるんですよね?
渡辺「はい。個人の方でもデザインを入稿して頂ければ、自由にグッズを作って販売して頂くことができます。Tシャツ、パーカー、iPhoneケースなど様々ありますので、色違いも含めれば一つデザインを入稿して頂くだけで300種類ほどのグッズが作れることになります。入稿フォームがあり自動化されてますので、お気軽にご利用下さい」
──自動化ってことは、ClubTさんの側ではデザインとかに特に口出しはしないってことです?
渡辺「規約がありますので、それに沿って頂ければ問題無いですよ。注意するのは特に著作権侵害ですね」
──つまり、オリジナルデザインなら問題ないってことですね。たとえば、自分のサイトで漫画を描いている人が、漫画はKindle電子書籍で販売し、さらにグッズをClubTさんで売る、なんてことも……。
渡辺「可能ですね」
Point1:商業のみならず、個人の方でも気軽にグッズ化可能。規約に触れていなければ簡単にいけます!
作家さんが昔の作品をグッズ化するには?
──例えばですけど、昔、バリバリやってた作家さんが、過去の自分の作品をグッズにしたい……という場合って権利的なものはどうなるんでしょうか?
渡辺「出版社を通して作品を出していた場合ですよね? 一度、出版社に確認を取って頂ければ、と。軽くオッケーが出る場合も多々ありますし、逆に『ウチが間に入らせてもらいます』となって結構カッチリと進む場合もありますが。その辺はケースバイケースですね」
──僕が知り合いの編集者に聞いた感じだと、「ウチはグッズ化に関する事柄は契約書に盛り込んでないので自由にやってくれて構いませんよ」ってところと、「契約書でその辺も書かれてるので話を通して頂かないと……」ってところ、どちらもありましたね。でも、何にせよ「やらせない」ということはあんまりないんじゃないかな~。出版社に止められるケースってありますかね?
渡辺「例えば、出版社さんがその作品のグッズ化を他社で進めていて、タイミング的な問題で少し待って欲しい……といったケースはあるかもしれませんね」
──例外はアニメ化した作品ですかね。
渡辺「そうですね。製作委員会とかにグッズ化の権利が渡っている場合は、原作サイドでグッズは作れなくなりますので……」
──ちなみに、僕の『ダンゲロス』は二次創作フリーなので、グッズ化の権利を製作委員会に譲渡できなくってアニメ化が頓挫したんですよ……。
渡辺「ご、ご愁傷さまです……」
Point2:昔の作品をグッズ化したい作家さんは出版社に連絡してみよう。
プロモーションとしてのグッズ化
──グッズって作り手側の取り分はどんな感じになるんです?
渡辺「まず一般的な話をしますと、商品価格の大体5%程がロイヤリティ(使用料)となって出版社側に入ります。3000円のTシャツを売った場合ですと150円が出版社側に入り、そこから作家さんと出版社で分ける形ですね。一方で、ウチは下代(仕入れ値)にいくら上乗せするかで報酬額が決まりますので、ロイヤリティは30~50%に設定できます」
──む、それだとClubTさんで作った方が作家は全然儲かるんじゃ?
渡辺「%的にはそうなりますね。たとえば3000円のTシャツのロイヤリティを1000円にして売った場合、それが1000枚売れれば100万円お支払いできることになります。ただこのスタイルはけっこう特殊で、一般的には先に出版社さんにMGを支払うことがほとんどです」
──MG、とは何でしょう?
