ゴールデンにも進出した『しくじり先生』人気急上昇の秘密

デイリーニュースオンライン

画像はテレビ朝日ホームページより
画像はテレビ朝日ホームページより

 2月15日に放送された『しくじり先生 ゴールデン ダメ家族改善スペシャル』(テレビ朝日)が大きな反響を呼んでいる。プロフィギュアスケーターでスポーツコメンテーターの浅田舞、教育評論家の尾木直樹、俳優の石田純一の3人が先生役として出演。浅田は「妹(浅田真央)が天才でグレちゃった」、尾木は「教育評論家なのに娘が問題行動ばかり」、石田は「『不倫は文化』発言でバッシングを受けた」と、それぞれが自分の失敗談を赤裸々に語っていた。

『しくじり先生 俺みたいになるな!!』は、2014年10月からレギュラー放送されている深夜番組。毎回、芸能人や有名人が「しくじり先生」として登場。生徒役のタレント数人に対して、自分が人生でしくじったときのエピソードを講義形式で語っていく。しくじり先生は、授業の最後に生徒たちが同じ失敗をしないための教訓を授けてくれるというもの。

 この番組の方向性が定まったのは、何と言ってもオリエンタルラジオがゲストの、レギュラー放送初回だろう。前後編の2回に分けて放送されたこの企画では、オリラジの2人がデビュー直後の大ブレークから一転して落ちぶれてしまうまでの過程を詳細に語っていた。オリラジの中田敦彦は、スティーブ・ジョブズを彷彿させる熱い語り口で、栄光と挫折の日々をしゃべり尽くした。「なりたくてなる天狗はいない」など、数々の名言も飛び出した。

 芸能人が失敗談を語ったり、挫折した体験をVTRで紹介するような番組はこれまでにも存在していた。ただ、本人が先生役として教壇に立ち、失敗について自らプレゼンしていくというのはこの番組が恐らく初めてだ。

 中田のようなスピーチの達人であれば、先生役として存分に番組を盛り上げることはできる。ただ、この番組のいいところは、あらかじめ作られた台本代わりの教科書に沿って話が進められるので、たとえスピーチ形式で話すことにあまり慣れていないタレントであっても、面白おかしく授業を進められるということだ。教科書の中身も遊び心に満ちていて、それをなぞっていけば自然と授業が盛り上がるようになっている。

リアルな反応がさらに番組を盛り上げる

 この番組の面白いところは、芸能界という華やかな世界の裏側で、人知れず悩み苦しんでいる芸能人の本音が覗けるところだ。そして、自分の失敗や苦労を堂々とさらけ出して、それを明るく笑い飛ばそうとする姿を見て、芸能人ではない一般視聴者も、逆境に陥っても前向きに生きるためのヒントを得ることができる。

 この番組で取り上げられる「しくじり」のテーマには、大きく分けて2種類がある。「芸能人としての仕事における失敗」と「プライベートでの個人的な失敗」の2つだ。それぞれに楽しめるポイントはあるが、概して前者のテーマの方が面白い。前述したオリラジのケースもそれに当てはまる。

 ブリっこキャラで女性に嫌われてしまった、さとう珠緒、「それが大事」を歌い続けた結果、何が大事なのか分からなくなってしまった元大事MANブラザーズバンドの立川俊之、芸人なのに脱がされてしまったおかもとまりなど、それぞれの人物が、芸能生活そのものにおける致命的な挫折や、失敗の経験を包み隠さず語っていくところが見応えがある。

 聞き手の生徒役も全員タレントなので、語られていることは他人事ではない。それらはすべて、自分の身にいつ降りかかってきてもおかしくない、生々しい体験談なのだ。だから、彼らの反応にも実感がこもっている。その様子も視聴者としては興味深いのだ。

 近年、テレビなどのマスメディアでもインターネットの世界でも、ちょっと悪いことをしただけの人が過剰にバッシングされて袋叩きにあったり、謝罪を強要されたりするケースがやたらと目につく。失敗を笑って見過ごせない社会は窮屈で退屈だ。何かで失敗してしまった芸能人が本当に立つべきなのは、謝罪会見の舞台ではなく、『しくじり先生』の教壇ではないだろうか。

ラリー遠田
東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある
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