【意外と知らない日本人の新常識】富士山を嫌う人たちが住む場所があった!

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日本人がこよなく愛する富士山
日本人がこよなく愛する富士山

 日本を代表する霊峰、富士山。古来より修験道の聖地と仰がれ、現在では世界文化遺産にも登録されたまさに日本を象徴する存在であるのはご承知の通り。でも、そんな富士山をタブー視する場所があったのをご存知でしょうか。

 場所は静岡県の賀茂郡松崎町雲見。地図上で確認してみると、富士山からちょうど真南にあたり、伊豆半島の最西端あたりに位置します。え、こんなところにというのは、富士山からそう遠くもないだけに余計、意外にも聞こえるかもしれません。

 では、何故、そのような言われがあるかというと、それはこの雲見に祀られている、ある浅間神社と深く関係します。もともと、浅間神社というのは富士山を中心に広まった信仰で、富士山の8合目以上の土地は浅間神社の総本社としての扱いを受ける富士山本宮浅間大社の社地というのは非常に有名なお話。 そう考えればなおさらおかしな話ですが、実は、こちら雲見に祀られている浅間神社は同じ系列にありながらもそのご祭神が一般の浅間神社とは異なるのです。そして、それがまさしくその富士山を忌みする理由と関係します。 通常の浅間神社の多くは、木花開耶姫命(コノハナサクヤビメ)という花の女神を祀っています。コノハナサクヤビメは元々、宮崎は高千穂に天孫降臨を果たした瓊瓊杵命(ニニギ)に見初められた女神で、その容姿はまさしく花のように美しく、八百万の神々の中でも、トップクラスの美を誇るとして、女性の間でも非常に人気が高い女神になります。

 対して、雲見に祀られている浅間神社では、石長比売(イワナガヒメ)という岩の女神を祀っています。本来、両者は姉妹関係にあるのですが、コノハナサクヤビメがニニギと結婚する際、父、大山津見神(オオヤマツミ)は、良かれと思って、姉のイワナガヒメも一緒に差し出しましたのですが、ニニギはイワナガヒメの容姿が「醜い!」という理由でそのまま突き返してしまいます。

 まぁ、ちょっとひどい話ではありますが、これも一部、大昔には姉妹婚という姉妹共に差し出すという風習があったとの指摘もありますが、突き返されたイワナガヒメにとってはたまったものじゃありません。オオヤマツミは激昂し、これによって、「岩の永遠」と「美の繁栄」、つまり「永久の繁栄」が失われたとして、神々に寿命が生じたとしています。そして、そんなイワナガヒメがその後に隠れ住んだと言われるのが、この雲見という場所なのだそうです。 そして、イワナガヒメは自身に恥をかかせたことからコノハナサクヤビメに嫉妬を抱き、以来、この地では、コノハナサクヤビメを忌み嫌う地として数々の伝承を残すようになったと言います。

 例えば、富士山が晴れると当地は曇り、当地が晴れると富士山が曇ると伝えられたり、こちら雲見の浅間神社の鎮座地は、非常に急勾配な烏帽子岩のような頂の上に鎮座しているのですが、登拝の際に富士山を誉め讃えるような真似をすると振り落とされたりする、なんてことも言われたそうで、まさに「冨士」という言葉そのものが、タブー(禁忌)とされたのだそうです。

 ただ、元々、富士山は「浅間大神」という女神が土着的に見られたようで、コノハナサクヤビメがいつから認められたのかが定かではないため、この真相も詳しくは分かりませんが、実は両者の土地には何かしらの因縁があったのかもしれませんね。


著者プロフィール


toujyou

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター


東條英利


日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、一般社団法人国際教養振興協会を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。


公式サイト/東條英利 公式サイト

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