渡辺「ミニマムギャランティーの略でして。先に述べた通り、一般的な場合は一枚一枚の売上は150円とかで微々たるものですから、その分、100枚とか1000枚分のロイヤリティを先払いして、ある程度まとまったお金をお支払いするんです。なので、一般的なグッズ化の場合だと契約の時点で作家さんにある程度お金が入るのですが、ウチは『売れた分だけ』ですから、そこがちょっと違ってきます」
──なるほど。とはいえ、MGがなくてもそちらにはそちらの強みがあるんじゃないですかね? MGの存在は、グッズを作る側としても腰が重くなっちゃうわけでしょう? 先払いで数十万払わなければならないとなると、どうしても確実に売れる見込みのあるビッグタイトルでしかグッズが作れなくなっちゃう。だからこれまでグッズ化は「一部の有名作品」の特権だったわけで。
渡辺「はい。弊社の形ですと在庫を持たないので、"今伸びている作品"のグッズが作れることが強みですね。これから人気が出るであろう、狭く深いファンが付いている作品を今のうちからグッズ化できれば、ファンの人の手にも届くし、作家さんにもバックがあるし、出版社さん的にもプロモートになると思うんです。そういった、やり方とメリットの違いを出版社さんに説明して理解して頂くのも私の仕事ですね」
──MGでの収入がなくても出版社側にもプロモート的な意味で利点があるわけですね。従来のMGアリのグッズ展開と使い分けしていく感じになるのかな。
渡辺「そうですね。MGアリの従来方式ですと、在庫があるので店頭に置けるという利点があります。お互いに得意な分野というのがあると思いますので……。弊社の形式ですと、これからは特にWeb雑誌と連携していきたいですね。現状ではWebで漫画を読んで下さった読者が、そこから漫画を買うくらいしか選択肢がないわけですが……」
──なるほど、漫画の横にグッズを並べることができるわけだ。出版側としても収入の可能性が増える。
Point3:プロモーション活動の一環としてグッズ化が可能。Web雑誌とも親和性が高い!
一般の人が一発当てるには……?
──しかし、お店に置かれるわけじゃないですから、放っといて売れるわけじゃないですよね。今回、僕のグッズは専用サイトを作って宣伝しますし、月刊ヤングマガジンさんでも宣伝してもらえますからいいですけど、一般の人はどうするんですかね。何らか発信力のある人じゃないと実際売れないのでは?
ダンゲロスグッズ公式ホームページ
渡辺「フェイスブックやツイッター、ブログなどでの宣伝は必要ですね~。たとえばYoutuberの人が動画の中で自作デザインTシャツを着て宣伝するケースなどもありますが、これは結構売れてますね。ニコ生主とかもいけるんじゃないでしょうか」
──なるほど……。しかし、アルファツイッタラーだったり有名生主だったりは一般の人とは言いがたい気が……。ほんとに知名度がなく、何の活動もしてない人が売るにはどうすればいいですかね。
渡辺「んー……。時事ネタとかですかね? 以前にあったケースでは政治家の失言ネタTシャツとか売れてましたよ。福田元首相の『あなたとは違うんです』Tシャツとか」
──う、うーん……。ケースとしては面白いですけど、なんていうか、ちょっと夢がない話ですね……。ほら、やっぱ自分のデザインで一発当てたいじゃないですか。
渡辺「や、でも、時事ネタは置いといても着眼点という意味で重要だと思いますよ。『これは売れる!』と思ったものをいち早くネタにする着眼点と言いますか」
──なるほど、後はそれを自分のデザインと絡めれば……。しかし、元手が掛からないから一攫千金狙いって感じでもいけるんですね。
渡辺「そうですね(笑)」
Point4:宣伝力は重要。しかし、アイデア次第では……。
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まとめますと、現在のグッズ展開は「確実に売れる作品のグッズを」「まとまった先払い金を支払って」という形だけでなく、今回のように「双方ほぼノーリスクで」行うことも可能なわけです。グッズ化は大物作家の特権どころか個人の方でも可能という、なんていい時代だ。
また、ClubTさんでは一般向けに販売するデザインだけではなく、個人的に自分だけが使うためにデザインを入稿して、自分だけがそれを購入することもできます。一般販売しないのなら、友達が趣味で描いてるイラストをTシャツにして、サプライズでプレゼント!といった利用法も可能。
なお、僕の『戦闘破壊学園ダンゲロス』は二次創作フリー。自分でダンゲロスの絵を描いてClubTさんにデザイン入稿し、バンバン売ってもらっても一向に構わないんですよ。僕にも講談社にも一切連絡は要りませんし一切口出しもしないので、どうぞどうぞ。
著者プロフィール
作家
架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)