ネット「絵師」を悩ませるイラスト盗作…悪質な開き直りや知らずに商業化が多発

デイリーニュースオンライン

4月末に開催された「絵師100人展」公式HPより
4月末に開催された「絵師100人展」公式HPより

 近年、SNSの普及に伴い、ネット上で自作イラストを発表する「絵師」と呼ばれる人々が増加している。オタクカルチャーの一端を担うほどの存在となっているが、彼らの作品が盗作被害に遭う騒動が多発している。見栄のために「自分が描いた」と言い張る場合や他人の作品を企業に売ってしまう悪質なケースなど、さまざまな問題が発生しているようだ。

他人の絵をパクッて驚愕の開き直り……

 4月下旬、あるネットユーザーがTwitterに「こんな感じの絵を描いてます!」などといったコメントと共に2枚のイラストを投稿した。「創作クラスタさんと繋がりたい」といったタグもつけられており、その絵を通じてイラスト仲間を増やしたいという狙いがあったと思われる。

 その直後、このユーザーに対して「あなたのアイコンやツイートにあるイラストは私と○○さんの作品です」とイラストの本当の作者である人物から抗議のコメントがあった。続けて作者は「ツイートの削除をお願いします」と問題のユーザーに要請。全くの別人が「自分が描いた」と触れ回っているのであれば当然の要求だ。

 だが、それに問題のユーザーは以下のような驚きの返信をした。

「お二人の作品だと私も知っていますが私は画像をアップするときには加工し実際に筆も加えているのでこれは既に私の作品だと言えるでしょう。申し訳御座いませんが削除の御希望には答えられません。今後も一緒に頑張りましょう」

 続けて問題のユーザーは「加筆を繰り返していけば最高の絵が出来上がると思うんだよね。絵に完成って永遠にありえないと思うから」「絵師同士ってもっと協力していくべき」と主張し、さらに「加筆は悪くないじゃん」「もう関わらないようにします。。ブロックで。。」などと逆ギレ。その後も作者たちの度重なる抗議を意に介さない言動を繰り返した。

 この一連のやり取りが拡散され、問題のユーザーは大炎上。以下のような批判が殺到した。

「加筆したら自分の絵とか、すごい発想だな……お花畑すぎるぞ」
「オリジナルに加筆したら自分のものになる理論、どういう思考回路で得られるものなんだ」
「拾った絵に加工して自分の作品にできるなら誰でもイラストレーターになれる」

 しかも問題のユーザーはプロフィール欄に「無断転載×」と記していた。一部では「さすがに釣りでは?」「むしろ釣りであってほしい」という声もあったが、問題のユーザーは批判的なユーザーや作者たちとバトルを繰り広げた末にアカウントを削除してしまった。

プロの世界でも……多発する盗作騒動

 実はこのような騒動は珍しくない。

 昨年も「少女漫画家志望の中3です!」などと名乗るユーザーがTwitter上で自作と称するイラストを公開。だが実際には別の絵師が線画で公開したイラストに色をつけただけだった。問題のユーザーは「専属絵師にしてくれる歌い手さんを探してる」「こんなヘタッピな絵でも褒めてくれる人がいて嬉しい」などと数々の迷言を書き込み、盗作を疑われると「自分で描いた絵だから」「証拠として線画あげとく」などと線画をアップ。

 すぐにウソを見抜かれると開き直って「たいして有名な絵師じゃないのになんでバレるの」「アカ消せばいいんでしょ、ばいばい」と捨て台詞を残し、アカウントを消去した。

「イラスト投稿に特化したSNS『pixiv』がスタートした2007年頃から被害が増えてきました。イラストは一朝一夕に上達するものではありませんが、努力せずに『チヤホヤされたい』という願望のある若年層のユーザーが盗作してしまうことが多いようです。また、ニコニコ動画で活躍する『歌い手』のアイコンを描くことが一つのステータスになっていますが、あこがれの歌い手に近付きたいという目的で他人の絵を盗作し、その歌い手に売り込むというパターンもある」(サブカルに詳しいライター)

 若年ユーザーの暴走だけでなくお金の絡んだプロの盗作行為も問題になっている。

「企業がフリーのイラストレーターに発注し、作品が納品されるもネット上に掲載されていた絵を盗作したものだと分かり、しかも問題のイラストレーターが複数の企業相手に盗作絵を納品していたとして大混乱になったこともあった。丸パクりでなくとも、明らかにキャラクターの特徴や構図を真似たイラストが商業ゲームに採用されているケースも多々見受けられます」(同)

実は曖昧な「パクリ」の線引き

 その一方で別の被害も危惧もされている。

 他人の絵を自分のものと主張したり丸っきりのトレースだったりであれば論外だが、たまたまキャラクターの特徴や構図が似てしまうことは当然ある。いわゆる「お約束」「定番」といったケースまでパクリと糾弾されることも少なくない。「どこからがパクリなのか?」は一般の解釈だけでなく法的にも線引きは曖昧であり、非常に判断が難しい問題だ。

 だが、近年はパクリ疑惑にネットユーザーが過敏になっており、ひとたび火がつくと炎上が拡大する傾向にある。疑惑に見舞われれば著名な作家でも名誉挽回が不可能な状況に陥ったり、駆け出しの絵師などはプロへの道を閉ざされることもあり得る。本人たちだけでなく、その作品の関係者すべてが不快な思いをしたり不利益を被ることにもなるだろう。

 現在の法律では「著作権侵害」は著作権者が被害を訴えた時点で公訴提起が成立する親告罪である。権利者が訴えていないのに「パクリだ」「著作権侵害だ」と第三者が必要以上に騒ぐパターンがあるが、それは筋違いともいえる。また、影響力のある人物が根拠の薄いまま「パクリだ」と特定の人物を糾弾することで相手に取り返しのつかないダメージを与えてしまうこともある。

 盗作は許されることではないが、難しい問題だと認識して取り扱っていく意識も必要といえるだろう。

(取材・文/夢野京太郎)

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