『マッドマックス 怒りのデスロード』ラスボス、ジョー様が為政者として有能すぎる|架神恭介コラム

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映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式HPより
映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式HPより

 マッドマックス最新作「怒りのデスロード」観てきました! マッドマックスは、主人公のマックスがロクでもない暴走族とカーチェイスを繰り広げてバタバタ人が死ぬバイオレンス・アクション映画シリーズ。

 特に2からは舞台が世紀末となり、文明崩壊後の世界を描いたその異様なセンスと作中価値観は大勢のフォロワーを生み出し、かの「北斗の拳」の世界観にも大きな影響を与えた程です。

 さて、そんなマッドマックス最新作「怒りのデスロード」では、主人公マックスは、水資源を押さえ荒野を支配する独裁者、イモータン・ジョー(以下、ジョー様)の一党と戦い、最終的にはクーデターに成功するのですが、この独裁者ジョー様の人間性能が高い! 高すぎる! そこで今回、この記事では、いかにジョー様が有能な君主であるかを訴えて行きたいと思います。

ジョー様が君主として有能な7つの理由

1.恐れられる為政者

 ジョー様のファッションは実に奇抜です。全身に白のボディペイントを施し、馬の歯で作った不気味なマスクを装着。透明防護鎧の上に文明崩壊前に獲得した多数の勲章を飾る威圧的なスタイルです。

 統治下にある下々の者どもに語りかける時も遙かなる高みからお言葉を与え、水の配給でも「頭上から水を落とす」という明らかに非効率な方法を選び、賜物の演出効果を高めています。

 マキャベリも『君主論』で、「君主は慕われるよりも恐れられたほうが良い」と言っています。マキャベリいわく、人間はそもそも邪な生き物なので慕っている相手でも簡単に裏切るが、恐怖を覚えた相手は裏切りにくい、とのこと。このルールは人心の荒廃しまくっている文明崩壊後の世界ではなおさらでしょう。ジョー様のような威圧的態度をもって民を恐怖で縛るのが唯一無二の正解と言えるのです。

2.健康に気遣い、子孫繁栄に腐心する

 君主にとって最も重要なことは国体を安定させることです。そして、君主権の移動時には国が乱れやすいのも事実。君主が病に伏せればその隙を狙う不埒者が現れるし、跡継ぎが不在、もしくは頼りなければ、部下が君主の座を狙って蜂起します。

 ですが有能なる君主ジョー様にぬかりはありません。不気味な馬型マスクで空気上の毒素を濾過して健康を維持。限界まで肥え太らせた女から搾乳した母乳(世紀末では貴重な栄養源!)で老いた肉体を鼓舞し、複数の妻と交わり健康な跡継ぎを得ようと腐心しています。君主権移動時の混乱を慮ってのことで、全ては国の安定を思うがゆえなのです。

3.強大な軍事力を保有

 ジョー様は組織内にウォー・ボーイズなる戦士階級を備え、多数の武装改造車を常備、さらには手榴弾付きの槍「サンダースティック」などの様々な兵器や戦術を開発・採用しています。軍事力は君主には欠かせぬ要素。特に略奪が日常の世紀末世界ならなおさらです。綺麗事など言っとられんのですよ!

 ジョー様の砦の周囲には、ガソリン資源を押さえた「ガスタウン」、武器・弾薬を押さえた「武器畑」などの有力都市が存在し、さらには野の群盗たるヤマアラシ族、イワオニ族などが地方豪族として存在しています。これら軍閥の侵略を武力牽制し、水資源を守るためにもジョー様の武装は必須であり、ジョー様の大軍団は実際に周辺軍閥から下々の者どもを守り抜いているのです。

4.有利な外交関係の構築

 ジョー様の有能さは内政、軍事方面のみに留まりません。先に述べた通り、ジョー様の砦付近には、ガソリン資源を押さえた「ガスタウン」、武器・弾薬を押さえた「武器畑」なる都市が存在します。ですが、ガスタウンの支配者「人喰い男爵」も、武器畑の支配者「武器将軍」も、共にジョー様と協力して主人公を追うのです。どうやらジョー様はこれら二大都市と同盟関係を結んでいる模様。

 水資源しか持っていないジョー様など、エネルギーと武器を押さえた彼らから一番に狙われそうなものですが、そこを卓越した戦略眼と外交能力で五分以上の有利な関係性を築いているのです。まさに指導者の器!

5.農業生産に成功

 劇中の後半に「土壌は汚染され、植物の種はどこに撒いても育たなかった」というセリフがあります。ですが、なんということでしょう! ジョー様の砦内部には農作物プラントが存在し、青々とした葉を茂らせているのです! 荒野に緑を生み出せし男、ジョー様!!

6.若者に希望を与える

 文明崩壊後の世界では、大気汚染により常人の半分ほどの寿命しか持たない若者が一定数存在しています。本来であれば無気力になったり、自暴自棄に陥り共同体に迷惑をかけかねないこの若者たちですが、ジョー様は彼らに「戦いの中でジョー様のために死ねば英雄の館に迎えられる」という北欧神話めいた世界観を与えて、彼らをウォー・ボーイズなる戦士階級に任命。若者たちを絶望から救ったのです。

 ウォー・ボーイズのジョー様への盲信ぶりはカルト宗教めいた不気味さもありますが、しかし、短命の運命に縛られた彼らが、戦士階級として自己の人生に誇りを持ち、活き活きと生きて満足感のうちに死んでいくのです。本来、共同体を破壊しかねない彼らを、共同体を守護する英雄へと仕立てあげたジョー様。たとえそれが洗脳であろうとも、世紀末の世に生きる意味を示したジョー様の指導力は相当のものと言えましょう。

7.障害者雇用問題を解決

 文明崩壊の影響は、人々を短命にしただけでなく先天的障害者をも生み出しました。しかし、ジョー様の下では障害者であっても活躍の場が用意されています。ドラム・ワゴンと呼ばれる戦闘用移動型ロックンロール・ステージでは盲目の障害者がギタリストとして雇用され、激しい戦闘の最中、火を噴くツインネックギターを操り爆音ロックを響かせるのです。その姿はまさに世紀末の琵琶法師!

 加えて言えば、戦意高揚手段としての爆音の重要性を認識し、「爆音ロックを響かせるためだけの大型車」を軍団に組み込んだジョー様の戦術巧者としての面も評価すべきでしょう。作中に出てくる暴走族は皆、士気が異様に高いのでアレですが、実際の世紀末戦闘であれば、ヤバイ見た目のやつらが爆音を鳴らしながら突っ込んでいくだけで敵兵は四散するはずです。

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 このように、ジョー様は内政、生産、外交、軍事と多岐に渡り凄まじい人間性能を発揮し一大都市を支配しているのです。そのやり方は抑圧的で非人間的なところもありますが、生き馬の目を抜く荒野の世紀末に、曲がりなりにも秩序と安定をもたらしていることもまた事実でしょう。

 主人公たちのクーデターが成功した後も、統治は恐ろしく大変だと思います。まずウォー・ボーイズをカリスマで率いられないため軍事力が低下し、ガスタウン、武器畑の指導者が揃って戦死したため外交関係は構築し直し。

 ジョー様の息子の一人は生きている上に、ジョー様の子供を孕んでいる女性もおり、将来の権力争いの火種となること請け合いです。ジョー様亡き後、砦は遠からぬうちに滅ぶか侵略されると思いますね。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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