お嬢様大学卒アラフォー女性の末路「夫の給与減でパートで働く毎日」

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バブル崩壊直後に入学した4人のそれぞれの今
バブル崩壊直後に入学した4人のそれぞれの今

「1日パートに出ても日給は8000円くらいしかもらえません。一応、面接ではそういわれましたけど。税金を引かれ、何だかんだで手取りは7000円ちょっと。8時間労働という条件ですが拘束時間は実質9時間半くらい。もっと収入を増やしたいのですが40歳の主婦女性パートの採用はほとんどありません。とても好景気とは思えないです」

 こう語るのは、現在、東京都葛飾区に住むパート主婦・渡辺典子さん(仮名・43歳)だ。1995年に関西の名門お嬢様大学・K女子大学を卒業後、地場中堅食品メーカーで総合職として働いていたが27歳で結婚を機に退職。夫の転職による転居で東京に越してきて今年で16年目になる。

 今は週2回、大手運送メーカーで事務補助の派遣パートに出ている。年収は約80万円弱、手取りで約70万円だ。同い年の零細機械メーカーに勤務する夫の稼ぎは数年前の給与カットで今、年収500万円程、景気動向が変わったといわれる今でも昇給はない。

 渡辺さんと夫の収入を合わせた世帯収入は580万円(年収)だ。厚生労働省が実施した国民生活基礎調査(2013年)による40代の世帯平均年収額648万9000円を70万円ほど下回っている。そのため公立校とはいえ、小学校4年生、小学校2年生の2人の子を抱えての東京都内での一家4人の生活はかなり厳しいと渡辺さんは話す。

「マンションの家賃が約8万円、何とか子どもにも自分たちと同じだけの教育は受けさせてあげたい。だから塾や水泳教室といった学費は子どもふたりあわせて合計で10万円ほど。私のパート代はすべて子どもの学費に消えてしまいます。それでも足りないくらいです」

 確かに夫の年収500万円といっても、そこから住民税や社会保険料を差し引くと手取りは400万円ほど。なので実質的な手取りは世帯で約470万円といったところだ。ここから年間の家賃96万円、子どもの年間教育費120万を差し引くと254万円。1か月21万円で1家4人暮らしていかなければならない。

唯一の勝ち組は公務員夫婦で世帯年収1700万円

 渡辺さんがK女子大学に入学した1991年は、バブル崩壊の直前で“失われた20年”と呼ばれ長く続く不況期の始まりとされる年だった。それでもまだ華やかなバブル経済期の残り香があったためか大学時代はとても不況を実感することはなく学生時代を謳歌した。その楽しかったK女子大時代、渡辺さんを含む“仲良し4人組”は、今、見事に「勝ち組」と「負け組」、勝ち組から負け組へと転じた者とその明暗をわけている。

 勝ち組は学生時代、彼氏も作らずというよりも“できなかった”という阿多美佐子さん(仮名・43歳)だ。在学中から教員を目指していた阿多さんは大学4年生で神戸市の教員採用試験に合格。25歳で10歳年上の同僚教員と結婚した。結婚相手の同僚教員は今では校長に昇進、年収はもう1000万円を超えているという。

 教員を続けている阿多さんの年収も700万円程度。世帯収入は1700万円、手取りの世帯収入は低く見積もっても1400万円強はある。子宝には恵まれなかったものの、安定した余裕ある生活は、大学時代の“仲良し4人組”のなかでも群を抜く。

 もう一人の負け組は、先述の渡辺さんと斉藤麻美さん(仮名・43歳)だ。氷河期といわれた1995年の就職活動に失敗した斉藤さんは、派遣社員を経て24歳の時、合コンで知り合った消費者金融勤務の2つ年上の男性と結婚。生活は安定するかにみえた。だが夫は「金融業界の過酷な勤務に嫌気が指した」ため、人の役に立っていることを実感できる仕事をしたいと福祉業界に転職する。今、夫の年収は45歳で年収300万円、手取りは270万円程度だ。

 妻である齋藤さんも家計を支えるため近所のコンビニで週に3日と、流通店のレジ打ちを週に2日、掛け持ちでしている。1日の収入は深夜勤務をしても1万円に満たない。2014年の年収は190万円で確定申告したが、手取りは170万円くらいだ。夫婦合わせての実質世帯収入は440万円である。

 そこから住宅ローン5万円を差し引いた残り380万円で生活しなければならない。1か月あたり31万円が生活費となる。「子どもがいないので十分やっていける」と齋藤さんは話すが厳しい生活であることは確かだ。

資産家と結婚するも一家4人ワンルーム生活へ転落

 最後の一人。勝ち組から負け組へ転落したのは、浜田麻里さん(仮名・43歳)だ。関西の資産家の息子で、アパート家賃収入などで生活していた夫と結婚。2人の子宝にも恵まれた。家賃収入だけで年間700万円、株や先物、FXといった金融取引での差益も合わせると年収2000万円を超えたこともあったという。

 だが2008年のサブプライムショックで大きな損失を被り資産の大半を手放すことに。今では家賃7万円のワンルームマンションに1家4人で暮らす。

 浜田さんは近所のファミレスのキッチンで週に6日働く。ファミレスを選んだのは賄いの食事が出るという期待からだ。月収は約15万円ほどである。夫は大学時代の友人を頼り、生まれて初めて職についた。月収は手取りで25万円。2人合わせた手取りの世帯収入は480万円ほどだという。

 1995年にK女子大学を卒業した“仲良し4人組”だったかつてのお嬢様たちは、公立校の教員になった1人を除いて今日も厳しい生活と戦っている。

 株価が一時2万円を突破し、好景気といわれるが、はたして彼女たちの生活はよりよいものになるのだろうか。ブラック企業、中高年ブラックバイトといった昨今の労働経済事情を聞くにつれ不安は募るばかりだ。

(取材・文/佐津川遼)

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