【医師たちのリアル恋愛事情】外科医と麻酔科医が陥る恋の罠

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【フリーランスドクターXのぶっちゃけ話】

 ドラマ『医師たちの恋愛事情』(フジテレビ系/木曜よる10時〜)の医療アドバイザーを務める現役女医・筒井冨美が、ドラマに描かれる医療現場のリアルを解説する。

医療ドラマに見る「麻酔科医」の描かれ方

 私の本職は麻酔科医であり、手術中に対象患者を眠らせて、痛みのない安全な環境を整備するのが仕事である。私がこの仕事に就いて20年以上経ったが、外科医や眼科医などに比べると、一般人になじみのある職業とはまだまだ言いがたい。なお、正式名称は「麻酔科医」であって、「産婦人科医」「皮膚科医」が「産婦人医」「皮膚医」と言わないように「麻酔医」ではない(が、こう誤記されることは多い)。

 日本のテレビドラマ史上初めて麻酔科医が登場したのは、1990年放映で三田佳子主演の『外科医 有森冴子』(日本テレビ系)ではないかと思う。当時、無名だった羽賀研二が麻酔科医を演じ、手術シーンのチョイ役として、大したセリフもなく立っていた。

 麻酔科医が医療ドラマで主要キャストを得たのが、1993年放映で織田裕二&石黒賢主演の『振り返れば奴がいる』(フジテレビ系)であろう。当時大流行のトレンディドラマ(←現在、ほとんど死語)で人気女優となった千堂あきほが麻酔科医で、なおかつ織田裕二演じる外科医の元カノというキャスティングであった。

 CHAGE&ASKAによる主題歌の『YAH YAH YAH』は200万枚超の大ヒットとなった。その歌詞には愛だの恋だのは全く含まれていないが、「タフな手術にチャレンジする際の昂揚感」的な気分にさせてくれるので、個人的にもカラオケの愛唱ナンバーにしている。

外科医と麻酔科医の役割は“亭主と女房”

「麻酔科医は外科医の女房役」というのは病院における口伝の一つである。あくまでも「女房」であって、英語の「ワイフ」ではないのがポイントである。外科医の本質が「病変を攻める」ことならば、麻酔科医の本質は「手術という侵襲から患者を守る」ことにあり、この両者の関係は「パートナー」というよりも「亭主と女房」が近いんじゃないかと私は考えている。「ピッチャーとキャッチャー」あるいは「フォワードとゴールキーパー」もこれに近いのかもしれない。

 昭和時代には「主人と家来」的な扱いをされることも多く、あくまでも「対等なパートナー」と言い張る麻酔科医も多い。こういうタイプは男性麻酔科医に多いような気がするし、実際に2008年放映の『風のガーデン』(フジテレビ系)では、中井貴一が演じる麻酔科医は末期癌の病床で、外科医の父親に対して「僕はずっと外科医に劣等感を持っていた」と告白する。まあ、「パートナー!」と声高に叫ぶ麻酔科医は存在しても、同様の外科医が皆無なあたり「外科医と麻酔科は、完全にイコールパートナーではない」ことの現れなのだろう。

 というわけで、「男性外科医×麻酔科女医」という組み合わせで上手くいってる手術室はまあまあ存在する。外科医の圧倒的多数は男性だし、なんだかんだ言っても昭和生まれの日本女性はまだまだ「男を立てる」よう訓練されている。麻酔の腕が同レベルだったら、男同士でムダに主導権争いをするよりも、譲れる部分は譲って「さすがですぅ~、すごいですねぇ~、そうなんですかぁ~」などと適度に外科医をイイ気分にさせて手術をスムーズに進行させるタイプの麻酔科女医は、それなりに重宝されるものである。

リアル男女関係に発展するケースも多数

 また、日本語の「女房」という言葉には、「ワイフ」には存在しない母性的なニュアンスが含まれると私は思う。恋愛の導入には女子力が有用だが、その関係を中年以降まで長期間維持するには、「女が男の母になる」覚悟が要るのではと思う。

 執刀中の外科医とは少年のようでもあり、「三才児がそのまま教授になった」如きメンタリティーの持ち主も珍しくない(特に心臓外科)。自信満々な言動の陰に不安も抱え、王様のように威張りつつも甘えたがりである。そういった口先だけの強がりを鵜呑みにせず、内々に抱える不安も理解した上で、外科医のチャレンジを見守る……あたかも、ジャングルジムの頂点を目指す息子を見守る母のように。その見守られる心地よさゆえに、外科医はより高所へチャレンジできる……そういうスタイルの麻酔もまたアリかなと、私は最近思うようになった。

 というわけで、「男性外科医×麻酔科女医」の夫婦は多く、交際だけに限ればさらに多い。ついでに言えば、この組み合わせの不倫カップルにもわりと遭遇する。しかしながら、「外科女医×男性麻酔科医」の組み合わせは非常に稀である。

 ドラマ『医師たちの恋愛事情』第2話では、「肉食女子の麻酔科医でもある奈々(相武紗季)」が活躍する予定である。第1話が「フジの夜10時台にしては健全すぎない!?」とご不満だったアナタ、今回はググっと行きます。お子様は早めに寝かせてテレビの前でお待ちください。

ドラマ『医師たちの恋愛事情』公式サイト|フジテレビ

まとめ

  • 「外科」の本質が攻めならば、「麻酔科」の本質は守りである
  • 「外科医と麻酔科医」は「パートナー」というよりも「亭主と女房」に近い
  • 「男性外科医+麻酔科女医」のカップルは多いが、逆は稀である
  • 「麻酔医」でなく「麻酔科医」が正しい名称である
筒井冨美(つついふみ)
1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。米国留学、医大講師を経て2007年よりフリーに転身。テレビ朝日系ドラマ『ドクターX∼外科医・大門未知子∼』取材協力。4月9日(木)22時からスタートするドラマ『医師たちの恋愛事情』(フジテレビ系)で医療アドバイザーを務める
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