アニメ『ニンジャスレイヤー』がアバンギャルドすぎてヤバい
4/16夜にファン待望のニンジャスレイヤーアニメ第一話が放映され、良いとか悪いとか以前に「なんなんだこれは……」という感じで困惑に包まれた初日の一夜。
「作画崩壊はほぼ皆無」 「原作に忠実」 「声優の演技も素晴らしい」 「切れのあるアクションシーン」 「音楽のクオリティも高い」 「上記の全てを含めてまごうかたなきクソアニメ」
— 大分ダイナ (@oitadyna) 2015, 4月 16
僕の初見の印象は「うわー、攻めてきたな」でした。なんか……フツウじゃないんですよね……。アクションシーンでは普通にぬるぬる動いてたかと思ったら、肝心の部分だけ突然FLASHアニメになったりするし……。
一周目を見た時点では「なんとコメントすればいいのか分からん」でしたし、ツイッターファンタグ(#njslyr)の感想も混沌に包まれていましたが、それも一晩明けた頃にはタグの評価も「良し悪しは置いといて、原作再現率は高いよな……ある意味」という評価にマアマア落ち着き、今(原稿執筆時の4/22)では概ねファンたちもTRIGGER、原作組の仕掛けた前衛表現に馴染みつつあるようです。
「ドーモ、ミニットマン=サン。ニンジャスレイヤーです」風に乗って、ニンジャスレイヤーのアイサツが届く。ミニットマンは怒りに震える手を合わせ、アイサツを返した。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ミニットマンです」
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2010, 7月 24
アニメの作りは(FLASHパートが)安っぽかったりスカム感に溢れていて、高密度でぬるぬる動くアニメーションを期待していた筆者も、最初は「なんだこれは……」だったんですが、しかし、考えてみれば、小説版のニンジャスレイヤーも上の通り、最初の最初の読後感は「なんだこれは……」だったわけです。
僕たちは小説版を読みすぎてしまい、いまさらニンジャ同士がドーモとアイサツしてから戦い始めても何ら違和感を感じなくなってますが、これって最初に感じた違和感を忘れちゃってるんですよね。違和感を忘れた上で、普通の物語として作りこまれた作劇を楽しんでいる。
もしもこれが高密度でぬるぬる動く、普通の意味でレベルの高いアニメーションだった場合は、視聴者に「普通に作りこまれた物語」を届けることはできても、小説版を始めて読んだ時のあの違和感は与えられないわけです。
……となると、そこを埋めるための何かしらの突飛な演出は必要となる。今回の試みで実際にガツンとした違和感は生まれてますし、そこのニュアンスを拾い上げたという意味では「原作再現度が高い」という評価は妥当と言えるでしょう。
「予算か時間がなかったのでは?」
「暴力表現規制を避けるための苦肉の策では?」
「地上波放映の際にはFLASHパートはちゃんとぬるぬる動くアニメに描き直されるのでは?」
といった声もありますが、上記の通り、おそらくこれは完全に意図した上での演出でしょう。なので、地上波やDVDでもこのままなんじゃないかと思います。
◆各アニメ配信サイトにおいても第一話がアップロードされた!昨晩アジトではスタッフ集まり皆がロウソクとドリトスのなか固唾を呑んで見守っており……最終的な視聴者数とアンケート結果を見た瞬間、ウオオオーッ!と皆でスタンディングガッツポーズした!イケる方は、今後半年よろしくお願いします◆
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2015, 4月 17
アニメのこんなざまのアンケートを見てガッツポーズする公式がいるらしい #njslyr https://t.co/kPCEp5sQuf pic.twitter.com/mDRO3ltSlT
— ショーキЖカォス@大和型揃った (@jerojuechaos) 2015, 4月 17
むろん、これが冒険であることには違いなく、作り手側も内心ビクビクしてたんじゃないでしょうか。「ウオオオーッ! と皆でスタンディングガッツポーズした」のは、これだけの大冒険をしても20%の人たちが付いてきてくれたことで「イケル!」と確信したとのこと。いやー、そりゃ怖いですよね。
実際に第一話のニコ動再生数は89万、ニコニコチャンネルの今季アニメでの再生回数1位ということで、アニメ版ニンジャスレイヤーは大博打にとりあえず勝ったと言えるでしょう。これが怖い物見たさの瞬間最大風速なのか、2話でもこの評価が続くのか、雰囲気が変わるという3話でどう評価が転ぶのか。この記事が掲載される頃には答えが出ているかもしれません。
しかし、周りの人たちを見ていると、原作のニンジャスレイヤーをあまり知らない人の方がむしろアニメ版を受け入れやすいようですし、いけるんじゃないかなあ……。
以前に、「中二病アニメか確信犯か!?「聖剣使いの禁呪詠唱」が謎すぎる」で、「「聖剣使いの禁呪詠唱(ワールドブレイク)」は一見するとクソアニメだが、実は狙った演出表現なのではないか?」と書きました。あれも実際にそういう演出意図があったと聞いていますし、最近はこういった前衛的な挑戦が行われ、アニメファンたちも徐々に順応していくような、そんな環境が生まれつつあるのかもしれませんね。
参考記事/中二病アニメか確信犯か!?「聖剣使いの禁呪詠唱」が謎すぎる
著者プロフィール
作家
架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)