中国人が土地を“爆買い”…韓国リゾート地・済州島の植民地化が加速

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今年の春節も多くの中国人観光客が押し寄せた
今年の春節も多くの中国人観光客が押し寄せた

 韓国最大のリゾート地、済州島で中国人による土地の「爆買い」が進んでいる。

 韓国の国土交通省が2月に発表したところによると、2014年に外国人が取得した済州島の土地は566万平方メートル(東京ドーム約120個分)で、そのほとんどが中国人によるものだ。前年までの取得分を合わせると、中国人が持つ土地は風光明媚な観光地を中心に約800万平方メートルに達するとも言われ、地元住民の間では「これでは植民地にされてしまう」との声も上がっている。

「5年ほど前、中国資本が済州島に所有していた土地は2万平方メートルほどでした。それがこの間に、少なくとも300倍以上に拡大した。きっかけとなったのは、2010年2月に施行された不動産投資移民制度です」(地元ジャーナリスト)

 韓国でも他の地域に先駆けて導入されたこの不動産投資移民制度は、済州島の不動産に対して5億ウォン(約5460万円)以上の投資を行った外国人に5年間の居住ビザを与え、その期間が経過した後、特別な欠格事由がない場合には永住権を与えるというものだ。

 この制度により誘致された不動産投資は昨年末までに1兆ウォンを超えており、居住ビザの発給を受けた外国人投資家は1007人。その99%に当たる992人が中国人だ。居住ビザは投資家の家族に対しても与えられるため、数千人の中国人が、新たに済州島の住民となったわけだ。

地元民には還元されず中国系企業とソウルだけが潤う

 1990年代末のアジア通貨危機で深刻な資本流出に見舞われて以降、韓国政府は外国からの投資をつなぎとめるために、あの手この手を尽くしてきた。投資移民制度はその目玉になるはずの施策だったのだが、現地の人々に思わぬ負担をかけているという。前出の地元ジャーナリストが話す。

「不動産価格の高騰が起きているのです。中国人は永住権の取得の要件である5億ウォンの投資金額を満たすために、実勢より高い価格で土地を買ってしまう。そうした“爆買い”のせいで、一般の住宅価格や不動産賃貸料まで上がってしまった。済州島住民の平均年間所得は、韓国の全国平均を大きく下回っています。不動産価格の高騰は住民の家計を直撃するのです」

 それでも、地元が中国マネーで潤っていればまだいい。しかし、実態はそうなっていないという。「たしかに、島内では中国人向け高級ヴィラの建設に巨額の資金が投じられています。しかし、分譲で得られる収益は中国本土のデベロッパーに還流し、施工で生まれた利益の大半はソウルの大手建設会社の取り分になってしまう」(同)

 一方、済州島では中国人による投資に加え、中国人団体客による観光ブームも起きている。

「街中では、新羅免税店がブランド目当ての中国人観光客で連日ごった返しているが、あそこはサムスン系列。カネは地元を素通りしてソウルに行ってしまう」(同)

 こうした問題が浮き彫りになるに従い、地元自治体は、不動産投資移民制度を改正すべく検討を開始した。ソウルの中央政府と調整を行っている。改正点は、5億ウォン以上の不動産投資に加え、5億ウォン以上の公債購入を永住権付与の要件に追加するというもの。また、永住権を付与する対象を、済州島人口の約1%に当たる6000人までとする案も出ている。

 しかし、それで中国マネーによる蚕食を止められるかは未知数だ。

「済州島に投資する中国人富裕層の主な目的はマネーロンダリングなんです。中国政府は汚職や脱税で蓄えられた不正資金の摘発を強めており、韓国で永住権を得ることで、そういうカネを海外に持ち出しやすくしようと考えている。莫大な資産を守るためには、5億ウォンだろうが10億ウォンだろうが大した“経費”ではない」(中国ウォッチャー)

 もしかしたら済州島は、このまま中国の「植民地」になってしまうのだろうか。

(取材・文/李策)

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