【プロ野球】日ハム・中田翔が「大物感を欠く」理由|愛甲猛コラム

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まだまだビッグな選手になれる
まだまだビッグな選手になれる

「カープ女子」に代表される通り、女性ファンが球場に詰めかけるようになって久しい昨今のプロ野球。「興行は女性を集めろ」と言われる通り、女が集まれば男もくるのは世の常。最近はどの球場も黄色い声援(表現が古いな)でいっぱいだ。

 女性客が増えたことで選手も変わった。昔の選手はごっつかったが、今はイケメン揃い。プロ野球選手をファッションリーダーのように扱う雑誌も存在する。閑古鳥が鳴く川崎球場で育ったオレとしては隔世の感がある中、昭和のニオイを感じさせるのが日本ハムの中田翔だ。

大きな武器となる“凄み”のある面構え

 昔のプロ野球選手には、一歩間違えれば“その筋”に入りかねない方々が数名いた。“本物”かと思うような選手もおり、「組事務所に名札があった」「背中に絵が描かれている」と噂される大物もいた。

 その選手、試合後は球場の風呂に入ることなく帰宅しており、オレはマネージャーから「入れない事情」を耳にした。遠征のバスは窓際ではなく真ん中の補助席。「狙撃」を気にしている、などの噂も聞いた。「一歩間違えば……」という人がいたのも確かだ。

 高校時代、オレは先輩から「野球はケンカだ」と教わってきた。たとえば試合前の整列では「相手より遅れて整列し、目線を逸らすな」と言われた。メンチを切って相手を呑みこめというわけだが、中田だけは、当時のコワモテ選手たちと一緒に並んだとしてもまったく違和感がない。“業界”からスカウトされてもおかしくない面構え。相手を雰囲気で威圧できる数少ない選手だ。

 プロ野球に限らず、プロスポーツとは「大舞台を何度経験したか」によって腹の座り方が決まってくる。いわゆる「場数」というヤツだ。

 その点、中田は高校1年夏から4番として甲子園の土を踏み、WBCなど日本代表としても活躍。いまや日本代表の4番となった。昨年のCSでは4試合連続本塁打を放つなど勝負強さは球界屈指。物怖じしない点では球界トップだ。

せっかくの“凄み”を“チャラさ”が殺している

 ただ、日本を代表する選手としてはまだまだ物足りない。

 中田は昨年初めて打点王のタイトルを手にした。しかし、100打点で「王」とは物足りない。シーズン最多打点はセが161(1950年/小鶴誠)、パが146(1985年/落合博満)であり、現在の試合数はどちらの時代よりも多い。打率.269が数字を落としているが、当たれば飛ぶパワーをもっているのだから10の力でスイングをする必要はない。7ぐらいで十分だ。

 選球眼も良いとは言えず、ケガも多い。清原のように崩されても打てる技術はない。打席でも表情が変わり過ぎる。上下動が激しいのだ。

 そして、中田には“凄み”と同時に“チャラさ”もある。オレはこれが不満だ。

 チャラさは、決して凄みにプラスに作用しない。せっかく凄みを感じさせるのに、その良さを押し殺すチャラさが気になる。

バットの汚い名バッターはいない

 さらに、球史に残る大打者と中田には大きな違いがある。バットのグリップの汚さだ。

 王さんや長嶋さんを筆頭に、落合さん、山本浩二さん、清原、秋山、立浪など、歴代の大打者は誰もがバットをキレイにしていた。落合さんなど常にキレイであり、影響された俺も毎試合バットを磨いたが、中田のグリップは汚れが目立つのだ。

 バットは数試合使うとグリップに握りの汚れがつくが、中田にはグリップをキレイにしようという意識が感じられない。一流選手になれるだけに、こだわりや美意識をもって欲しい。バットだけでなく、スパイクやグラブなど道具が常にキレイなのは大物選手の共通点でもある。

 清原には東尾修さんが、山崎武司には星野仙一さんがいた通り、ガキ大将には「頭の上がらない番長」が必要だ。しかし、今シーズンは稲葉篤紀という中田を叱れるベテランが抜け、押さえつける人がいなくなった。監督のあの人では何をか言わんや。“ハムの空気”も良いとは聞かない。

 聞けば、大谷の飛距離に嫉妬心を感じているともいう。中田にとって真骨頂を見せるべきシーズンが始まる。

愛甲猛(あいこうたけし)
横浜高校のエースとして1980年夏の甲子園優勝。同年ドラフト1位でロッテオリオンズ入団。88年から92年にかけてマークした535試合連続フルイニング出場はパ・リーグ記録。96年に中日ドラゴンズ移籍、代打の切り札として99年の優勝に貢献する。オールスターゲーム出場2回。
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