【実録】親が認知症になったら…月の介護費用はいくらかかるの?

デイリーニュースオンライン

認知症は今やがんと並ぶ国民病となった
認知症は今やがんと並ぶ国民病となった

 厚生労働省の「認知症有病率等調査」によると、2013年時点で65歳以上の認知症有病率は15%、全国に約462万人と推計されている。またその予備軍は約400万人いるといわれており、今や「国民病」とまでいわれ始めた。認知症の症状などについては徐々に知られつつあるが、その介護の実態、費用面についてはあまり語られていない。

 ここではそんな知られざる認知症罹患者の病状進行の実態、日々の介護とそのコスト面について述べていく。

認知症の症状より心配だった介護費用

 筆者の父(82)が「アルツハイマー型認知症」と診断されたのは2013年、腸閉塞の手術後のことだ。入院当初から「言動が怪しい」と医師から指摘され、きちんとした検査を行なったことによる。

 もっとも診断結果を聞いた際、さほど驚くこともなかった。同居している母によると、10年くらい前から、1人で道を歩けば迷う、車を運転させれば目的地を間違う。高速道路では行き先であるレーンに乗れず、気づいたときにはバックギアを入れて逆走するなど、「おかしい」という兆候がいくつか見受けられたからだ。

 医師の話では認知症の進行を食い止めることは実質不可能だという。薬を処方されたが、「気休め程度」というのが現実だ。だから福祉の力に頼らなければ、とても介護する家族の精神状態が持たないと言われた。実際、「介護うつ」なる言葉もある。家族といえども認知症罹患者の介護は想像を超える難しさがある。

 だが正直、進みゆく認知症への不安よりも今後介護にどの程度の費用が嵩むのか。コスト面での不安のほうが認知症診断後すぐは大きかった。介護費用には莫大なコストがかかる。そんなイメージがあったからだ。

審査時の自宅訪問で芝居をする認知症患者

 デイ・サービス、ショート・ステイなど介護目的の福祉サービスを利用するには、市区役所にて「要介護」の申請を行なわなければならない。

 この申請は65歳以上、もしくは40歳から64歳までの末期がんや初老期における認知症といった「特定疾病」に罹っている者が、市区役所に「介護が必要です」と申請する。申請後、本当に介護が必要なのか審査されることになる。

 申請が済むと、調査員が自宅などにやって来る。ここでは本人や家族への聞き取り調査が行なわれる。この際、大抵の認知症罹患者は普段できないことを「できる」と言い張ることが多いという。気張る心理といったところか。自分では洋服の脱ぎ着ができなくとも、「できます」といい、日頃、家族に当り散らす攻撃的な性格であっても、この時だけは温厚に振るまい、自身が繕うのだ。

 こうした“芝居”を防ぐため、調査員が来る前日までに、あらかじめ洋服の脱ぎ着ができない様子や、机を叩いて怒る、怒鳴るなどの様子を動画撮影してみせる。そうすれば概ね調査員は「要介護」の判定を下してくれるという。演技かどうかは調査員もプロなのできちんと見極められるのだ。ごまかしが効く雰囲気ではない。

介護施設は「老人の幼稚園」といった雰囲気

 要支援・要介護といった正式な判定結果が出る前に、概ね「お宅の場合は、要支援2」など調査員から教えて貰える。これは正式な判定結果が出てから介護施設を探したのでは遅いという配慮からだそう。保育所の待機児童問題と似た雰囲気がある。

 実際、判定結果が出る前に施設をいくつか探してみたが合う合わないがあった。介護施設にもレクリエーションを得意とするところ、リハビリに強いところなどのカラーがある。だがどこも「老人のための幼稚園」といった趣だけは共通していた。誕生月には「お誕生会」なども催しているところがほとんどだ。

 筆者の父の場合、もともとPCが好きだったこともあり、PCや囲碁・将棋、料理といったレクリエーションが充実した施設に週に2度、1日8時間程度デイ・サービスの形でお世話になることが決まった。

要支援2で月に1万400円+食費などの負担

 1日6〜8時間、1週間に2日、1か月に8回利用した場合、本来1か月で負担しなければいけない費用は10万4000円だ。だが、要支援2の判定を受けた父が介護施設を利用する場合の上限額は1万400円。介護保険は1割負担なので月額1万400円の費用負担で済んでいる。他には食費が1日500円かかるだけだ。

 もっともこれは週に2日、1日8時間と介護保険で賄われる1か月の上限額を目一杯つかった場合だ。これがもう1日、2日と週3日、4日と利用すれば大幅に費用負担が嵩む。

 よく介護のために正社員・フルタイムでの仕事を辞めるという人がいると聞く。自宅で介護を行なうならこれも選択肢のひとつだろう。だが仕事を辞めての介護は収入を絶たれる以上、いつか経済的にも行き詰る。経済面で潤沢な家庭ならばいわゆる介護付老人ホームへの入所も可能だが、これは、「家族を見捨てた」という親族側の精神的負担もまた大きい。

 今後ますます進みゆく高齢化社会、認知症罹患者は2025年には700万人、5人に1人の割合になるとの試算もある。さらなる保険制度の拡充化など何らかの政治、行政による対策が今以上に求められよう。

(取材・文/秋山謙一郎)

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