韓国で「姦通罪」が廃止に…不倫による離婚急増の懸念高まる

デイリーニュースオンライン

韓国・憲法裁判所の法廷(写真提供/山田俊英)
韓国・憲法裁判所の法廷(写真提供/山田俊英)

 韓国の法律・刑法第241条に残っていた古風な罪状、「姦通罪」が廃止となった。

 姦通罪の内容は「配偶者のいる者が姦通した場合、2年以下の懲役。その相手も同様」で、配偶者が告訴したら成立するというもの。つまり、夫や妻が浮気したのを通報したら、浮気相手ともども“刑務所送り”にできるというこわ~い法律だ。これが、去る2月26日、韓国の憲法裁判所において「違憲」であるという判決が下されたのだ。

 姦通罪はかつて日本にも存在したが、妻が浮気をした場合にのみ適用された(妻のある男性が浮気をしても罪に問われなかった)ことから、第二次世界大戦後の1947(昭和22)年、現在の日本国憲法が施行された際に男女平等を定めた憲法に反するということで廃止されている。

価値観の変化に伴いようやく「違憲」判断

 韓国では、この法律により、古くは1970年代から80年代にかけて活躍した韓国女優の丁允姫(チョン・ユニ)、ロッテや近鉄で活躍した韓国人プロ野球選手・白仁天(ペク・インチョン)といった人たちが逮捕されている。2008年には女優のオク・ソリも夫から訴えられて姦通罪で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決となった。

 テイチクから日本デビューもした韓国演歌歌手のテ・ジナもまた姦通罪で逮捕されているが、浮気相手の夫が告訴を取り下げたことで、10日間で釈放されている。

 実際、通報を受けた警察が浮気現場に踏み込んで御用!……ということがしばしばあったようだ。ただし、警察官を浮気現場に踏み込ませるためにはそれなりにややこしい手続きが必要で、要は私立探偵を雇って使用済みの避妊具を入手するなど性交渉の“証拠”をつかみ、現場を押さえなくてはならなかったのである。

 姦通罪はこれまで1990年、1993年、2001年、2008年と過去に4回ほど憲法裁判所で審議されてきたが、いずれも「合憲」という判断が下されている。憲法裁判所では9人の裁判官による審議が行われ、2001年までは圧倒的多数で「合憲」だったが、2008年に9人中5人が「違憲」とする判断を下したものの、9人中6人が「違憲」と判断しないと「合憲」と見なす規定があったため「合憲」ということになっていた。

 それが2015年の今回は「合憲」と判断を下したのはわずか2名で、あとの7名は「違憲」という判断。ここにきてようやく、古めかしい法律の規定が覆ったというわけだ。

 この判決により、前回「合憲」判決が下された2008年10月30日の翌日である31日以降に姦通罪で逮捕・有罪判決を受けた人たちが再審請求に出た。実刑を受けた人は最高3000万ウォン(約327万円)の刑事補償金を請求できる見通しとなる。

 今回の「違憲」判断の背景には、「浮気は個々人の問題であり、国家が介入すべきものではない」と考える人が増えつつあるからだという分析がある。ただし、姦通罪を存続すべきだという意見も根強い。2014年に実施された、韓国人成年2000人を対象とした世論調査でも60.4%が「存続すべき」と答えているのだ。一方、同じ世論調査において、妻のいる男性で「妻以外の女性と性交渉したことがある」と答えたのは全体の37%にものぼっている。

 ネットでの市民の意見を見てみると、「そうやってアメリカの真似なんかしているから、国がおかしくなる」という保守的な意見がある一方で「政治家たちが浮気をしても、もう捕まらないだろう」と皮肉を言う声も上がっている。

思わぬ余波も…避妊具メーカーの株価が急騰

 では、今後、韓国で浮気をしたらどうなるのか? 

 姦通罪の廃止によって、配偶者が浮気をしても法律上の罪には問われなくなった。一方、浮気をされた側も、配偶者が別の相手と性交渉をしている証拠を確保して断罪する必要はなくなった。今後は、浮気の現場を押さえなくても、婚姻関係が破綻すれば離婚して民事で慰謝料を請求できるようになる。

 よって、不倫による離婚、慰謝料請求が増えて行くことが予想され、思わぬところでは避妊用品メーカーの株が高値をつけるというおまけまでついてしまった。

(取材・文/山田俊英)

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