伝統的価値観が崩壊する？ 同性婚容認化問題にゲイ当事者としてこれは言わせて！（前編）
【ゲイリーマン発 日本のリアル】
前回、前々回と、筆者はゲイ当事者として、渋谷区の同性パートナー証明書発行におけるゲイコミュニティ内の懸念点をあえて記事にさせていただきました。
渋谷区が同性婚容認…レインボカラーでは塗りつぶせない本当の多様性（前編）
渋谷区が同性婚容認…レインボカラーでは塗りつぶせない本当の多様性（後編）
こういう記事を書くと、すぐさま当事者の中の意識の高い方々からは、ゲイのくせして同性婚反対派な人というレッテルを反射的に貼られてしまうことも少なくないのですが、あくまで僕は前回、前々回の記事で「制度や法律を作る側」の視点ではなく、「東京でゲイライフを送る一市民のライフスタイル」という観点で感じたことや懸念に思うことを敢えて意識的に記事にしました。
生きていく上で選択肢が多い方が豊かな暮らしができるのは当然のことだと思いますし、そういった意味で、後々は日本でも同性婚や結婚に準じたパートナー制度が整備されていくことは、概ね歓迎されるべきことであると考えています。
そうした中で、ある種「唐突に」打ち上げられた渋谷区の同性パートナーへの証明書発行の発表（以下、いわゆる同性婚容認化問題）。これにまず反応したのは同性愛者当事者たちのコミュニティでしたが、時間が経過するにつれて、だんだんとヘテロセクシュアルの側からの反対意見が散見されるようになっていき、悲しいことに同性愛者に対するヘイトスピーチに近しい内容の演説を連日渋谷の街頭で行っている方々もいらっしゃるとのことです。
（筆者の勤務する会社も渋谷区にあるので、なんだか近くで日中からそういうことが行われていると思うと物騒ですね……）
筆者も、街中やメディアで正面から自分の存在そのものを否定されるヘイトスピーチに近しい内容を見聞きするという経験は、これまで生きてきてなかなか体験するものではなかったので、そうした方々の主張も興味深くお聞きしています。
しかしやはり当事者として、感情論を抜きに彼らの主張に違和感を覚えたところがあったので、今日はそれについて記事にしたいと思います。
日本の美徳である伝統的家族観が崩壊する？
よく見聞きするのがこれ、「同性婚などを認めれば、日本の美徳である伝統的家族観が崩壊する」というもの。
そもそも彼らの主張する伝統的家族観とは何かを考えてみました。彼らの主張によると恐らくそれは「近代家族」のことを指しているものと思われます。
近代家族とは主に、男女の夫婦一対の元に子供たちが共同生活を行い、その構成員が情愛と血縁関係で結ばれた家族関係のことを指しており、彼らの主張によると社会や国家の構成員の最小分子は（個人ではなく！）この近代家族であるらしく、それ以外の家族の形を認めると社会や国家の秩序が乱れるらしいのですが……。
「伝統的家族観」は人類が普遍的に共有する価値観？
いわゆる同性婚問題が認められたからと言って、既存の結婚制度が否定されたり崩壊されたりするわけでは当然ないのですが、なぜ「近代家族」以外の家族の形を認めると社会や国の秩序が乱れるのか、その答えとして出てくることと言えば第一にくるのがこれです。
「伝統的家族観というものは、人類が普遍的に共有する尊い価値観だから」
うーん……まぁ言いたいことはわからなくもないですが、では本当に彼らが言う近代家族というものに、由緒正しき伝統があるのでしょうか？
実は伝統がない「近代家族」
「家族の多様化や個人主義の台頭で日本の伝統的家族観が崩壊し秩序が乱れてきている！」という主張もよく聞きますが、ではこの近代家族が台頭したのは一体いつでしょうか。
後編では、日本の文化史上の「家族」の形を探っていきたいと思います。
伝統的価値観が崩壊する？ 同性婚容認化問題にゲイ当事者としてこれは言わせて！（後編）
著者プロフィール
ゲイライター
英司
東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)
