【センバツ】大勝で初戦突破「大阪桐蔭」はなぜ強い…名門校の指導者事情

デイリーニュースオンライン

大阪桐蔭高校公式ホームページより
大阪桐蔭高校公式ホームページより

 プロ野球に先駆け、センバツ高校野球大会が始まった。昨年(2014年)優勝の龍谷大平安が初戦で敗れるなど、下馬評通りにはいかないのが高校野球のおもしろさだ。

 私事で恐縮だが、毎年春と夏の甲子園大会は、ニコニコ生放送で全試合解説をさせてもらっている。昨夏も全48試合を解説、今春も全試合をつぶさにみている。誰かギネスブックに申請してはくれないだろうか(笑)。

 実況アナとゲストの女の子たちに、試合を観ながら感じたこと、野球の奥深さなどを、思った通りに語れるのがネットのいいところ。いわゆる“NGワード”が少ないから、オレも解説のしがいがある。

春は投手力、夏は打撃力

 高校野球は昔から「春は投手力、夏は打撃力」と言われる。データによると、春と夏の平均得点は1~2点違ってくるそうだ。投手のいいチームは確かに有利だが、もっといえば「投手がしっかりしており、なおかつ守備力も高いチーム」が接戦を勝ち抜くのである。

 仙台育英の佐藤世那君や県岐阜商の高橋純平君、龍谷大平安を破った浦和学院の江口奨理君など、今年のセンバツにも数名の好投手がおり、いずれも守備力はしっかりしている。初戦を好発進した大阪桐蔭や常総学院などとの激突が楽しみだ。

 センバツの場合、どの高校も対外試合禁止が解けてわずか1カ月あまり。対外試合禁止の理由は諸説あり、「基礎体力の養成時期であり、投手の肩を休ませるため」「試合ができなくなる雪国とのハンデを作らないため」などと言われている。

 いずれにせよ、選手たちは試合慣れせぬまま甲子園に入ってくる。いわゆる試合カンが養われていない状態だ。

 そこで注目したいのが「マウンドに上がった投手の姿」「打席に立つ打者の工夫」だ。よく目にするのが、マウンド上で挙動不審になる投手の姿だ。「地に足がついていない」わけで、そうなると「打たれそうだな」という気配を感じる。打者にしても同じで、平常心で打席に立っていない選手も少なくない。リラックスしていないのが手に取るようにわかるのだ。

 思い起こせば35年前。オレは夏の甲子園のマウンドに立った。監督や先輩に「キャッチャーが遠く見える」と言われていたが、実際に立つと、地元の球場と変わらなかったが、それでも初戦のマウンドは緊張したものだ。

 大舞台に立った選手たちを「いかに平常心でプレーさせるか」が、センバツにおける監督の手腕だろう。

「いい高校」は、選手が自分で創意工夫をするような指導をしている。前の打席と違う位置に立ったり、(バットの)グリップの握りを変えたりしているのだ。

 負けムードが高い中、1人の打撃により逆転に向かっていく——そんな高校の多くは、指導者がヒントを与え、「自分で考えてみなさい」と、押し付けではない指導をしている。

 もっといえば、カウント3-0の次のボールは、甘く入ってくることが多い。にもかかわらず、判で押したようにウエイティングをさせる高校の、なんと多いことか。ピンチで1球ごとにベンチを見たり、守備位置を監督に指図されて動く高校は、少なくとも自分たちで考えてはいない。こうしたチームは監督への依存心が大きく、つまりは「野球で自立していない」のだ。

選手の将来を考えた指導者

 高校野球をみていて思うのが、「高校野球のためにチームを育てている」監督と「その子の将来を考える」監督とに、色分けがはっきりしていることだ。

 大阪桐蔭などが代表的だが、同校の場合、単にいい選手を集めるだけではなく、素質のある選手の将来を考えた指導をしているように見える。だからこそ、卒業生がプロで大勢活躍しているのだ。

 オレの母校(横浜)もそうだが、OBにプロが多い高校は、OBからの「いい情報」が数多く入ってくる。合理的な練習方法やトレーニング法はもちろん、「○○病院は腕利きだ」など、広い範囲の情報が入ってくる。肩やヒジなどを故障した選手にとって、病院の情報ほど嬉しいものはない。こうした高校は「好循環」が芽生え、どんどん強くなってくる。

 逆に、指導法に疑問を感じる高校もある。個々のトレーニングや練習方法など、時代ごとに進化するものだ。つまり指導者にとっても野球は「日々勉強」なのだが、そうした勉強をせず、「脇をしめろ」など画一的な教え方をする指導者は少なくない。

 指導者にとって「甲子園」は大きな目標だが、プロを夢見る選手の最終目標は「プロでの活躍」だ。選手にとっては、プロで活躍するためにいい経験となるのが「甲子園」である。

 こうしたことを、毎年のように解説させてもらっている。興味のある方は、是非覗いて欲しい。

春のセンバツ2015「第87回選抜高校野球大会」~みんなで一緒に高校野球を観よう~|ニコニコ生放送

愛甲猛(あいこうたけし)
横浜高校のエースとして1980年夏の甲子園優勝。同年ドラフト1位でロッテオリオンズ入団。88年から92年にかけてマークした535試合連続フルイニング出場はパ・リーグ記録。96年に中日ドラゴンズ移籍、代打の切り札として99年の優勝に貢献する。オールスターゲーム出場2回。
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