「生活が苦しくなったら子供をバイトさせればいい」マイルドヤンキー女の子育て観

デイリーニュースオンライン

賢く生き抜くマイルドヤンキー(写真はイメージです)
賢く生き抜くマイルドヤンキー(写真はイメージです)

 マイルドヤンキーの典型的な行動として言われるのが、少子高齢化社会に逆行する「早婚」「若い時期の出産」だ。かつて「地方民の子だくさん」については「セックス以外に娯楽がないから」などと揶揄されてきたこともあったが、大規模なロードサイド型商業施設に草スポーツなども発達している現代の地方には、その言葉はまるで当てはまらない。

 北関東の某企業城下町にて、20代前半のマイルドヤンキー女子たちに本音を聞くと、その理由は実に“現実的”だった。

「結婚が早い理由の大半は、経済的理由じゃないですか? 結婚というか同棲した段階で、旦那と合わせて収入倍になりますよね?」

 そう言うのは、23歳で既に結婚出産をしているXさんだ。

「親元も兄弟がいれば、よほどデカい家じゃない限り出ることになるし、親元はラクだけど、不自由ですから。うちの地元だと、一人暮らしの場合、3万円出せば1DKが借りられますが、2人で住む場合、同じ3万円出し合えば6万円で3LDK、つまり倍以上の部屋が借りられるんです。ひとり生んで育てる分にはこのサイズで十分ですよね。でも何よりも大事なのは、“周りとペースを合わせる”ことです」

将来的に子供のバイトも世帯収入に組み込む

 Xさんが日常を共にする友人グループもまた、ほとんどが数年内の結婚と出産を計画しているという。現在婚約中の彼氏がいるというYさんもそのうちのひとりだ。

「やっぱり目標は、最低でも四捨五入して20歳のうちに第1子を生むこと。地元同士で結婚するってなると、それなりにいい男の奪い合いとか、早い者勝ちって感じもあるんだけど、最大の理由は『生み遅れると不安』だから。子供産んでも働くこと考えると、自分も親も若くて元気なうちがいいのは当然として、同世代の友達と一緒に協力して子育てができることが大事です。ひとりで仕事しながら子育てなんて、絶対無理だから……」

 ここでひとつ、彼女らには徹底したコンセプトがあることがわかった。友人グループの誰もが、「結婚・出産しても専業主婦という選択肢はない」ということだ。前出のXさんは21歳で結婚し、同年第1子を出産したが、子育ては親兄弟や友達と協力しつつ、ほぼ産休を取ることなく仕事に復帰した。

「結婚と出産で元々の友達(未婚組)と一緒にいる時間は減ったけど、近いグループには少し年上も含めて既婚出産組のママさん系グループがあるんですが、みんな働いてますね。実はうち、ベビーベッドもベビーカーもチャイルドシートも姉か友人のお古です。紙おむつですら姉のとこの余り物。ほんと助かってますけど、仲間内で結婚とか出産決まってる子からは『次はうちに来るんだからキレイに使いなよね』とか言われてます。予約済みっていう。西松屋(ベビー用品専門店)には申し訳ない気持ちで一杯です(笑)」(Xさん)

 とにかく周りに同世代のママ組がいれば「お金がかからない」と強調するXさん。飲みの集まりがある時も、友達の家で宅飲みで子供も連れて行く。ママの誰かがひとり酒飲まないで面倒を見て、最後に全員を車で送ってもらうのだ。「まさにこれが“ベビーカー”ですよね」と笑う。

 彼女たちの結婚・出産観は、現代の日本人の経済状況を如実に反映している。まず結婚で世帯収入を増やし、出産しても即職場復帰し、協力し合って子育てでコストを抑える──。目安は「30代に突入する前に第1子を小学校に上げる」だ。Yさんたち未婚組は23歳で既に焦りを感じている。

「とにかく早く産んで、20代の後半までに離婚なんかしちゃってなければ第2子です。中学を卒業すれば、子供もバイトできるじゃないですか。そもそもわたしら、高校時代に同級生でバイトをしていない子の方が少なかった。部活? スポーツ? いや、そういうのは、お金がある家の子がやるものでしょ」(Yさん)

夫婦で4つの仕事を持ってリスクを分散させる

 子供のバイト代も含めて世帯収入という考えか。実はこの感覚は、彼ら彼女らの職業観にも直結していた。XさんとYさんの中学時代からの友人Zさんは、現在は地元セレモニーホールに正社員として勤務しているが、結婚・出産後は非正規雇用職への転職を考えている。

「正社員だと保険代や福利厚生でいろいろ引かれますよね。給与明細見てイラっと来るぐらい。でもウチの会社は残業代も休日手当もいい加減だし、勤務時間外で呼び出しとかもたまにあって、他にバイトができないんです。だったらはじめからバイトをいくつか掛け持ちしたほうが、手元に残るお金が大きいじゃないですか。年金とか払ってても、払った分が返ってくるなんて誰も思ってないんだし」(Zさん)

 つまり、非正規の仕事をダブルワークで掛け持ちし、夫婦でもし非正規掛け持ちををすると4つの収入源があることになり、早く子供を作って子供がバイト就業可能な年齢になれば、さらに収入源が増える。いざひとつの仕事がなくなっても、ダメージは少ない。リスクは分散させているのだ。

「30歳になっても40歳になっても、所得が増えるとは思えないんですよね。だからこういう考えになるのかもしれないですけど」(Zさん)

 やはりあくまでもマイルドヤンキーの結婚と出産は、将来の経済への不安に裏付けされた“防衛本能”だ。理想の結婚相手を問えば、職業こそ「公務員だったらベストかも」などと言うが、一方で「友達の兄弟とか従姉妹。じゃなきゃ女友達の旦那の兄弟」といった、都市部では聞いたこともない言葉も返ってくる。実際、実はなんとXさんの結婚相手は、友人であるYさんの兄。つまり彼女たちは地元の友人から義理の姉妹になった。

「一番怖いのは離婚ですけどね。でも離婚が怖いからこそ、早く産んでおきたい。うちの地元で一番どうにもならないのって、30代、40代で手間のかかる時期の子供抱えたシンママ(シングルマザー)です。仕事もないし本当に自力だけで子育てしないといけない。それだけは避けたいって言うのが、本音なんです」(Yさん)

 一見、気楽に生きているかのように見えるマイルドヤンキーだが、都市部にいる若者や大学生よりも、よほど堅実な生き方をしているのだ。

鈴木大介
「犯罪をする側の論理」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心に取材活動をつづけるルポライター。著作に、福祉の届かない現代日 本の最底辺の少年少女や家庭像を描いた『家のない少女たち』(宝島社)『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)、『家のない少年たち』(大田出版)『最貧困女子』(幻冬舎)など。近著『老人喰い』(ちくま新書)が絶賛発売中
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