農水省の新戦略“海外レース馬券販売”はカジノよりも儲かる!?

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凱旋門賞に挑むディープインパクト(写真/senchou)
凱旋門賞に挑むディープインパクト(写真/senchou)

 今国会で成立見込みといわれるIR法案(統合型リゾート法案)の目玉は、何と言ってもカジノだ。カジノの設置を巡っては、山積する課題は抜本的に解決されていない。それでもIR法案が推進されている背景には、IR法案が地域活性化や観光客誘致の起爆剤にとして成長戦略の柱になると永田町界隈では頑なに信じられているからだ。

 昨今、公営競技をはじめ宝くじやサッカーくじなどは不振を極めている。これらの売上は、国家財政や地方財政をも左右する。IR法案は売上減少で公営競技や宝くじの売上をリカバーする意味も込められている。

 これまで、日本国内には合法的なカジノは存在しない。それが忽然として出現するのだから、各省庁は色めき立つ。ある省庁の職員はこう語る。

「わが省庁でもIR法案で省益拡大を目論んでいるので大きな声では言えませんが、IR法案はどの省庁にとっても省益拡大のチャンスなのです。だから、利権を探して回っています。一見するとカジノと無縁に思えるような総務省でさえ、設置場所を巡って地方自治体間で熾烈な誘致合戦をしていて事態収拾という名目で参入しようとしているのです。ほかの省庁も、さまざまな口実をつくってカジノ利権に参入してくるでしょう」

 カジノ建設で旨味のありそうな国土交通省や産業振興で省益拡大を狙う経済産業省などは、カジノ推進役の筆頭と言われている。逆に、ギャンブル依存症対策を講じなければならない厚生労働省や犯罪抑止に動かなければならない法務省・警察庁はIR法案に表面上は反対している。ところが反対のスタンスでありながらも、法案が成立すれば対策を目的とした予算拡大や職員増員の大義名分も立つ。それを突破口にして省益の拡大を図ると囁かれている。

 そうした省庁の態度に対して、ある永田町関係者は言う。

「永田町では『カジノ、カジノ』と、まるで“打ち出の小槌”のように騒いでいます。でも、日本には競馬(中央・地方)・競輪・競艇・オートレースといった4大公営競技があります。わざわざ多額の税金を投入して新たにカジノを整備しなくても、既存の公営競技などをテコ入れして、振興させればいいだけの話です。公営競技が衰退しているからカジノに乗り換えても、最初ぐらいはカジノも話題になるでしょうが、すぐに公営競技と同じ道をたどることになる可能性だってあるわけです。そうしたら、巨額な税金を投入してつくったカジノは物笑いになってしまいますよ」

農水省が目をつけた海外レースの馬券販売

 カジノ開設の機運が高まる中、公営競技ではいち早くイメージ刷新に努めた“競馬”がIR法案に対抗するかのような新戦略を打ち出した。それが、海外レースの馬券販売だ。

 昨今、日本馬の海外挑戦は当たり前になっており、凱旋門賞やドバイワールドカップには毎年のように日本馬が参戦している。そうした海外レースの人気の高まっていることに農水省は目を付けた。

 競馬法が改正されたことで、早ければ2016年度から海外レースの馬券販売が可能になる。農水省は20の海外レースで馬券の販売し、売上は年間20億円を試算しているという。

 JRA(中央競馬)の売上はピーク時の4兆円から大幅に減少しているものの、それでも年間2兆5000万円の売上を誇っている。農水省にとって20億円の売上は微々たる数字でしかない。システムの改変や販売経費などを考慮すれば、海外レースの販売は農水省にとって決して“美味しい話”ではない。それでも海外レースの馬券販売に踏み切る理由はどこにあるのか?

「先ほど、IR法案はどの省庁にも利権拡大のチャンスがあると言いました。農水省もIRで利権を拡大させられるチャンスはありますが、ほかの省庁に比べると旨味は少ないのです。そこで海外競馬に手を広げることを考えたのでしょう。また海外レースの馬券を販売することで日本国内のレースをさらに国際化させることも考えていると思われます。それによって、アメリカやイギリス、フランス、ドバイといった競馬強豪国から訪日外国人観光客が押し寄せるでしょう。その経済効果は馬券販売の比ではありません」(前出・省庁関係者)

 また、日本競馬の質が向上すれば、日本の種牡馬を世界に売り込むことができる。種牡馬ビジネスといわれても、競馬を知らない人にしてみればピンとこないが、例えばディープインパクトの種付け料は一回2500万円といわれる。人気種牡馬は年間100回の種付けをこなすこともザラで、ディープインパクト一頭で年間25億円を稼ぐ計算になる。

 カジノ利権から取り残される危機感から農水省が放った海外レースの馬券販売という戦略は、うまく実を結べばカジノ以上の経済効果が見込める。競馬ファンとしても嬉しい話だろう。農水省の奇手は成功するだろうか?

(取材・文/小川裕夫)

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